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zoom RSS 『レイト・オータム』 - 雰囲気は悪くないが

<<   作成日時 : 2012/08/08 23:31   >>

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 以前、岸恵子、萩原健一主演、斉藤耕一監督の『約束』(1972)を見たことがある。とても切なく、切迫感があって良い作品だったという記憶がある。残念ながらDVD化されておらず再度見る機会に恵まれていない。
 で、実はこの作品のオリジナルは、韓国、イ・マニ監督の『晩秋』(1966)。しかし、残念ながら扈賢賛『わがシネマの旅―韓国映画を振りかえる』(根本理恵訳,凱風社,2001)によれば、この作品のプロデューサーだった著者のミスによりオリジナルネガ、プリントは永久に失われてしまったとある。その後、キム・ギドク監督(1975年『肉体の約束』=未見)キム・スヨン監督によるリメーク(1981=未見)を経て、本作が4本目のリメーク。監督は『メメント・モリ』『家族の誕生』のキム・テヨン。原題はやはり『晩秋』だが邦題は英題をそのまま持ってきた『レイト・オータム』。

あらすじはこちら(Goo映画)
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD20800/

 率直に言って、韓国の『晩秋』を期待していたのだが、本作はもはや韓国映画とは呼べない。舞台はなぜかアメリカはシアトル。そしてヒロインが『ラスト・コーション』の湯唯。男はヒョン・ビン。台詞の大半は英語、それに次いで中国語で、あとは若干の韓国語。邦題が『晩秋』ではなく英題をそのまま踏襲したのは正解と言えよう。

 問題はこういった設定の変更が効果的か、という点だが、斉藤作品に比べると時間に追われている切迫感や、切なさが減退しているように思われる。
 彼女は彼に通じないのを承知で、中国語で自分の話を一方的にするが、それは彼に伝わらない。ただ、プリズンにいずれ戻らなければならない、ということだけは英語で伝えるのだが。男の事情も女性には伝わらない。ただ、本来はジゴロをして金を貰うはずだ、ということだけは伝わるのだが。
 だから男が女性の母親の葬式に現れて行う行為の必然性が余り感じられない。すべての事情が見えてしまうのは観客だけであり、そして当事者同士には半可通の情報しか伝わっていないことが見えてしまうからこそ、主人公たちの行為に余り必然性や切迫感が伝わってこない。

 『家族の誕生』のキム・テヨン監督だからこそ期待した側面もあったのだが、社会批評的作品に適した彼の見通しの良さが、逆に心理主義的、主観的見通しの悪さを通じた切迫感表現には不適だったようにも思われる。雰囲気は悪くないのだが。

 韓国では2011年2月17日封切り。韓国での観客動員数は845,845人。ネット評では一般ネティズンより専門家評が妙に高い。国内劇場公開&DVD刊行済み。

 なお日本のレンタル盤の画質は、解像度全般に甘さが感じられ、ローパスフィルターが全般にかなりかかっている印象。

原題『만추』 英題『Late Autumn』監督:김태용
2011年 韓国=米国=香港映画 カラー 113分



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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
 初めまして。ちょっと書かせて下さいね。

 この映画のキモは、「彼女が中国語で一方的に話をするシーン」に集約されていると思います。このシーンがあったからこそ、この映画には驚くべき感動が生まれたのだと思います。

 男はジゴロです。女の感情を読み取り、女が求めていることを満たしてあげるのが仕事です。
 彼は中国語が分かりません。でも彼は、ジゴロならではの本能で、彼女の言葉ではなく心を読み取ったのです。彼女の痛切な発声と身振りに寄り添うことで、かつて男から不幸にされ、その過去からまだ自由になれていないという彼女の境遇を、言葉の媒介なしに悟ったのです。
 彼は葬式の席で、彼女の視線と態度だけから、彼女を不幸にした男を嗅ぎ取ります。そうしてわざと言いがかりをつけ、彼女への謝罪の言葉を吐かせるのです。
aiai
2012/08/12 02:33

 これは何という洞察力、優しさでしょう。言葉ではなく、心を読み取り、その望むことを満たしてあげるなんて。これは全ての女性の理想ですよ。それがジゴロだと言ってしまえばそれまでなのですが、その行動によって彼女の傷は確実に癒されたのです。

>だから男が女性の母親の葬式に現れて行う行為の必然性が余り感じられない。すべての事情が見えてしまうのは観客だけであり、そして当事者同士には半可通の情報しか伝わっていないことが見えてしまうからこそ、主人公たちの行為に余り必然性や切迫感が伝わってこない。

 半可通の情報しか伝わってないのではなくて、言葉に頼らぬコミュニケーションで適切な情報を男が読み取れた、というふうに解釈するべきではないでしょうか。

 分からない中国語での告白に対し、男がどんな風に相槌を打っていたか。男は注意深く彼女の表情を読み取りながら「いい」と「悪い」を慎重に選択していました。男の相槌によって彼女の告白はどんどん促進されていきました。言葉は通じていなかったけれど、男は彼女の心を的確に読み取っていたのです。それが葬式のシーンにつながったのです。
aiai
2012/08/12 02:34
aiai様、当ブログを訪問くださりありがとうございます。なるほど、そういう見方もあるんですね。

ただ、あの映画、韓国語の台詞に一切字幕がついていなかったとしても、or 中国語の台詞に一切字幕がついていなかったとしても、同じように見えたのだろうか、というのが私の疑問です。
yohnishi
2012/08/13 07:15
 レスありがとうございます。

 字幕が付いていなかったとしても、そう見えたと思いますよ!
 私はヒョンビンの立場に立って、どうやって「いい」と「悪い」を使い分けるのか、ドキドキしながら見ていました。相槌を間違えたらジゴロとしてはジ・エンド。
女はどちらの相槌を求めているのか、女の態度と表情を観察して言葉を選ぶしかありません。男は彼女の心に寄り添おうと全観察力を集中したはずです。
 そんな男の的確な相槌に従って、彼女が押し殺していた感情がどんどん引き出されていく。封じ込めていた本当の自分が解放されていく。他人には言えないことでも、相手の分からない言語でだったら言える。ここに、彼女の言葉ではなく彼女の感情を受け止めてくれる相手がいるのだから。
 このシーンは本当に名シーンだと思います。
aiai
2012/08/14 03:47

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