キム・ギドク『嘆きのピエタ』に見る韓国タブーコードの強さ

画像 国内でも劇場公開されたキム・ギドク監督の最新作でベネチア金獅子賞受賞作。もちろんいつものキム・ギドク節は健在なのだが...

あらすじはこちら(Movie Walker)
http://movie.walkerplus.com/mv52504/

 テーマとしては実は二つの家族(実際の家族と疑似家族)の葛藤を描くという、韓国映画のテーマとしては実はタイムリー。というのは急速な少子化の中で、韓国の伝統的な家族関係の維持が危ぶまれており、それに対する啓蒙の意味か、最近の韓国ドラマに血縁のない家族を扱ったものが増えているからだ。
 ただ、個人的には家族の葛藤の表現よりも(何となくこの家族の情の表現が、ワン・シャオシュアイの『我らが愛にゆれるとき』のような人工的な臭いを感じさせるのだ)、むしろ弱者が少しでも自分より弱い弱者を探して食い物にしないと生きていけないという、韓国の弱肉強食社会の非情さの方がむしろ胸に迫る(これはカンドが母親に心を許していく表現に今ひとつ説得力がないように感じられることもその理由の一つである)。日本でいえば、古いところでは永山事件や、最近であれば光市母子殺害事件に近いものがあるテーマかも知れない。

 ところで、韓国人は私の映画を見てくれないと一時引退宣言をしたキム・ギドク監督。この作品ではむしろ、どうせ多数の韓国人が見てくれないだろうというところに居直っているような表現が見受けられる。つまり近親相姦のタブーコードである。このタブーコードの強さは、先日『後宮の秘密』でも指摘した。『後宮の秘密』の場合、エディプスコンプレックスと引っ掛けてつくれば欧米にも理解されやすいのに、なぜか設定上それを避けている。それだけ近親相姦のタブーコードが強いと論じた。
 本作品では、それを思いっきり破っていて、キム・ギドクそこまで腹をくくって表現するか、と思わされるのだが、実は終盤すべてが明らかになってみると...

 結局、それだけ韓国社会において近親相姦タブーへのオブセッションが非常に強いということなのだろう。掟破りと思われたキム・ギドクにしてこれが限界か。

 本作の韓国封切り日は2012年9月6日。韓国での観客動員数は603,283人とキム・ギドク作品としてはまずまずの入り。国内劇場公開済み。

原題『피에타』英題『Pieta』監督:김기덕
2012年 韓国映画 1:1.85 104分

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