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zoom RSS 『パーフェクトゲーム』 - 釜山 vs. 光州 伝説の野球試合を描く韓国映画

<<   作成日時 : 2012/11/13 00:11   >>

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画像 1987年5月、実在の伝説的野球試合(ジャイアンツ vs. タイガース)をモチーフにした作品。

 不安と葛藤の1980年代、韓国ではプロ野球が単純なスポーツという存在を超え、全国民の心をわしづかみしていた。

 1981年、ワールドカップ(映画内では「世界大陸対抗戦」と表記)で韓国はカナダチームを破って優勝する。この時優勝の立役者になったのはチェ・ドンウォン投手(チョ・スンウ)。そして光州の天才投手ソン・ドンヨル(ヤン・ドングン)は、その後輩投手として出場していたものの、チェ・ドンウォン投手の陰に隠れた存在であった。記者から将来の夢はと問われたソン・ドンヨルはチェ・ドンウォン先輩のような投手になりたい、と答えていた。

 その後チェ・ドンウォンは延世大学へ、ソン・ドンヨルは高麗大学に進学しそれぞれのチームを支える屋台骨として活躍し、やがてチェ・ドンウォンは釜山に本拠を構えるロッテ・ジャイアンツへ、ソン・ドンヨルは光州に本拠を構えるヘテ・タイガースへ入団する。
 1986年韓国プロ野球授賞式、この年のMVPはソン・ドンヨルに決定。韓国野球界の主役はチェ・ドンウォンからソン・ドンヨルへ移ったと多くの人々の目に映った。有頂天になるドンヨル。しかしタイガースのキム・ウンリョン監督(ソン・ビョンホ)は、それを苦々しく思っていた。
 一方、チェ・ドンウォンの慶南高校時の恩師でチームメイト、カン・ヒョンス(イ・ヘウ)の父(チェ・イルファ)は死の床にいた。父が死の床にいることを誰も知らせていなかったヒョンス。見舞いのため遅刻したヒョンスを叱るドンウォンにチームメイトのキム・ヨンチョル(チョ・ジヌン)はドンウォンに反発する。

 そんな中「日刊スポーツ」のキム・ソヒョン記者(チェ・ジョンウォン)らは、ローテーションを分析して、5月、釜山の試合でチェ・ドンウォンとソン・ドンヨルが対決しそうだとの情報を掴む。
 実は当時タイガースとジャイアンツの試合は慶尚道、全羅道の地域対立感情が絡みファンがオーバーヒートするので、敢えて両チームのエース投手であるチェ・ドンウォンと、ソン・ドンヨルの対決を避けてもいたのだ。しかしロッテのオーナー秘書室長(キム・ビョンオク)はむしろ注目を浴びると両者の対決を積極的に推進しようとし、ヘテ側もそれを受け入れる。
 だがタイガースのキム監督はこの対決に反対する。そしてドンヨルに対して、お前はまだ韓国一の選手ではなくチェ・ドンウォンの足元にも及ばない、チェ・ドンウォンのすごさは努力を欠かさないこと、そしてチーム全体への目配りができるからこそ韓国一なのだと諭す。
 そんなドンヨルに、芽が出ずとも努力を重ねるパク・マンス選手(マ・ドンソク)の姿が目に入る...

 地域対立感情が今日より遙かに強かった当時、ロッテ・ジャイアンツとヘテ・タイガースの試合は、今日以上に観客たちの興奮を呼び、一種政治的な意味まで持っていたようだ。おそらく全羅道の人々にとっては、慶尚道出身者中心の軍事政権の中で抑圧されているという感覚を持っており、それを晴らす唯一の機会であったはずだ。
 今日その伝説の名勝負を映画に描くということは、この地域対立感情を止揚するという意味合いがあると思われる。そういった意味では以前レビューした映画『危険な結婚挨拶』の延長線上にあると言えるだろう。

 映画としては途中若干だれるところもなきにしもあらずだが、終盤にかけてかなり盛り上がり、感動的。ただ、野球にある程度思い入れがないと、のれない人もいるかも知れない。

 因みに、この映画に描かれていることの多くは事実であるようだが、「スポーツ韓国」の記事によると1)、芽のでないパク・マンス選手関連のエピソード(映画に登場する選手、監督の多くは実在の人物だが、この選手のみフィクションのようだ)、およびチェ・ドンウォンとキム・ヨンチョルが対立していたという設定はフィクションということだ(キム・ヨンチョル選手自体は実在)。

 また、DVDの付加映像の野球評論家インタビュー映像によれば、ソン・ドンヨル選手は体格に恵まれ天才型、それに対し、体格的に劣ったチェ・ドンウォン選手は真面目な努力型というのは事実その通りだったようだ。日本で言えば長島と王の違いというところか。それが対立チームにいたのだから面白い。因みにチェ・ドンウォン選手は映画で描かれているように試合前になると何も喋らないタイプだったようだ。結局この二人が対決する試合は全部で三試合が行われ、1勝1敗、そしてこの伝説の試合で一引き分けと、完全にタイの成績だったようである。

