『女朋友。男朋友』 - 「ORZボーイズ」の楊雅喆(ヤン・ヤーチェ)監督4年ぶりの新作

画像 非常に感銘深かった『ORZボーイズ』の楊雅喆監督の4年ぶりの新作と聞けば、当然期待せざるを得ない。今年度、第49回台湾金馬奬7部門にノミネートされ、最優秀女優賞および観客賞に輝いている。

 2012年台北。ある女子中学校で学校でショートパンツをはかせろ、と生徒たちが示威行動を行った。学校は大混乱。首謀者格の生徒たちが職員室へ集められ、その保護者達が呼び出された。首謀者格の生徒のうち双子の生徒の保護者としてやってきたのが陳忠良(張孝全)。「問題を起こす子は、大概家庭に問題があるものだが...家庭に問題があるのでは?」と問う教師に「問題はありません」と答える忠良。さらに「あなたはこの子たちの義理の兄だそうですが...」といぶかしげに問う教師に、忠良は、「書類上はそうですが、実質的に私が父親です。それに、この子たちは全く正常です」と断言する。

 そして時は民主化前、戒厳令時代の1985年台湾、高雄... 阿良こと陳忠良、小美こと林美寶(桂綸鎂)、そして阿仁こと王心仁(鳳小岳[リディアン・ボーン])は、同じ高校に通う仲良し三人組。ややボーイッシュな小美は何かとやや気の回らない阿良のことを構い、仲の良いカップル。そんな二人をほほえましく見守る二人の親友、阿仁、と傍目には、そして阿仁自身にも見えていた。
 ところが、阿良はある日阿仁に、「実は彼女とは恋人関係ではない」と告白する。驚く阿仁。実は阿仁は密かに小美に心を寄せていたのだ。しかし、小美が最も心を寄せている人物は阿良であることは明白。それでも、阿仁は小美に「僕が君にとってセカンドベストでしかないのは分かっている。それでも...」と交際を申し込む。阿良にいつもかわされていた小美は、阿仁の申し出を受け入れる。

 1990年、阿良と阿仁は台北の大学に進学。家庭が経済的に恵まれていなかった小美も就職して台北へ。阿良と阿仁は時代の流れに掉さすように当然民主化運動に引き込まれ、小美も阿仁につきあわされて中正紀念堂で開かれた学生集会に参加。阿仁はちょっとした民主化運動のヒーローになっていた。一方、小美は阿仁と付き合いながらも阿良への思いが断ち切れ切れない。そんな中、高校の同窓生で同性愛者の許神龍(張書豪)が阿良も自分たちの同類だと伝える。そう、阿良がずっと思っていた相手は阿仁だったのだ...
 一方、ちょっとしたヒーローになった阿仁は、エリートの女子学生にもてもて。そんな中、家柄も冴えない自分は阿仁にふさわしくないのではないかと、小美は気おくれを感じ始める...

 1997年。小美は仕事も順調でひとかどのキャリアウーマンになっていた。その一方で彼女の内面は満たされていなかった。実はすでに別の女性と結婚し、子供までいる阿仁とずるずる関係を続けていたのだ。阿仁は富豪の娘と結婚し、義父の持つ会社で「順調に」出世していた。だが、実は妻の家族の機嫌を伺わなければならない自分の立場にイラついており、その不満のはけ口が小美だったのだ。そうと知りながらも彼との関係を断ち切れない小美。
 そんな中、彼女は偶然再会した許神龍に阿良に電話するよう説得され、ぎこちなく電話を掛ける... 実は阿良も、別の男性パートナーとの間で小美と同じような悩みを抱えていたのだった...

 果たして、三人の関係は如何に...

 ここのところ、台湾映画は80~90年代の回顧映画が目白押しである。『9月に降る風』『マンカ』『あの頃、君を追いかけた』... もはや成熟社会を達成した現代の台湾社会にあって、戒厳令政治のくびきを脱して急速な経済成長を懐かしむ、そんな時代になったのだろう。ちょうど我々が昭和30年代、40年代を懐かしむように。本作もその中の1本。

 ただ、『ORZボーイズ』の楊雅喆(ヤン・ヤーチェ)らしく、単なる青春や初恋の回顧談、ノスタルジーに終わらず、彼らしい仕掛けが仕掛けられている。
 まずは尋常ではない三角関係。普通はある異性を巡って2人がさや当てするというパターンだが
ここでは同性愛を含めた循環的三角関係としている。このため、彼らが直面する障壁や切なさもより深い。またラストは、ある種ハッピーエンドではあるのだが、決して常識的な結末ではない。
 キャスティング(桂綸鎂、張孝全、鳳小岳)も当代の人気者だが、この映画の中での桂綸鎂の扱いは、最近の出演作に見るフェミニンな美人の女の子というよりは、彼女の初出演映画『藍色大門(邦題: 藍色夏恋)』(2002)を想起させるボーイッシュなキャラクター。そういう意味では張孝全も『盛夏光年(邦題: 花蓮の夏)』(2006)を想起させる。

 同じノスタルジーを扱いながらも、明らかに常識に異議申し立てをし、恋愛のあり方にもオルタナティブを提示しようという楊雅喆の意気が感じられる作品。ただ、個人的にはやや理に走ったか、という印象もなくはない。

 本作は2012.8.3台湾封切り。第49回台湾金馬獎で最優秀女優賞、観客賞を獲得。また第55回アジア太平洋映画祭でも最優秀女優賞。国内未公開。

 なおビデオディスクは、台湾盤(2013.1刊行予定)よりも香港盤の刊行が先行。香港盤Blu-rayがリーズナブルな価格で購入できるのでお勧め。但し一切特典映像はなし。香港盤DVDもあり。

原題『女朋友。男朋友』英題『Gf*Bf』監督:楊雅喆
2012年 台湾映画 カラー 分

Blu-ray(香港盤)情報
発行・販売: 洲立影視 (Intercontinental Video) 画面: 1080p/1:2.35 音声:Dolby5.1 中国語 本編:105分
リージョンA 字幕: 中/英(On/Off可) 片面一層 2012年 11月発行 希望価格 HK$169 (DVDはHK$99)

『ORZボーイズ』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200902/article_5.html







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