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zoom RSS 韓国映画『高宗皇帝と義士・安重根』 - 「旧韓末・時代劇」DVD-BOXより

<<   作成日時 : 2012/08/15 20:58   >>

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 7月に韓国映像資料院が刊行した、「旧韓末・時代劇」DVD-BOX収録の一作。監督は、チェ・インギュ監督の『自由万歳』(植民地からの解放後最初の映画として知られる)で武力闘争を主張する主人公の独立運動家、チェ・ハンジュンを演じた俳優のジョン・チャングン。彼は脚本を執筆し、さらに主人公のアン・ジュングンも演じている。

あらすじは、DVD付属のパンフレットの内容を引用・翻訳して紹介する。

 1905年11月17日、伊藤博文(チェ・ナミョン)とイ・ワニョン(イ・ヒャン)ら親日大臣たちが徳寿宮へ入っていった。彼らは日韓保護条約(乙巳条約)締結を督促し、高宗皇帝(キム・スンホ)は大臣たちに決定を任せて席を立った。大韓門の外に集まった生徒たちは亡国条約を撤回しろと叫ぶ。黄海道、シンチョンでは、アン・チャンホ(カン・ゲシク)の演説途中、群衆の一人が朝鮮人巡査を攻撃し、巡査の発砲で幼い子供が殺ぬ。この状況をアン・ジュングン(ジョン・チャングン)は見守っていた。1907年ヘイグ密使事件でイ・ワニョンとソン・ビョンジュン(チュ・ソンテ)は高宗を訪ねて、退位を強要する。サムン学校で人材を養成していたアン・ジュングンは、学校を閉め義兵運動に参加することを決意する。
 1909年ウラジオストックに到着したアン・ジュングンはチェ・ジェヒョン(イ・イルソン)の紹介でイ・ガン(キム・スチョン)と、彼の娘チェ・ウィスク(ファン・ジョンスク)に会う。アン・ジュングンは義兵たちを率いて豆満江を超えフェリョンにて日本軍と交戦する。同志たちを皆失いユ・ドンハ(ジョン・セグォン)と二人だけで生還する。アン・ジュングンは伊藤博文の北満州視察のニュースを聞き、蔡家溝駅、長春駅、ハルビン駅で暗殺を試みる計画を立てる。妻と息子が訪ねてきたが、アン・ジュングンは会うことが出来ぬまま、満州へと出立した。一方、チェ・ウィスクは、アン・ジュングンを密告しようとしていたパク・イルを射殺して死ぬ。蔡家溝駅でウ・ドクスン(キム・イレ)が、長春駅でチョ・ドスン(イム・ウナク)が、伊藤の暗殺に失敗。ハルビン駅のアン・ジュングンが伊藤を暗殺後「大韓独立万歳」を叫ぶ。法廷でアン・ジュングンは殺害ではなく戦闘中の射殺だったので戦争捕虜として扱えと主張したが、死刑となる。

 付属パンフレットによると1959-60年ごろ大韓帝国末から植民地時代にかけての時代劇映画が次々と作られた。本DVD-BOXに収められた作品たちである。当時これらの時代劇は、なぜか時代(歴史)劇と呼ばれず、「時局劇」とカテゴライズされた。
 これらの映画が出てきた背景を、当時の資料では、様々なジャンルの映画が量産される中、毛色の変わったものが求められた、そして経済復興に伴い、映画界にも資金力がついてきた(例えば本作品は、通常の映画の三本分の予算が投入されたという)ため、と説明されている。しかし、「時局映画」と呼ばれたように、実は当時の政治状況と密接な関連があるそうである。
画像 基本的にこれらの時代劇はいずれも戦後の新進世代ではなく、植民地時代から活躍していた映画人によって作られた。そこには、ひとつは植民地時代を通して活動してきた自分たちの後ろめたさを、歴史を再構成することで一掃し、自分たちに歴史的・社会的地歩を固めようという意図があるのではないかという。そのため、これらの映画はいずれも旧大韓帝国末期から3.1運動までの時代をいきなり現代(映画が製作された当時の)に結びつける傾向があり、3.1運動後から1945年の植民地解放までの時代が不問に付される傾向にあったという。そして韓国映画界がこの不問に付された時代を振り返るようになるのは、2000年代に入り、『YMCA野球団』『モダンボーイ』『ラジオデイズ』などの作品まで待たなければならなかったという。

 本作品に関していえば、監督・脚本・主演は『自由万歳』の主人公を演じた俳優のジョン・チャングン。高宗に国民的父親役俳優であったキム・スンホ、そしてアン・ジュングンを手助けするチェ・ウィスクに、60年代に姑、母親役として定番だった女優のファン・ジョンスン(おそらくファン・ジョンスンが娘役などをやるのは本作品が最後なのではないだろうか。彼女がこんな役柄を演じるのは初めて見た)などの大物を起用している。ちなみに、キム・スンホは当時はイ・スンマン大統領支持の保守派として知られており(本気で支持していたのか、立場上支持せざるを得なかったのかは不明であるが)、イ・スンマン倒閣運動の際に、彼の自宅は反大統領派のデモ隊に襲われ、倒閣後、世間の反感を買って3年間映画に出られなかった1)。

