台湾映画『ビューティフル・クレイジー(乱青春)』

画像 台湾の李啟源(リー・チーイェン)監督による青春期の女性の友情の崩壊を描いた映画。時間軸が複雑に交錯して、1回見ただけではストーリーが追いにくい。

 この映画は基本的には、二つの時代が平行で走っている。ひとつは主人公たちの高校時代、そしてもうひとつは大学時代である。また時間軸がそれぞれの時代ごとに前後するので、ストーリーを追おうとすると苦労することになる。
 主要な女性登場人物は3人居て、シャオブー、アミー、エンジェルであり、その最も核になる人物はシャオブー。シャオブーの高校時代の親友がエンジェルであり、シャオブーの大学時代のルームシェアメートがアミーである。シャオブーは高校時代にはエンジェルと別れ、そして大学時代にアミーとの友情が崩れていくのだが、その原因はいずれも男であった。
 映画は冒頭、時間軸的には最も最後に近い、シャオブーとアミーの友情が崩壊し、どちらが部屋を出て行くかコインを投げて決めようとする場面から始まる。そのコイン投げが高校時代の回想を導いていく。
 以下、映画の進行順ではなく、時間軸の進行順に解説していく。高校時代シャオブーはエンジェルとお互いに煙草をすうことがきっかけで親友になる。このときはシャオブーが「お姉」格で、うぶなエンジェルに言い寄ってくる男の子のラブレターを二人で見ては、シャオブーがその男の子を馬鹿にするような、そんな関係だった。やがてエンジェルのシャオブーへの思いは同性愛的なものに変化する。そんな二人の関係に変化が現れたのは、シャオブーがボクシングをやっている男の子、Cakeに出会ってからであった。たまたま体調が悪く道端で倒れこんでいるところを彼に助けられたことから、シャオブーは彼と恋愛関係に入る。しかしそのことはシャオブーとエンジェルの関係の崩壊につながる。最後二人は取っ組み合いの大喧嘩をして別れてしまう。
 それから数年後、二人とも大学生になっている。エンジェルは相変わらずボクシングの後遺症で廃人状態となった父と暮らす一方、寂しさから男に簡単に身を任せるすれっからしに、すっかりなってしまっている。一方、シャオブーは彼と暮らす一方でルームメートのアミーと1部屋を借りて暮らしている。アミーは、シャオブーの持ち物(服や化粧品など)をたびたび無断拝借するのが常習。ある日、シャオブーと彼とアミーの三人で集団デートに出かけるのだが、観覧車の上での彼とアミーとの態度が何かおかしい。やがて、アミーの誕生日、シャオブーが誕生日ケーキを買って帰ろうとすると、彼がアミーにケーキを買って渡すのを見てしまった。その晩、三人で食事をしようと下宿で料理を用意してシャオブーとアミーが彼が来るのを待っていると、アミーが大家から家賃の督促をされたと急に出かけてしまう。実は家賃はその朝シャオブーが払っていたのに... しばらくして彼が戻ってくるが、アミーは一向に戻ってこない。
 実はアミーは下宿の下の階で彼と関係を持ってしまっていたのだ。彼氏まで無断拝借。アミーはさまよい出てアイスクリーム店の前に佇む。その一方、同じ日が誕生日のエンジェルは、昔アイスクリームをおごってもらったことのある援助交際相手の「パパ」に出てきて会ってほしいと電話するのだが、彼は誕生日の歌を歌ってくれるだけ。アミーは門の閉まったアイスクリーム店の前で佇んでいると、そこにエンジェルが現れ二人は意気投合する。
 その後アミーはシャオブーに二人の関係の進行具合を聞かれて、洗いざらい話してしまう。そして、映画の冒頭のシーンにつながっていく...

 映画は、映像や音楽を含めた雰囲気は良い。しかし、時間軸が交錯しすぎて、ストーリーと4人の人間関係が追いにくいこととあいまって、1回見ただけでは追いきれない難解な作品になってしまっている。それと女の子たちの描写があまり地に着いているような感じがしない。その分何らかの問題意識があるというよりはスタイルだけで描いてしまっているように私には感じられた。プロモーションビデオ的心象風景長編映画という感じか。女の子たちはかわいかったけど...

 日本では2008年東京国際映画祭「アジアの風」部門で上映されたほか、ドイツのマンハイム映画祭では審査員特別賞を受賞したようなのだが...

 監督の李啟源はUCLAで心理学修士、さらにパサデナ・アートセンター・カレッジ・オブ・デザインで映画を専攻。台湾の著名な作家兼詩人でもあるということだ。3年前の『チョコレート・ラップ(巧克力重擊)』で注目されたらしいが未見。1)

 なお、台湾版DVDに関しては16:9という表示ながら相変わらず誤解でアナモルフィックではないレターボックス収録。テレシネのクオリティも今ひとつ。しかもDVDの画面指定が間違っていて、実際に収録してある画像はLBなのにアナモルフィック(16:9)指定になっているのでTVやプロジェクターで見るときは強制的にLB or フルスクリーン指定にしないとちゃんと写らない。

1)百名臺灣電影導演檔案――李啟源  Lee Chi-Yuarn
http://www.mtime.com/group/dulimovie/discussion/257091/
参照

原題『亂青春』 英題『Beautiful Crazy』 監督: 李啟源
2008年 台湾映画

DVD(台湾盤)情報
発行: 捷傑(Proview Enterprises) 画面: NTSC/4:3(LB1:1.78) 音声: Dolby5.1北京語
本編: 96分 リージョンALL 字幕: 中/英 片面一層 2009 年 11月発行 希望価格 NT$350


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2010年06月30日 18:39
ときどき覗かせてもらっています。
難解な内容を分かりやすく説明されていてとても助かります。
yohnishi
2010年07月01日 11:32
お読み頂き有難うございます。またお立ち寄り下さい。

この記事へのトラックバック

  • チェコの1960年代アヴァンギャルドフィルム『夜のダイヤモンド』

    Excerpt:  先日日本未公開の作品『パーティと客』を紹介したヤン・ニェメッツのおそらく日本で公開されたことのある唯一の作品。ヤン・ニェメッツは1960年代チェコスロバキア・ニューウェーブ監督の中でも最も前衛的な傾.. Weblog: yohnishi's blog (韓国語 映画他) racked: 2011-05-13 00:06
  • 恋人たちの思いへの心理主義的接近 - 台湾映画『河豚』

    Excerpt:  『乱青春』の李啓源監督によるラブ・ロマンス映画。『乱青春』もいささか実験的な心理主義的アプローチが目立ったが、本作も美しい映像を駆使した心理主義的、象徴的表現で、揺れる情感を描写する。 Weblog: yohnishi's blog (韓国語 映画他) racked: 2012-08-01 06:46