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zoom RSS 『顔相 (公開邦題: 顔相師)』 - 顔相占いをテーマにした、ウェルメイドの朝鮮時代劇娯楽映画

<<   作成日時 : 2014/02/16 23:58   >>

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画像 『優雅な世界』(2006)などを監督したハン・ジェリム監督による、朝鮮時代の顔相占い師を扱った時代劇映画で2013年のヒット作品。俳優に、ソン・ガンホ、キム・ヘスなどの実力派を起用。

 朝鮮の、海にほど近い山村に顔相占い師、ネギョン(ソン・ガンホ)とその義弟ピョンホン(チョ・ジョンソク)、そして息子ジニョン(イ・ジョンソク)がひっそりと住んでいた。息子のジニョンは父が占い師でいることを酷く恥じており、学問をして身を立てることを強く望んでいた。ネギョンは息子の前では占いの話は一切しないよう気遣っていた。
 そんなある日、中国との貿易商と身分を偽って、漢陽から、やはり顔相を見るキーセン、ヨノン(キム・ヘス)がネギョンらの元へやってくる。ネギョンはヨノンの顔相を見て彼らが身分を偽っていることをすぐ見破る。実はヨンンはネギョンの噂を聞き、自分の店にスカウトに来たのだ。ヨノンはこんな田舎にいるより都に行くべきだと執拗に勧誘し、ネギョンもその気になる。だが顔相占いの父を恥じていたジニョンは、父が出発する朝、密かに家を出たのであった。
 漢陽についたネギョンは、ヨノンの店で大接待を受けるが、その経費は全てつけになっていた。結局、ヨノンの店でネギョンはただ働きさせられることになる。だが彼が顔相で殺人事件の犯人を見つけたことで、キム・ジョンソ(ペク・ユンシク)の下、官衙の人材を登用するため司憲府[サホンブ、内務省的役割を果たす朝鮮時代の政府機関]で働くことを乞われ、科挙合格者の顔相を見ることに。その評判はついに王・文宗[ムンジョン](キム・テウ)の元まで届く。王に接見したネギョンは、当初「顔を見ただけで人が分かるなんて」と王から否定される。だがやがて王から王位継承者の顔相を見るように乞われる。実は王は病をかかえており、自分の息子である王子・端宗[タンジョン](チェ・サンウ)に王位継承した後、伯父たちに謀反を起こされるのではないかと心配していたのだ。
 王に指示されるまま、王の兄弟たちの顔相を診断するネギョン。やがて王位を狙っているのではないかと王が一番心配しているという首陽[スヤン]大君(キム・ソヒョン)を見る。だが彼の顔相からは全くそのような野心を読み取ることは出来なかった。その報告をネギョンから受けて安心する王。
 やがて王は崩御し、息子であるタンジョンが王位を継承する。そしてネギョンは、王に伺候する首陽大君を見ると、なんと以前顔相を見たときの首陽大君とは全く別人(イ・ジョンジェ)だった。ネギョンは騙されていたのであった。そして首陽大君の顔には完全に謀反の相が現れていた。早速、ネギョンはそのことを新王タンジョンに奏上し、スヤン大君をすぐに排するよう進言するが、端宗は顔相ごときでそんな大事を決められないと首を頑として縦に振らない。そこでネギョンはタンジョンの首を縦に振らせるためにある秘策を思いつく...

