初恋回顧の大ヒット台湾映画 - 『あの頃、君を追いかけた』

画像 1990年代の青春時代を回顧する台湾のラブロマンス映画。原作は小説家、九把刀(Giddens)の同名の自伝小説で、原作者が脚本&監督まで担当している。

 柯騰こと柯景騰(柯震東)は、台湾中西部の中都市・彰化にある私立の精誠高級中学(実在の学校)の生徒。彼は勉強のやる気のない劣等生で、いつも仲間とつるんでは悪ふざけをしていた。そんなある日、こともあろうに国語の授業中、友人の勃起こと許博淳(鄢勝宇)とマスかき競争をしていて、先生見つかり、立たされてしまう。そのうえ、今までワルの生徒は色々いたが、こんな変態生徒は開学以来見たことがないと、担任の先生は、優等生の沈佳宜(陳妍希)の前に二人の座席を変えさせ、沈佳宜に二人を良く見張るよういいつける。
 仲間たちは実はクラス一美人の沈佳宜に夢中だったが、彼はイタズラしようとする度に沈佳宜に後ろから蹴られるなど「教育的指導」を受ける立場に。だが、ある日彼女が英語の教科書を忘れ、先生に怒られかけたのを、柯景騰は彼女に教科書を貸して、自分が忘れたことにして、彼女を庇う。それをきっかけに、彼女はお礼のつもりで彼の勉強を見てあげることに。とはいえ勉強嫌いの柯景騰にとっては、「教育的指導」の延長であるお節介以外の何物でもなかった。だが、内心、仲間と同様彼女を憎からず思っていた柯景騰は、徐々に彼女との勉強が楽しみになる。そしていつの間にか成績上劣等生の地位を脱することに...

 やがて、高校の卒業を迎え、大学入試に向かう二人。だが沈佳宜は試験中に腹痛を感じて実力が発揮できず失意のどん底に。彼女を慰める柯景騰。それでも彼女は国立台北教育大に合格。だが教師の道を進むことになった彼女を、柯景騰は何より似つかわしいと思った。柯景騰自身は新竹の理系の大学(映画でははっきり示されないがWikipedia中国語版の記述によると国立交通大学のようである)に進学が決まる。そこで彼女の気持ちを告白する柯景騰。

 こうして新竹と台北に別れた二人の遠距離恋愛が始まる。だが、相変わらずお馬鹿をやらかす柯景騰が学内で格闘技大会を企画したことが、二人の関係に大きな転機を与えることに...

 台湾では最近1980年代末~90年代を回顧する青春映画が次々と作られており、『九月に降る風』『モンガに死す』が国内でも公開されているが、それらに続く作品。その中でも本作は『モンガに死す』を抜いて2011年台湾での最高の興行成績(4.6億NT$)を収めて最大の話題作となった(やはりWikipedia中国語版の記述による)。また台湾国産映画の本作が洋画専門館でも上映されたのも異例。
 個人的にはあの頃が既に台湾では回顧の対象、というのがちょっと複雑な思いもあるが、安定成長期に入った台湾にとって、民主化直後の高度成長期の台湾の社会の勢いを懐かしむ、というような意味合いもあるのではないかと思われる。おそらく日本における昭和30年代後半から40年代と同様な意味合いがあるのだろう。

 青春時代初恋の甘酸っぱい思いを、そのほろ苦い思い出とともに提示している、という点では、「青春・初恋」もの映画の定石をきっちり踏まえた作品と言える。先行した『九月に降る風』『モンガに死す』では、その苦い側面が裏切りや友情・人間関係に大きなひびを与えるところまでに至っているが、本作では「ほろ苦い」程度で収まっており、青春の幼さの思い出の範囲に留まっているという点が異なる。そういった意味では、娯楽映画としての出来の良さに加え安心して見られる、という側面が大ヒットに大きく寄与しているのであろう。台湾映画界における、韓国映画の『サニー』のような位置づけになるだろう。
 やはり、ヒロインである、陳妍希演じる沈佳宜がとても魅力的で、自分の学生時代にも沈佳宜のようなマドンナがいてくれたら... そんな思いを感じさせる点がよい。逆に女性は「男の子って馬鹿なんだよね」と思いながら見ているのだろうか?陳妍希は南カルフォルニア大学卒業後台湾に帰り『聴説』で主人公の姉を演じて注目された。柯震東は本作がデビュー作。

 なお台湾の漫画家彎彎こと胡家瑋が沈佳宜の親友にして同級生である自分自身の役を演じているが、実在の彎彎自身は彰化の出身でも九把刀の同級生でもなかったので、演じているのは本人であるが、設定はフィクションのようである。

 本作品は台北国際映画祭(2011.6.25)がワールドプレミア。そこで観客賞受賞。引き続き、限定上映が続いた後、8.19より正式封切り。日本では2011年東京国際映画祭に出品されている。このほかシンガポール、マレーシア、香港、マカオ、中国で公開されて、香港でもやはり大ヒットしている。

 監督の九把刀(Giddens)は本名が、映画の主人公の役名と同じ柯景騰。1978年彰化県生まれ。国立交通大学管理科学科を卒業後、私立東海大学(台中)社会学修士。現在群星瑞智芸能所属。2000年にネット上に作品を発表し始めてから現在まで約60本の長、短編小説、漫画原作、エッセイ等を発表し、小説家が本業。作品の多くが映画、TVドラマ、演劇、ゲーム化されている。
 映画化された作品にオムニバス映画『愛到底』の一部、そして『殺手欧陽盆栽』、本作がある。映画監督としては本作がデビュー作。
 因みにヒロインの実在人物の名前は沈佳儀と、役名とは一字違えている。

 台湾盤Blu-rayは、鮮明・高解像度でクリアな画質。ただし特典映像はDVD同等の解像度。Blu-rayは今のところ台湾盤ノーマル仕様のみ。DVDは台湾と香港から本編+特典盤の2枚組が出ている。スチールケース入り、ポスター付きなど特典がさらに付いた豪華版もある。

原題『那些年, 我們一起追的女孩』英題『You Are the Apple of My Eye』
監督:九把刀(Giddens)
2011年 台湾映画 カラー 110分(マレーシア版109分、中国版107分)

DVD(台湾版)情報
発行: 群星瑞智芸能 販売: Sony Music Taiwan 画面: HD1080p(1:2.35) 音声: DTS-HD/リニアPCM 5.1 北京語
本編: オリジナル110分 リージョンALL 字幕: 中/英 片面一層 2012年3月発行 希望価格NT$650

『マンカ(モンガに死す)』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201009/article_4.html
『九降風 (九月に降る風)』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200901/article_14.html
『聴説』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201004/article_9.html

『サニー』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201201/article_6.html




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