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zoom RSS 『国際市場』 - 韓国人の戦後の苦難の道を辿る韓国映画

<<   作成日時 : 2015/04/12 00:28   >>

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画像 本作は、朝鮮戦争後、韓国が経済成長を遂げるまでの戦後韓国庶民の苦難の道を振り返ろうという映画。監督は 、『1番街の奇跡』、『海雲台』、『セックス・イズ・ゼロ』など娯楽映画を手がけてきたのユン・ジェギュン。

 国際市場の一角、しがない食料品店を経営するユン・ドクス(ファン・ジョンミン)は、再開発のために店を売って欲しいとの再三の要求にも頑固に拒否していた。頑固で孫たちにもいささか敬遠され気味の彼の人生は1950年、朝鮮戦争の勃発から始まった。
 咸鏡道・フンナムへの中国人民軍の攻撃。突然の攻撃に右往左往する人々の前に、急を突かれた国連軍が撤退しようとしていた。人々を見捨てて撤退しようとする中、ある韓国人将校の懇願に、米国人司令官が、一部上陸用舟艇の門を開けて、ある程度の住民を乗せていくことを決定。我先へと韓国人住民が乗り込もうとする。その中にまだ幼かったドクス(チャン・デウン)一家もいた。だがドクスが背中に負ぶっていた2番目の妹、マクスン(シン・リナ)は、ドクスが船を上っているときに転落、父、ジンギュ(チョン・ジニョン)は「自分の代わりに母を守れ。その間はお前が家長だ」と言い残して船を下りマクスンを探しに行く。こうして母、パク・ギレ(チャン・ヨンナム)とドクス、そしてドクスの弟妹たちは、父、マクスンと生き別れたのであった。
 こうして、ドクスらは父が無事に南に行けたら落ち合おうと言っていた、釜山・国際市場の父の妹、コッブン(ラ・ミラン)の店「コップニネ」にやってくる。自分たちが食べていくだけでも精一杯なのにと嫌な顔をされながらも、ドクス一家は居候し、店を手伝ったり、仕事を探しては生活していくのであった。
 勉強のできる弟スンギュを大学で勉強させるために毎日港で力仕事に励む兄のドクス。だが、兄だけに仕事を任せるのは忍びないとスンギュ(イ・ヒョン)は勉強を放棄しようとする。そんな弟を諫めるドクス。そんな中、親友で映画館の息子チョン・ダルス(オ・ダルス)が韓国人をドイツに坑夫として派遣する話を持ってくる。ダルスはドイツに行って白人の女と恋愛してみたいというのである。こうしてドクスとダルスは面接を受け3年間の約束でドイツに派遣されることになる。
 だが、ドイツでの坑夫としての日々は思った以上につらい労働の毎日だった。そんな中、ドクスはドイツの看護学校で勉強していたオ・ヨンジャ(キム・ユンジン)と出会う。やはりドイツでつらい生活をしていたヨンジャとドクスは急速に近づく。やがて派遣期限が近づいてきたある日、ドクスとダルスはガス爆発事故による落盤で坑内に閉じ込められ、一時は見捨てられる。だがヨンジャの必死の懇願と、同じ韓国人坑夫仲間の命を省みない救命活動で辛うじて命を救われる。そしてドクスの帰国直前、ビザの延長が認められないドスクはヨンジャに一緒に韓国に帰ろうと懇願するが、彼女に拒否されてしまう。

  ・・・・

 そして、ようやく落ち着いたと思ったら叔母のコップンが亡くなる。亡くなる前にコップンはドクスに店をゆずると言っていたのだが、酒ばかり飲んでろくに店も手伝っていなかった叔母の夫(フン・ソギョン)は、俺の店だからこの店は売ると言い張る。仕方なく、ドクスは店を売るなら自分に売ってくれ、というのだが、今度はドクスの妹でろくに勉強もせず遊んでばかりいるクッスン(キム・スルギ)が、自分の結婚費用は... と言い出す。
 仕方なく、資金稼ぎの手段を探していたドクスの目についたのは、ベトナム戦争における戦時輸送の出稼ぎ仕事であった。輸送業だから最前線に戦闘のため送られることはないと多寡をくくっていたのだが...

 本作は主として1950年代末〜70年代初頭に掛けて、つまり漢江の奇跡を成し遂げる前の韓国の庶民の苦労を描いた作品。資源もなく、朝鮮戦争でインフラもやられてしまった韓国にとって、残る資源は人材しか無い状況。そんな中で主たる外貨獲得手段は、今のフィリピンと同様、出稼ぎであった。1960年代前半はドイツへの男は坑夫、女は看護婦として出稼ぎに行くのが主流であった1)。そして、1960年代末になるとアメリカとの「集団的自衛権」行使によって、韓国はベトナム戦争に参戦させられる。対北朝鮮で反共精神をたたき込まれた韓国軍は、ベトナム解放軍ゲリラに対する情け容赦ない対処によってベトナムでは「ダイハーン」と悪名高く呼ばれた。同時に、韓進グループは、映画に描かれているような、危険な戦時補給輸送業務を請け負い大儲けをする。この功績で韓進グループは経営不振に陥っていた韓国のナショナルフラッグ、大韓航空を引きうけることになり、後のナッツ・リターン事件につながっていくのである。
 このような、父祖の世代の苦労を概観するのが本作である。すでに韓国内で批判されているように、あまりにも批判的意識に欠けている、というのはその通りであろう。韓国がベトナムに対して行った様々なことは今日大きな批判にさらされているが、本作ではそれらに対する反省意識は皆無であり、ただただ、韓国経済成長の捨て石となった人々の悲哀を、肯定的に描くのみである。
 とはいえ、現在の若い世代から、前の世代の歩んできた苦難の道が忘れられ欠けているのは事実であろうし、そのような事実を記憶し記録する意味はある。また事情に疎い外国人にとっても、韓国の貴重な現代史の一コマを伝える貴重な資料になることは間違いない。

 なお、本作に描かれなかったこととして、1970年代に韓国の建設業が盛んに中東方面に進出し、多くの韓国人土木技術者らが家族と離れて中東に出稼ぎに出たことが指摘できるだろう。

 本作の韓国での封切り日は、2014.12.17。韓国での観客動員数は 9,688,642人 (Cine21データ)。日本国内では5月に『国際市場で会いましょう』との邦題で一般公開が予定されている。

1) この点については、本ブログ『懐かしさの終着駅』映画評記事 (http://yohnishi.at.webry.info/201212/article_5.html) 参照。


原題『국제시당』 英題『Gukje Market』 監督:윤제균
2014年 韓国映画 1:2.35 カラー 126分

国内公式サイト
http://kokusaiichiba.jp/

ユン・ジェギュ監督作品
『海雲台』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201003/article_18.html

『1番街の奇跡』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200811/article_9.html


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内 容 ニックネーム/日時
今週末に、東京、駒込の東京琉球館という所で 4月17日南部軍 4月18日南営洞1985 の上映会があります。先日、南営洞1985を観ましたが、こちらでの解説が参考になりました。
うしさん
2015/04/12 11:20

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