 この映画のモデルとなっている歴史的事実は、朝鮮朝初めて皇太子からではなく、実力で権力を奪取し国王となったことで有名な世祖(首陽大君)と彼が起こしたクーデター癸酉靖難[ケユジョンナン](1453年)である。彼は、ハングル編纂で有名な世宗の子で、世宗の後を継いだ文宗の弟。病弱だった文宗が物故し、1452年、わずか11歳だった息子の魯山君(端宗)が継ぐ。この時文宗の命で左議政の皇甫仁[ファンボ・イン(映画の中ではイ・チャンジク扮)]らが領議政(=摂政)として政治を輔弼するが、臣下の組織である議政府が実権を握るのを見た安平大君が政権掌握に動こうとするのを見た首陽大君は機先を制すべく、クーデターに立ち上がった。
 首陽大君は、余りにも肥大した臣下の権力を抑圧すべきだと主張し王族の支持を得た後、1453年10月摂政役だった皇甫仁、金宗瑞[キム・ジョンソ(映画の中ではペク・ユンシク扮)]らを殺し、さらにやはり王権を狙っていた安平大君を江華島に島流しとし、自ら領議政につく。1454年には安平大君を処刑、家族、側近を奴婢に落とした後、1455年に端宗を排し自ら王位に就いた。
 首陽大君は、映画にもあるように、乗馬と弓を得意とし、鷹狩りが趣味であった。一方世宗からは、安平大君と共に王権に野心ある者として疎まれ、政治の中枢から排除された。というのは、世宗は儒教の長幼の秩序を守って王位を継承すべきだと考えていたからである。その後首陽大君は野心を徹底的に隠し、主に仏典の研究や翻訳出版に注力し、集賢殿の学者たちにも近づいた。だが、癸酉靖難では、鄭麟趾[チョン・インジ]、申叔舟[シン・スクジュ]を除く集賢殿学者出身のハングル編纂に功のあった有能な功臣たちから支持を集めることは出来ず、結局彼らの大半とその家族を粛正してしまった(この中で、端宗復位計画を練り、失敗に終わって処刑された功臣たちを死六臣[サユクシン]と言う)。なお、彼が仏教に傾倒したのも儒教秩序に反して王権奪取しようとしていたことを正当化してとの説もあるようだ1)。
 勿論、顔相占い師ネギョンという人物は完全にフィクションであろうが、歴史的事実として首陽大君は、仏教と共に巫俗(シャーマニズム)を信奉し、占い師を頼っていたようではある。
 
 ネギョンを演じたソン・ガンホは『優雅な世界』でもハン・ジェリム監督と組んでいるが、同時にポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』で顔相を見て犯人を当てようとする伝統的刑事像をも演じていた。今回の顔相占いの役は、いやでもその役を彷彿させる。
 とりあえず、娯楽作品として十分楽しめる作品に仕上がっている。また未来の行く末は単に運命論的に決まるという話しではなく、人は自分の運命を変えうる(ただ非常に逆説的な形で変わってしまうのであるが)というメッセージ、あるいは運命論的発想に対する批判的視線も含んでいる。そういう意味では健全な作品と言いうるだろう。

 本作品の韓国封切りは2013年9月11日。韓国での観客動員数は9102,105人(Cine21 2013.10.20現在データ)。第50回大鐘賞監督賞受賞。日本公開予定あり。

 監督のハン・ジェリム(韓在林)は、1975年済州道生まれ。ソウル芸術大学卒業後、2005年映画振興委員会公募脚本優秀作に選定された『恋愛の目的』で長編劇映画監督デビュー。本作で有数の新人監督として注目を浴びる。以後、長編劇映画としてはやはりソン・ガンホを主演に据えた『優雅な世界』(2007)を経て本作2)。

1)以上の記述はWikipedia韓国語版「世祖」の項参照。
2)以上の記述はWikipedia韓国語版「ハン・ジェリム」の項ならびにDaum映画データベース「ハン・ジェリム」の項参照。

原題『관상』英題『The Face Reader』監督:한재림
2013年 韓国映画 カラー 1:2.35 139分



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『恋愛の目的』 - セクハラの微妙な危うさを描く2005年度韓国映画
 『優雅な世界』『顔相師』のハン・ジェリム監督の長編劇映画デビュー作。2003年映画振興委員会シナリオ優秀作を受賞し映画化した作品。 ...続きを見る
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2014/10/19 12:55

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