北京の麻薬中毒者を追ったドキュメンタリー『紙飛行機』

画像 やはりINAの趙亮作品集より、2001年の長編ドキュメンタリー『紙飛行機』。本作品では北京の麻薬中毒の若者たちの姿を追う。

 経済発展に湧く中国、北京。だがその影には発展から取り残され失業中の若者たちが増えている。それらの若者たちの中には麻薬に手を出すものがいる。本作品はそれらの若者を1997-2000年に亘って追っている。
 元々は失業の憂さ晴らしから麻薬に手を出した彼ら。生計は路上で海賊版テープなどを売って立てているが所詮たかが知れている。今回が最後、今回が最後と言いながら、結局止められない。だが1998年、警察の大きな取り締まりがあり、ある者がウイグル人の売人から買っている現場を警察に見つかったことをきっかけに、10人の仲間の内9人が警察に捕まった。
 中国では麻薬の購入で捕まると最初の1,2回はリハビリセンター送り。そこで数ヶ月掛けて離脱したと認められると社会復帰ができる。だがそれ以上になるとリハビリセンターの後は数年間の再教育労働(=懲役)、さらに繰り返すとリハビリセンター抜きに再教育労働に送られる。
 この手入れで一部の者は再教育労働に送られたが、多くの者は数ヶ月のリハビリセンター収容の後、再び北京の町に戻ってきた。だが彼らは反省の色が薄く、警察に捕まらない様に引っ越したりして、やめなきゃやめなきゃと言いながら相変わらずの生活。親たちの説教にも耳を貸そうとしない。こんな中、方磊と梁陽のカップルがいた。梁陽は方磊が浮気をしたと自殺未遂を図る。さらに方磊は1999年6月警察に捕まりリハビリセンターへ。3ヶ月後出所するがその1月後再度警察に捕まる。
 方磊の父親は息子が立て続けに二度捕まった精神的ショックで耳が聞こえなくなる。それをきっかけに方磊は本気でクスリを止める決意をしてリハビリセンターを出所する。
 2000年、決意を固めた方磊は恋人の梁陽にも止めさせようと、やはり止めた友人とともに梁陽の説得に掛かる。だが、彼女は麻薬離脱剤を買うために貸した金で、再びクスリを買ってしまう。方磊は彼女の母親とともに彼女の説得を試みるが、彼女は耳を貸そうとしない。
 その一方で、クスリのやり過ぎで腎臓をやられた王芸浪は入院するしかなくなった。王芸浪は病院のベッドで監督に、この映画の題名は決まったか、と尋ねる。監督がまだだ、と答えると彼は題名は「紙飛行機」にしろという。監督が理由を問うと、紙飛行機は長く飛ぶのもあれば、すぐ落ちてしまうのもある、だが結局地面に落ちてしまうことには変わらない... それを自分たちの境遇に例えたのだと答える。
 外国人にはほとんど分からない、中国の明日の見えない失業青年たちの間に蔓延する麻薬汚染の現状を、ここまで描き出していいのかと思われる程赤裸々に描く。映画に出てくるある父親の話では、30歳以下の若者の間で、価値観が変わったこともあって、このような失業青年たちが増えているらしい。親と同居すればとりあえず食べる心配はなく、また親との関係から麻薬に手を染めることは少ない様だが、これらの若者の多くは、親との価値観の違いから親の家を出て仲間同士でつるんで暮らしていて麻薬に手を出すケースが多い様だ。
 中国の発展の片隅に、出口なきまま毎日を暮らす若者を描いた作品。考えて見ると、趙亮の作品集に収められている三作品は広い意味でテーマが似ていると言える。いずれも出口なき今日、明日を生きる人々を描いている。もう一つは、DVD付録のパンフレットでジャンーフィリップ・トゥッセが指摘している様に、法秩序の境界を生きる人々を描いているという共通点がある。『紙飛行機』では法秩序を逸脱した者を、『北京陳情村の人々』は法秩序による救済からこぼれ落ちた人々を、そして『罪と罰』は法秩序を維持しようと徒労を重ねる兵士たちを描いている。

本作品は日本未公開

 因みに2009年8月、メルボルン国際映画祭で「ウイグル世界会議」のラビア・ カーディル議長が主人公のドキュメンタリーが上映されたことに関連して、ジャ・ジャンクーら中国人監督が上映辞退をしたが、趙亮もその一人だった。本作を見るとその理由がよく分る。ただ、ウイグル人の売人というのは結局末端の(逮捕リスクの高い)存在であり、おそらく漢族の元締めがいるはずだと思うのだが...

原題『Paper Airplane』監督:趙亮
2001年 中国映画

DVD(仏盤)情報
発行・発売:INA 画面: PAL/4:3(1:1.33) 音声: Dolby2 中国語 本編: 78分
リージョンALL 字幕: 仏/英 片面二層(他の作品も含め3枚組) 発行年2010年4月 希望価格 € 29,90

趙亮作品集DVDボックス紹介ページ
http://yohnishi.at.webry.info/201006/article_13.html

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