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zoom RSS 『犯罪との戦争: 悪い奴らの全盛時代』 - チェ・ミンシク演じる狸親父キャラに注目

<<   作成日時 : 2012/09/03 07:14   >>

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画像 チェ・ミンシクが久々に出た映画として話題になった作品。ヤクザもの、「男の世界」を描いた作品ではあるが、「男の美学」をナルシスティックに描くというよりは、男の無様さを描くことも含めてかなりコミカルな作品。監督は『許されざる者』『ビースティ・ボーイズ』などを撮った新鋭ユン・ジョンビン。良くも悪くも監督のキャラクターが明確になった、という感じがする。

 1990年、ノ・テウ大統領は組織暴力との戦争を宣言し、暴力団の排除に大々的に乗り出す。釜山では、その一環として早速逮捕されたのがチェ・イッキョン(チェ・ミンシク)。彼は違法なパチンコなどの営業を行っているホテル経営者である。彼の取り調べに当たったのは、検事チョ・ボムソク(クァク・ドウォン)。彼の「私はヤクザではありません、同じ公務員出身です」という言葉にさらに激高するチョ検事。

 チェ・イッキョンがヤクザの世界に踏み入れた契機は1982年に遡る。彼は当時釜山税関の職員だった。当時の税関は賄賂を取って多少のことを見逃すのは日常茶飯事。ところがそれらの不正に対し、外部からタレ込みが入り、警察の捜査が入ることに。そして係の中から一人は検挙者を出さなければすまない状況に追い込まれたとき、チェ・イッキョンの上司であり、最も賄賂を取ってきたチョ係長(キム・ジョンギュ)はいう。「本来なら俺が責任を取って、行くべきだという気持ちはあるが、やはり係長が検挙されたとなるとまずい。ここは扶養家族が一番少ないものに行って貰おう」で、一人一人話を聞いてみると、子どもが3人のイッキョンが一番扶養家族が少ないではないかということに。
 「何で俺が割を食うんだ」と憤懣やるかたのないイッキョン。そんなある日、イッキョンが警備をしていると保税倉庫で怪しい動き。犯人は逃がしたが、ブツを押さえてみるとそれは大量のヘロインだった。相棒のチャン主任(キム・ジョンス)と顔を見合わせるが、ふとイッキョンがチャンに、日本のヤクザにツテのあるようなヤクザに知人はいないかと聞く。いることはいるがと答えるチャンに、そいつに渡りをつけてこのヘロインを売りつけようと提案する。
 いくらなんでもそれはまずいと渋るチャンに、イッキョンは、そのヘロインが日本に流れて、日本人がヘロイン中毒なろうが知ったことか。それにヘロイン中毒の日本人が増えれば、日帝36年の恨みを晴らすことになって愛国的じゃないかと説得する。さらに、これで金が入るなら、自ら公務員から身を引いても良いとも言う。
 そこまで言われてはチャンも拒否できず、知人のヤクザ、チェ・ヒョンベ(ハ・ジョンウ)を紹介し、ヘロインを売りつけることにする。どうせどこからパクったヘロインだろう、と足元を見て安く買いたたくヒョンベ。だがそれでも二人にとっては大金だった。さらに、自分が慶州崔氏忠烈公派の宗家であるということしか自慢のタネがないイッキョン。ヒョンベが自分と同じ本貫で、親戚の系列上は自分がヒョンベより上の大父(ゴッドファーザー)に相当するということが分かると、それをネタに公務員退職後の身の振り方も、彼に頼むことにする。
 こうして裏社会に足を踏み入れ、新しい人生を踏み出すイッキョン。もちろん、ヤクザとしての格は圧倒的にヒョンベに劣り、裏社会の中でも表に近いところで小心翼々として、禄を食んでいたイッキョンだったが、やがて親戚系図上の地位の優位さと、公務員時代に培った官庁とのコネクションをフルに駆使して、元々は仲間だったキム・パンホ(チョ・ジンウン)との対立で窮地に陥ったヒョンベを助ける。そのことを契機に、徐々に虎(ヒョンベ)の威を借りながら、裏社会における地位を高めていくイッキョン。
 だが、それはイッキョンとヒョンベとの間の微妙なパワーバランスを崩し、二人の相互扶助関係を危うくすることにつながった...

