神々の深き欲望 - 海外盤BDしかない日本映画

 返還前アメリカ領であった沖縄八重山諸島で長期ロケを敢行して撮られた今村昌平監督による1968年作品で3時間近い長尺。

あらすじはこちら
神々の深き欲望 - Movie Walker
https://movie.walkerplus.com/mv22374/

 本作品は石垣島を中心とする八重山諸島で長期ロケを行って製作された映画であるが、かなり大変なロケだったらしく、俳優からは不満の嵐、嵐寛に至っては何度かロケ現場から逃亡を図ろうとしたともいわれている。今村昌平監督はこの作品で俳優を使って作る映画に懲りて、以後10年ほどドキュメンタリーの制作に専念したとインタビューで語っている。

 本作を演じるのはヤマト(日本本土)の俳優であり、セリフはエセ日本語方言であって、琉球語は出てこない。ノロだのウタキといった舞台装置は出てくるものの、しょせんヤマト本土による沖縄に対する、オリエンタリズム的なイメージ投影でしかない、という批判は十分可能である。

 ただそうだとしても、今日改めてみると、今日の沖縄の状況を多分に象徴しているという先見性はやはり認めるべきだろう。つまり本作は沖縄と本土との植民地的関係を多分に象徴し描いており、それが今日なお有効であるということは、その関係が沖縄返還を経ているにもかかわらず全く変わっていないということであろう。

 舞台はクラゲ島という沖縄の架空の島。この島は区長の竜立元(加藤嘉)の支配下にあるが、結局島では田んぼはほとんどなくサトウキビ畑でありヤマトの製糖会社の支配下にあり、そこからの現金収入がなければ島での生活は成り立たない(この構図は、沖縄では薩摩以来の実際だが)。立元は製糖会社の技師、刈谷(北村和夫)からクブラ割からではなく、ウタキの森から工場に水を引かせてくれ、それがだめなら工場は撤退すると迫られて、ノラリクラリと最初はかわすものの、それが、自分の利益に直結する、ウタキの森をつぶして飛行場を作り観光開発をしてはどうかというヤマトの本社からの提案には、両手を挙げて賛成し、ウタキの森潰しの先頭に立ってしまう。

 竜や村の衆から村のおきて、インセスト・タブーを犯したとして、懲罰的な労役を課され、村八分にされていた太(ふとり)一家は、飛行場開発話が持ち上がると、一転、村の伝統を犯した反逆者から、突然意図せずして、結果的に、村の伝統を守る抵抗勢力になってしまう。だがその抵抗勢力たる太一家は、コミュニティーの力によって制圧され、かろうじて次男亀太郎(河原崎長一郎)のみは東京に逃れる形になって命をつなぐものの、ヤマト資本による飛行場開発は完遂される。

 伝統コミュニティーが状況次第で時にヤマト/本土の手先となり、伝統的な力が時として伝統破壊、植民地支配の道具となってしまう... これは植民地的構図であり、例えば辺野古をめぐる今日の状況をも比喩しているのではないか、というのは深読みのしすぎだろうか?

 ところで、浜村純演じる男が映画の冒頭近くで、古事記のイザナギ・イザナミの兄妹婚神話に似た沖縄の島(国)創成物語を歌い語る場面が出てくる。これは実際に本島の一部や八重山諸島に伝わる開闢神話らしいのであるが1)、これが太(ふとり)一家がノロの家系であること、またインセストタブーを破ったということで村八分になったということと関連している。いわば太一家は、聖と穢れの両義性を持った一家であり、彼らが(島の伝統を破ったとして)排除される存在であったのが一転して伝統を守る象徴となることと関連する。そして太(ふとり)一家が鏡の存在となって、逆に既存の保守体制が「伝統」を守るようなポーズを持ちつつ、いざとなれば、あっさり「伝統」を破壊し投げ捨ててしまう、かれらの言う「伝統」や「掟」のうさん臭さを明るみに出す。この辺りは今村世代の日本における敗戦体験の反映とも言えるであろう。

 ところで本作は国内ではDVDしか出ていない。というよりはそもそも今村作品は一本もBlu-rayディスクが出ていない。だが海外ではBlu-rayディスクが出いてる。

 本作の海外盤Blu-rayはイギリスとフランスで出ている。イギリス盤は2015年にEUREKA Ent.から"THE SHOHEI IMAMURA MASTERPIECE COLLECTION (Masters of Cinema)"と題して出されたボックスセットがあり、復讐するは我にあり、楢山節考、神々の深き欲望、にっぽん昆虫記、豚と軍艦がBlu-rayとDVD(PAL盤)、人間蒸発のみDVDのセットで出た。バラ売りもされたが、現在絶版でプレミア価格がついている。ただしBlu-rayのリージョンはB。DVDは2である。
 フランスから出ているものは、ELEPHANT FILMSから2016.11.15に出た、やはりBlu-rayとDVD(PAL盤)のコンボ版。こちらは現在も入手可能。おそらくソースはEUREKA盤と同じだと思う。画質に関してはさすが精細度はDVDと全く異なる。またレストレーションに関しても、ホコリやスクラッチはしっかりとられている。ただDVDと比べた時Blu-rayのほうが明暗のダイナミックレンジが狭く、暗い部分が十分に暗くなく白っぽい印象。これはBlu-rayの諧調に問題があるというよりも、DVDはほぼダイナミックレンジを使い切ったがBlu-rayに関してはかなり余裕を残しているということだと思う(そもそもBlu-rayのほうが規格上諧調のダイナミックレンジ自体は大きいはずである)。プロジェクターやテレビの設定で対応可能だろう。希望価格は20.02ユーロ。こちらは通常の日本のプレイヤーで再生できるのが大きなメリット。但し特典映像は1080P 50fps(通常PAL TVの規格)なので、国内のプレイヤーで再生できるものとできないものがあった(本編は24fps)。ちなみにSonyのプレイヤー、レコーダーではだめ、Panasonic、Sharpでは1080p 50fpsの映像は再生可能であった。このフランス盤が本作品BDの決定版と言えるだろう。

1) 例えば以下のサイトを参照
開闢神話 - おきなわ物語 (沖縄観光コンベンションビューロー)https://www.okinawastory.jp/about/theme/history

le_Profond_Desir_des_Dieux.jpg

原題: 神々の深き欲望
英題: Profound Desires of the Gods / Kuragejima-Legends from a Southern Island

1968年 日本映画
カラー 1:2.35 175分
監督: 今村昌平
脚本: 今村昌平、長谷部慶治
撮影: 栃沢正夫

参考
Shohei Imamura Collection レビュー - DVD Beaver サイト (英語)
http://www.dvdbeaver.com/film5/blu-ray_reviews_69/the_shohei_imamura_collection_blu-ray.htm

フランス盤


イギリス盤
今村昌平マスターワークスボックスセット


単品









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