 因みに、チェ・ドンウォン(崔東原)選手はWikipedia韓国版の記事によれば、1958年生まれ。慶南高校(釜山市西区)を経て延世大学に進学。1982年にはワールドカップに出場し、韓国チームの優勝に寄与。卒業後1983年にロッテ・ジャイアンツ入団。1984年にはMVPに選ばれる。ソン・ドンヨルと共に韓国野球史上最高の投手とされる。
 しかし、ヘテ・タイガース選手の事故死をきっかけに、野球選手の待遇改善の必要を痛感。労働団体としての野球選手協議会(日本のプロ野球選手会に相当)を設立しようと運動するが失敗。それがチームから嫌われ、1988年不本意にもサムソン・ライオンズへトレード・放出された。結局1990年に引退を決意。1991年にはアメリカに野球指導者の勉強のため留学した。
 帰国後、野球指導者の道を探るが彼を雇う球団はなく、結局、当時与党の民自党からの誘いを断って、野党の民主党から釜山市西区選挙区から釜山広域市議員(韓国では日本の政令指定都市に当たる広域市は道と同格なので、日本で言えば県議に相当)に立候補するが落選。仕方なく、テレビタレントへと向かうが、当時野球選手のテレビタレントへの転身は、好奇と冷ややかな目で見られたため、1999年にタレント活動を放棄。ようやく2001年ハンファ・イーグルスで投手コーチの職を得る。2007年には同2軍監督になるが、2007年大腸癌の宣告を受け、2008年シーズンを最後にハンファを引く。その後韓国野球委員会の競技監督委員に就任するが、2011年9月14日大腸癌のため53歳の若さで他界。
 義侠心ゆえ、後年は野球人として不遇だったといえるだろう。

 一方、ソン・ドンヨル(宣銅烈)選手は、やはりWikipediaの記述によると、1963年生まれ。光州一高を経て高麗大学へ進学。このあたりのエピソードは映画『スカウト』に出てきた(もちろんフィクションであろうが、おそらく延世大と高麗大のスカウト合戦はあったのだろう)。卒業後実業団チームの韓国化粧品を経て、1985年ヘテ・タイガースに入団。その後3回MVPに選ばれるなど投手として大活躍。1996年には星野監督率いる中日ドラゴンズの誘いを受け日本に渡り、中日の優勝にも貢献する。1999年に引退。2004年にはサムソン・ライオンズに投手コーチとして入団。2005-10年までサムソン・ライオンズ監督として指揮を執る。2011年には古巣の起亜タイガースに監督として戻った。
 因みに、元々タイガースのオーナーだったヘテグループはヘテ製菓を中心に財閥をなしていたが、IMF危機をきっかけに業績が急降下、傘下のヘテ飲料を日本のアサヒビールに売却するなど財閥の解体が進み、その一環で球団も2001年、起亜自動車に売却された。本体のヘテ製菓も2005年クラウン製菓の子会社となっている。

 韓国では政治的には主流だった慶尚道地域を代表するチームで活躍しながらも野球人としては不遇で、敢えて体制におもねらない生き方を貫いたチェ・ドンウォン選手(政治的にはノ・ムヒョンとオーバーラップする)と、政治的には傍流である全羅道地域を代表するチームで活躍しつつも、野球人としては王道を歩み続けるソン・ドンヨル。その対照が面白くもあり、またそれがこのゲームが映画化された理由でもあるように思われる。

 因みに、付加映像を見ると、選手たちを演じた俳優たちのうちチョ・スンウ、マ・ドンソク、チョ・ジヌン(ドラマ『根深い木』に出ていた)の3名は野球が大好きで、嬉々として野球練習にも取り組んだそうであるが、天才ソン・ドンヨルを演じたヤン・ドングンは野球には余り関心がなさそうで、多忙を理由に野球練習にも余り取り組まなかったようだ。努力型のチェ・ドンウォン選手と天才型で努力型ではなかったらしいソン・ドンヨル選手のキャラクターの違いにぴったり合ったようだ。この作品でのチョ・スンウの演技は韓国で高く評価されている。

 韓国での本作の封切りは2011年12月21日。韓国での観客動員数は約139万人(Cine21データ)。国内未公開。

 なお、監督のパク・ヒゴンは1969年生まれ。キョンウォン大学英語英文学科卒業。2009年『仁寺洞スキャンダル』を経て本作。


1) スポーツ韓国「実際のような虚構、虚構のような実際...『パーフェクトゲーム』あの感動をそのままに」2011.12.16付記事(原文韓国語)
http://sports.hankooki.com/lpage/cinet/201112/sp2011121606010694410.htm

原題『퍼펙트 게임』英題『Perfect Gamer』監督:박희곤
2011年 韓国映画 カラー 127分

DVD(韓国盤)情報
発行・販売: KD MEDIA 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声:Dolby5.1 韓国語 本編:127 分 リージョン3
字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層2枚組(付加映像ディスク付) 2012年 5月発行 希望価格 W25300


『危険な結婚挨拶』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201204/article_13.html

『スカウト』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200902/article_20.html

『仁寺洞スキャンダル』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201106/article_3.html

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