 当時としては通常の韓国映画の3倍の予算をかけたそうであるが、残念ながら演出力のほうはさっぱりであり、また、本作品を見ても、歴史認識上の新しい発見は皆無。ほぼ予想の範囲内である。
 率直に言って資料的興味以外の関心から本作品を見るのはかなり苦痛を伴う水準。ただ、当時はまだ様々な解釈がありえた(のかもしれない)、韓国における通俗的な歴史解釈・評価を、今日のようなものに定着させたという意味があったのかもしれない。そういう意味では本作品に、まったく予想を裏切るものが何もない、というのも当然なのだろう。画像画像
 それと、当時の検閲では映画の中での日本語は厳しく禁じられており、本作品に出てくる日本人役も皆韓国語をしゃべっている。これも歴史的に致し方ない点であろう。
 この他に気づいたのは、アン・ジュングンがウラジオストックから同士を連れてフェリョン付近に行き、日本軍に見つかって交戦状態になるが、彼らが一夜の宿を借りる農家の娘が、クレジットにはないがキム・ギヨン版『下女』で主人公を演じていたイ・ウンシムではないかと思うのだが(キャプチャ参照)...。因みに彼女は日本の名古屋出身である(Daum映画データベース参照)。
 
 なお、本作品は1999年国道劇場廃館の際、保管されていたフィルムが発見されて映像資料院に収集された。35ミリネガ、上映用プリント2巻、16ミリネガがあったそうだが、35ミリネガのほうは12ロール中1ロール紛失。さらに一部はフィルムの固着が進んでいた。サウンドフィルム原本は12ロール中2ロール紛失。上映用プリントは完全なセットがそろっていたがフィルムの収縮が著しくし到底上映できる状態ではなく、16ミリネガも4ロール中1ロール紛失という状態であったようだ。
 結局当時の韓国国内ではどうにも処理できずにあきらめて、2009年に日本のイマジカに持ち込み、で劣悪な状態から状態の良い部分をつぎはぎしてデュープネガを作成。とりあえず収縮部分などはボケボケ状態ながらも何とか上映できるプリントを作成。画像
 但し、冒頭部分は収縮が著しかったため、フレームの揺らぎが激しく、紛失した最後の1ロールは16ミリネガから復元。
 さらにイマジカでつくったデュープネガマスターを元に2009年10月から韓国内でデジタル復元作業を開始、1ヶ月かけてデジタルマスターが完成した。
 付加映像に、元のフィルムの収縮状況や固着化状況の映像が出ているが(キャプチャ画像参照)、いやこの悲惨なフィルムからとにかくデュープネガを作り上げたイマジカの技術力は凄い。
 とはいえこれだけフィルムの状態が悲惨だとデュープネガフィルムでもピントがぼけぼけ状態の部分がどうしても出てきてしまうが、その後のデジタル修復で完璧な状態ではないにしろ、ここまで解像度を上げられるものかと感心してしまう(やはりキャプチャ参照)。
 と言う訳でDVDの映像は解像度がシャープな部分と、デジタル修復したとは言え解像度がそれでもかなり甘い部分が混交した状態。とりあえず日韓技術力合作の成果をご覧あれ。
画像
 監督のジョン・チャングン(1908-1972)はDaum映画データベースによると満州で撮影された1941年『福地万里』でデビュー。主人公の木こりをしながら満州で集団生活を行う青年を演じたそうで、おそらく朝鮮人に満州移民を薦めるような啓蒙映画だったようだ。その後、『自由万歳』の主演を経て、ジョン・チャングン・プロダクションを設立『解放されたわが故郷』(1947)『その顔』(1948)等を製作・監督。特に前者はキム・スンホのデビュー作としても知られる。当時1955年にイ・ギュファン監督が『春香伝』を大ヒットさせ、以後古典小説や歴史エピソード等を題材にした時代劇映画が流行。ジョン・チャングンも『麻衣太子』(1956)等の歴史物を監督・主演。さらに1959年以降、旧大韓帝国末〜3.1運動までを扱った『3.1独立運動』、本作、『嗚呼、白凡・金九先生』を連続して制作。1963年に製作した『チャイナ・タウン』を最後に映画製作活動を中断した。

 なお、本DVD-BOXの他の収録作品は、

『韓末風雲とミン衷情公(別名: 혈죽)>』(1959)
『独立協会と青年イ・スンマン』(1959)
『嗚呼 白凡 キム・グ先生』(1960)

1)扈賢賛『わがシネマの旅―韓国映画を振りかえる』(根本理恵訳,凱風社,2001)による。

原題『高宗皇帝와 義士 安重根』英題『Emperor Gojong and An Jung-geun, the Patriot』監督:전창근
1959年 韓国映画 モノクロ

DVD(韓国盤)情報「旧韓末・時代劇」DVD-BOX
発行・発売 Blue Kino 画面: NTSC/16:9(1:1.33)[本作] 音声: Dolby1 韓国語 本編:110分(本作) リージョンALL
字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層(4枚組) 2012年 7月発行 希望価格W44000

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