パン・ホーチョン監督の一押しコメディ映画『公主復仇記(ビヨンド・アワ・ケン)』

画像 ようやくパン・ホーチョン(彭浩翔)監督の作品(『ドリーム・ホーム』)が日本で一般劇場公開されると先日書いたが、それを記念した彼の特集上映を前に、彼のコメディを代表する本作のレビューをアップしたい。
 実はかつて最初の日本劇場公開作になるはずだった作品がこれ。たしか東京国際映画祭でも日本で劇場公開の準備が進んでいると監督も言っていたはずなのだが、なぜか話がお蔵入りしてしまった。2004年の作品だが、おそらく現在でもパン・ホーチョン監督のコメディセンスが最大限発揮されているコメディ映画だろう。国内では東京国際映画祭での上映の他、衛星放送のMATV ムービーアジアで放映されたことがあるようだ。

 香港の飲食店で働く大陸の女の子、シャーリー(陶紅[タオ・ホン])。彼女は香港の消防士の男の子ケン(呉彦祖[ダニエル・ウー])というボーイフレンドがいる。そこに突然、見も知らない元学校の教師だという女性、チン(鍾欣桐[ジリアン・チョン])が訪ねてくる。実はチンはケンの前の彼女で、彼と突然別れを告げられた後インターネットに自分のヌード写真が掲載されるという被害に遭い、そのため退職まで余儀なくされ、何とかしたいので力を貸して欲しいと言うのだ。その上彼はB型肝炎なので、彼とする時はコンドームを使わないと危ない、などという話までする。チンの出現にすっかり戸惑うシャーリー。
 ともあれ、パソコン上でその証拠写真まで見せられては信じざるを得ない。ともかく半信半疑ながらも、シャーリーはチンの写真を彼のパソコンから消去するのを手伝うことに。
 シャーリーは何とかチンをケンの部屋に忍び込ませてパソコン上の画像を消さそうとするのだが、1回目は彼が鍵を変えていて失敗。2度目はシャーリーがケンを誘って映画を見ている間に、彼の鍵を持ち出して合い鍵を作らせることにする。いろいろ作戦を考え出すうちに信頼感を深め合う二人。それと同時にシャーリーもケンに対する不信感が募ってくる。
 ようやく苦労してケンの部屋に忍び込めた二人だが、そこへケンが帰ってくる。絶体絶命の二人は...

 とにかくパン・ホーチョンのコメディのエッセンスが詰まった作品。皮肉を効かせた笑い、伏線を貼りまくったプロット(一見何でもないように見える場面が後々重要な意味を持つ)、言語的笑いのセンス(例えば、広東語ネイティブなチンが広東語での下品な言葉を恥じらいながら言うところを、ネイティブでないシャーリーは平気で言ってしまうところなど)、音楽的センスの良さ、警察官イメージへのオブセッション(確かパン・ホーチョンの父親は警察官)、そして、初期の『大丈夫』『ユー・シュート、アイ・シュート』以来続く、最後の驚きの大逆転の冴え渡り... パン・ホーチョン作品を最初に見るなら、国内盤化されている『イザベラ』も悪くはないが、コメディから出発した彼のコメディセンス全開という意味では本作品をまず一押ししたい。
 但し、『出エジプト記』の香港盤DVDに収録されていた付加映像によると、パン・ホーチョン作品の最大のコメディセンスは、その台詞のニュアンスに発揮されているという。そういった意味では私を含めた広東語が分らない人々には、彼のコメディの真価は実は理解できないのかもしれない。
 なお、原題の『公主復仇記』は直訳すれば「お姫様復讐記」という意味(因みに「公主」がお姫様/王女の意味なのは韓国語も同じ)。これはケンがチンに初めて会った時に傷心のチンに、本当の王子様ならお姫様を傷つけることはない、もし傷つけたらそいつは王子様ではなく下衆野郎だ、と声をかけるところから。そのケン自身チンを傷つけることになるわけで、その下衆野郎であるケンにいかに復讐していくかという過程を描いたお話だ、というわけである。

 なお、この映画撮影後に、ジリアン・チョンは、本作品を地で行くようなスキャンダルに見舞われたことも記しておきたい。

 香港版DVDの画質はかなり良好。シャープというよりは、ややアナログ的なローコントラストのソフトなイメージだが、解像度自体はかなり高く、ダイナミックレンジ自体もあり、暗い画面でもつぶれたりすることがない。色彩はきれいであり、アップスケーラー次第でかなりの画像の向上が期待できる。なお今のところ国内版ビデオソフトの発売はない。

原題『公主復仇記』英題『Beyond Our Ken』監督:彭浩翔
2004年 香港映画 カラー

DVD(香港盤)情報
発行販売: 美亜娯楽 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby5.1 広東・北京語 本編:98分 リージョンALL
字幕:中/英(On/Off可) 片面二層 2005年 2月発行 希望価格HK$110.00

過去のパン・ホーチョン監督作品紹介

『志明と春嬌(恋の紫煙)』
http://yohnishi.at.webry.info/201010/article_9.html
『破事兒 (些細なこと)』
http://yohnishi.at.webry.info/200901/article_17.html
『AV』
http://yohnishi.at.webry.info/200806/article_1.html

特集上映「パン・ホーチョン、お前は誰だ」公式サイト
http://www.phc-movie.com/

東京国際映画祭『ビヨンド・アワ・ケン』ティーチイン記録
http://homepage.mac.com/xiaogang/films/talk/2004/041030tiff.html

※付記
2013.12本作品の国内盤DVDが刊行された(発行元: オールイン・エンタテインメント)。
http://all-in-ent.com/ippan/1312/06.html





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この記事へのコメント

2011年06月26日 21:34
初めまして、ダニエル・ウーを応援している者です。
少々気になる箇所が有りましたので、コメントいたします。

私もこの作品は大好きで、パン監督の作品の中でも相当に好きなので、レビューは頷きながら拝見いたしました。

でも、
「ダニエル・ウー、ジリアン・チョンは、本作品を地で行くようなスキャンダルに見舞われたことも記しておきたい。」
>これはもしかしてエディソン・チャンとジリアンの画像流出事件の事でしょうか?
ダニエル・ウーがスキャンダルに見舞われた事は何でしょうか?
何かダニエルファンの私の知らない事があったかのか、気になりました。
宜しくお教え下さい。
yohnishi
2011年06月26日 22:39
失礼しました。仰る通りエディソン・チャンとジリアンでしたね。訂正します。

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  • パン・ホーチョン監督『AV』国内盤DVD化

    Excerpt:  どうやら彭浩翔(パン・ホーチョン)監督の『AV』がようやく国内盤リリースされるようだ(劇場公開されずDVDスルー?)。とりあえず本ブログでは以下で紹介しているのでご参考までに。 http://yo.. Weblog: yohnishi's blog (韓国語 映画他) racked: 2013-03-12 21:43