釜山から対馬へ - 韓国人対象対馬ツアーに参加してみた(2)

 最後に比田勝旅客船ターミナルに戻り、ガイドから帰りのチケットを受け取って、再出国。この日に出国者は前日の入国者とは異なり100人程度ではないかと思われた。おそらく前日日帰りで帰った人や、あるいは2-3泊滞在する人もいたものと思われる。もちろん日本人は少数。

比田勝T04.jpg

 釜山へ帰る船は、前日とは異なり天候は良いものの、波は高くかなり揺れた。釜山に入港してみると、隣に関釜フェリーはまゆう号が入港している。入国審査では韓国人窓口は列を作っていたが、外国人窓口はガラガラであった。
 なお、前日釜山から出航する際に、免税品売り場で多くの人が免税品を受け取っていたが、ほとんどが韓国人であった。すぐ韓国に戻れるので、半ば免税品を買うことを目的に比田勝まで行って食事してまた戻る人も多いのであろう。ちなみに大亜高速海運のホームページを見ると、日によって提供されるイベント当日往復特別割引券だと29000ウォン、さらには時に20000ウォンという超特価であった(https://www.daea.com/page/?Main=1&Code=2 )。二日以内のイベント特価往復券も最安29000ウォンからある。
免税品.jpg

 未来高速(KOBEE)の場合はやはり日ごとのイベント割引で最安往復W22000からとなっている。
https://www.kobee.co.kr/html/

 因みに釜山-対馬航路の正規料金は、大亜高速海運の場合、釜山→対馬でW85000、対馬発だと8500円(比田勝発)、または9000円(厳原発、但し現在運休中)。未来高速の場合はKOBEEで、釜山→比田勝でW75000、釜山→厳原でW85000、往復はそれぞれW150000, W170000。JR九州高速船は比田勝→釜山で8000円、釜山→比田勝はW80000で往復は単純にその2倍。

 そのようなこともあってか、対馬へ来る韓国人のリピーター率はかなり高いようだ。おそらく釜山周辺に住んでいる人のうち多数は何度も対馬に来た経験があると思われ、ある韓国人の知人は5回ほど行った、と言っていた。日韓関係悪化前までは、対馬は、東京で言えば、伊豆、箱根的な位置を獲得していたと言えよう。

 ところで、対馬はどういう契機で韓国人観光客が多く訪れるようになったのだろうか。これについては一橋大学、(旧)水岡ゼミのゼミ巡検記録に詳しい事情が載っている。

一橋大学(旧)水岡ゼミ巡検報告 2010年対馬・韓国
http://hit-u.ac/excursion/10TsushimaUlleung/index.html

 このページの記述によると、対馬の主力産業はイカ釣り漁であったが、イカ価格の低迷や若者の就業場所不足による高齢化の進展、さらには小泉改革の影響で地方交付金の大幅減額で、対馬の地方自治体は苦境に陥ったという。そこで自治体の自助努力として、対馬側から韓国側に積極的に働きかけて韓国人観光客の誘致を図ったという。そもそも福岡ー対馬間の飛行機料金が割高なため、いくら日本の各地に観光客誘致を図っても全く増えないという構造的な要因もあった。
 そのため、1997年には厳原国際ターミナルを、そして1999年には比田勝国際ターミナルを設置し、韓国航路を誘致を図ったところ大亜高速海運が1999年に釜山-厳原航路を、さらに2001年からは比田勝ー釜山航路を開設したという。また対馬大亜ホテルは、当時の厳原町が韓国客誘致のため大亜高速海運に無償で町有地を貸与し、2002年に営業が開始されたという(のちに土地は大亜側に売却)。さらに対馬側は2003年に釜山に事務所を設置し積極的な観光PRを展開したという。この結果、韓国人観光客の入国数は2005年の約3.6万人から2008年には7.2万人と2倍近く増えたという。ちなみに2019年8月より前は、一日3000人ほどの入国があったとガイドが言っていたから、その値が正しいとすれば単純に計算すると年間100万人ほどの入国があった計算である。まさかと思って、統計が掲載されているサイトを探したところ、次のようなサイトが見つかった。

比田勝港 (訪日ラボ)
https://honichi.com/data/immigration/hitakatsuport/
厳原港 (訪日ラボ)
https://honichi.com/data/immigration/izuharaport/

ただ、このサイト、グラフなどもあって分かりやすいが、どうもケアレスミスも多く、オリジナルの出入国管理統計の港別入国外国人数を見てみると、
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250011&tstat=000001012480&cycle=7&year=20180&month=0&tclass1=000001012481
2018年データで、韓国人入国数は、厳原港 98,035 比田勝港 312,593とある。合わせて40万人弱である。この全部が観光客ではないにしろ、大半が観光客であろう。また訪日ラボのグラフを見ると2011年から爆発的に韓国人観光客が増えていることが分かる。『対馬市観光振興計画』(2017.3 対馬市観光交流商工部観光商工課 http://www.city.tsushima.nagasaki.jp/web/public/data/kankousuisinkeikaku.pdf )。によれば、対馬市の観光客中、県外客は約8割であり、2015(H27)年にはその半分近くが韓国人となっている(さらに、2015と2018年を比べると、比田勝港の入国者に限るとさらに2倍近く増えている)。観光客の伸びを支えているには韓国人観光客であり、報告書では、日本人観光客自体はは横ばいもしくは減少傾向としている。事実日本人観光客の主たる入島手段と思われる空港利用者は減少の一途である。韓国人のガイドが対馬にくる観光客の99%は韓国人ですと言っていたのはオーバーであろうが、少なくとも比田勝地区に関して言えばそれは必ずしも否定できないだろう。

 いずれにせよ、韓国人客誘致は、日本人観光客から見捨てられた対馬市主導の生き残りをかけた誘致政策の結果であり、産経新聞などが行っている「対馬が危ない」キャンペーンなどは、このような対馬市の行っている自助努力を叩き潰そうとするものである。対馬に行って金を落とす気もないのにいい加減なことを言うな、と言うべきだろう。またいたずらに日韓関係を悪化させるのも、東京目線ではどうということもないと思えるかもしれないが、地方目線からは全く違うということも強調しておきたい。
 また、日経ビジネスには次のような記事が出ている。

「年間40万人の韓国人客が激減、長崎・対馬の静かすぎる夏」 2019.8.27 日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/082700631/

この記事では、「韓国頼みになっていた対馬の観光ビジネスを見直す時が来ているのかもしれない」などと人ごとのように結んでいるが、そもそも、いくら日本国内から誘致しても来てくれないから、仕方なく韓国へ目線を向けた対馬に対する理解が全くない、無責任極まる記事であろう。

 ところで、このような対馬の国境観光地開拓の動きやインバウンド観光客の激増ぶりを見ると、なぜ与那国島では国際港の設置が行われないのか疑問である。「与那国開港をめぐる中央と地方の視点」(舛田佳弘. 2013.『国境研究』No. 4)を見る限り、与那国町は何度も国際港設置許可の要請を政府に行っているが、根拠の良く分からない理由で却下され続けている。台湾との間はチャーター便の運航に限られている。このため、与那国は自衛隊誘致に大きく傾いたが、何らかの政治的理由で意図的に妨害されているとしか思えない。これも大きな問題であろう。

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