 もともとユン・ジョンビン監督がチェ・ミンシクの大ファンで、チェ・ミンシクはオファーを受けたとき、脚本は面白いものの、自分にこのキャラクターが演じられるかとかなり迷ったのを、監督が長い時間かけて説得してキャスティングが実現したという。そのため、今までのチェ・ミンシクの演じたキャラクターとは異色のキャスティングが実現した。そう、あの深作欣二の『仁義なき戦い』シリーズの山守親分をもうちょっと卑屈にしたようなキャラクター。それにユン・ジョンビン監督の長編映画の、もはや同伴者というべきハ・ジョンウがからむ。

 一方は、男としてもヤクザとしても格下ながらも、家系図的優位と公務員時代のコネクションに、悪知恵を駆使してのし上がろうとし、もう一方は、ヤクザの実力としては格上だが、家系図的、年齢的に格下という、典型的な認知的不協和の上に成立した微妙なバランスの下に成立した危うい相互扶助関係。
 それが一方は実力不相応ながらも政治力を駆使してのし上がっていくことによる認知的不協和の増大が、力関係のバランスを崩壊させ背信の応酬になっていくという社会心理学的な描写がなかなか面白い。それとともに、チェ・ミンシクの演じる、広島弁ならぬ釜山なまりを駆使したミニ山守的、卑屈でしたたかなイッキョンというタヌキ・キャラクターの存在(と周辺キャラクターとの不協和)が繰り出す笑いとユーモア。このあたりの表現の巧みさが本作品の真骨頂であろう。
 ちなみに、イッキョンが行う行動は韓国人に典型的な行動、と誤解してはいけない。韓国人の発想をかなりオーバーに、カリカチュア的に表現することで笑いを取っているのである。例えばイッキョンが族譜を見て、かなり遠い親戚である検事にコネをつける場面。オーディオコメンタリーでは、こんなのほとんど他人でしょう、と突っ込みが入っていた。もちろん、本貫が同じ人のコネをたどって何かを頼もうという発想が皆無なのではない。比較的近ければ十分あり得るのだろう。ただあそこまで又従兄弟の又従兄弟のそのまた... などという関係をたどるというのはそういう発想を相当オーバーに表現しているのであり(そもそもそういう発想がゼロであれば、笑いにならない)、そこで笑いを取っているのだ。もちろん、本貫ごとに本貫の事務所があって、そこで広報誌を出している、というようなことは十分あり得るのだろう(そういった事務所の看板を韓国の町中で所々見かける)。

 一方で、韓国のネット評にもあったように、時代を描いていく力はやや弱いようだ。この作品の中でイッキョンだけが政治力を駆使して一人生き残りを図っていくが、たぶんその裏には政権党や政府機関とのある構造的なつながりがあったはずである。当局が地域開発に乗り出すときにヤクザを活用したり、与党が対立野党を追い込むときにヤクザを使ったりしているのでそれは間違いないはずだが、それはあくまでもイッキョンの個人的な資源として描かれ、社会構造的なものとしては描かれない。だからノ・テウが組織暴力との戦争宣言を行った時代背景も分からない。その意味ではあくまでもパーソナルな(あるいは社会心理な?)エンタテインメントに留まったとも言えるだろう。そのあたりが良くも悪くもユン・ジョンビン監督の持ち味という感じを今回強く受けた。とはいえ、一見、「男臭さ」「男の格好良さ」のタテマエ裏に潜む男の情けなさに着目している点は前2作と共通しており(そしてそれは監督のオリジナリティ、一種の革新性とも言える)、その情けなさを今回笑いに昇華させているという点では、今回確実に進歩を遂げていると言えよう。そして久々の、チェ・ミンシクのスクリーンへの登場にも拍手。
 ちなみに当時、公式には禁止されていたパチンコの目こぼしは、オーディオコメンタリーによると、実質的に安企部の権限だったようだ。

 本作品は韓国では2012年2月2日公開。韓国での観客動員数は4,68万3,598人(KOBISデータ2012.6現在)。国内未公開。


 韓国盤DVDの画質に関しては、精細感、色彩とも良好であり、文句なし。因みにディスクは台湾プレス。

原題『범죄와의 전쟁 : 나쁜놈들 전성시대』英題『Nameless Gangster : Rules of Time』監督:윤종빈
2011年 韓国映画 カラー 133分

Blu-ray(韓国盤)情報
発行・販売: KD Media 画面: HD1080p/16:9(1:2.35) 音声: DTS-HD5.1 韓国語 本編:133分 リージョンA
字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層 2012年 7月発行 希望価格W31900
※韓国盤DVD(2枚組)もあり(W25300/2012.7発行)


『ビースティ・ボーイズ』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200810/article_8.html

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