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zoom RSS 『旗なき旗手』 - 『太白山脈』の問題意識につながる林権澤1980年作

<<   作成日時 : 2013/10/19 00:32   >>

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画像 イム・グォンテク[林権澤]監督の1980年作品で、先日紹介した『チャッコ』と並び『太白山脈』の問題意識にダイレクトにつながる重要な作品。朝鮮半島が日本の植民地支配から解放され、38度線が引かれた直後、まだ新しい(統一後の)国のあり方が資本主義になるのか社会主義になるのか方向性を巡って争われた時代のソウルを背景に、ある新聞記者の生き様を描く。原作はソヌ・フィ[鮮于輝]の同名の中編小説。彼は朝鮮日報の主筆でもあった韓国では著名な作家。脚本はナ・ハンボン[羅漢鳳]、撮影はイ・ソッキ[李錫基]。反共映画のジャンルにくくられるが、単純な反共ではない。

 やや右派よりの新聞社の社会部記者ホ・ユン(ハ・ミョンチュン)は、解放の混乱の中で何を取材しどういう立場で報道すべきか迷っていた。そんな中、大学の同窓同士、密輸で生計を立てているパク・ヒョンウン(ソン・ジェホ)や、やや左派よりのライバル新聞社記者スニク(ユン・ヤンハ)、右翼のコム(キム・ヒラ)らと、連日のように飲み屋でくだを巻いていた。左翼に親近感を抱いているスニクと右翼のコムは度々酒の席で論争になっていたが、ユンもヒョンウンもイデオロギー対立に疑問を持っていた。
 一方、ユンの下宿大家の家でもイデオロギー対立に巻き込まれていた。主人は元々植民地時代共産主義運動に身を投じていたが、警察に捕まり拷問を受け転向した過去を持っていた。解放後、再び共産党にすり寄り出世の道を探っていたが、難しく、代わりに自分の息子ソンオを共産党の夜間学習会に出席させていた。しかし、ひそかにユンを慕う姉(キム・ヨンエ)は父親が弟を政治に巻き込もうとすることに反対していた。

 そんな中、スニクが警察に捕まったことをヒョンウンの情報から知ったユンは、彼が平安青年会(平安道出身の反共青年団体)の管理下にいることを知って、故郷の先輩のツテをたどってスニクを釈放させるが、彼はひどく拷問を受けていた。
 その一方、反政府運動を取材する中で、これらの運動が共産党指導者イ・チョル(チュ・ヒョン)の強い影響を受けていることを知る一方、イ・チョルを追跡取材している同僚キム(パク・アム)の情報提供で、イ・チョルが、その表面的な主張とは異なり、贅沢な食事を楽しみ、女との情事も楽しみ、さらに米軍の情報を取るために愛人ユニ(コ・ドゥシム)を利用していることを知り、純粋な貧しい人びとがイ・チョルの権力欲に利用されているのではないかという考えにとらわれる。

 さらに、彼がもっとも親しくしてたヒョンウンには、植民地時代満州のハルビンにいて、反植民地運動をやるために共産党に入党していたという過去があったことを知る。彼は組織防衛のため党命で偽装自首して日本の官憲に捕まり、拷問を受けるが、党命を守り決して組織員の名前を自白しなかった。しかし、日本の敗戦で獄から出ると、組織が責任を持って面倒を見ると言っていた妻の姿が見えない。組織はヒョンウンの入獄後の官憲による手入れで、すっかりヒョンウンが自白したものと誤解し、彼の妻を放棄したのだ。結局満州では妻を捜せぬまま、這々の体でソウルに戻った後、三ヶ月前に、精神に異常を来してソウルの売春街に身を堕とした妻とその娘をヒョンウンは発見したのであった。

 そんな中、警察の拷問を受け恨みを抱きかえって左傾したスニクは共産党に入党して、彼らの前から姿を消す。さらに、彼をつかまえさせたのはユンではないかと誤解し、仲間を使ってユンを襲わせる。
 そして共産党内のヘゲモニー争いが、内部リンチを生み出した。それに下宿大家の息子ソンオも巻き込まれる。

 さらに、ヒョンウンは娘が交通事故死をしたことをきっかけに、生きる希望を失い、精神を病んだ妻と心中してしまう。

 左右葛藤の深刻化や社会不安の進化で周辺の友人たちもばらばらになったり姿を消し、閉塞感にとらわれたユンはある考えにとらわれる。ユンを密かに慕っていた大家の娘は、そんなユンの姿を見て、彼がどこか遠くに行ってしまうような不安に駆らる...

 前半までは、左右葛藤、イデオロギー対立の無意味さを徹底的に描いていく。このあたりの問題意識はまさに『太白山脈』と重なってくる。また些細な理由、何かの拍子で、人びとは左右に大きく振れるという状況も良く描いている。そして当時のイデオロギー対立を人びとがどのように見守っていたのか、そして日本の植民地支配の当時の社会への強い影響なども伝わってくる。

 ただ後半、なぜユンがイ・チョルに対しあそこまで恨みを抱かなければならないのかが今ひとつ説得力がない。スコセッシの『タクシー・ドライバー』程の説得力があればと思われる。原作小説を読んでいないので分からないが、あるいは「反共映画」の枠に留まるために無理矢理ああいう結論にしたのだろうか。結局最終的には『タクシー・ドライバー』にも『灰とダイヤモンド』にもなりそこねた、という印象で終わってしまうのが残念。

 韓国での封切りは1980年9月4日(国道劇場)。ソウルでの観客動員数は3628人。1979年大鐘賞最優秀作品賞、美術賞受賞。国内未公開。以上KMDBデータベースより。

原題『깃발 없는 기수』英題『No Glory』監督:임권택
1979年 韓国映画 カラー 1:2.35 98分

韓国映像資料院VOD「旗なき旗手」(韓国語)
http://www.kmdb.or.kr/vod/_sub/vod_basic.asp?nation=K&p_dataid=03377&mul_id=57&file_id=32895

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