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zoom RSS イデオロギー対立に疲れた韓国の皆様に... 韓国映画『豊山犬』

<<   作成日時 : 2011/11/03 09:59   >>

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画像 9月にDVDリリース(但し韓国での話)された韓国映画のうち最大の話題作であろう作品がこれ。キム・ギドク脚本&プロデュースで弟子のチョン・ジェフンが監督した南北分断を扱った作品。この作品が小ヒットしたのは、作品の力もあるだろうけど、何よりも南北分断に心を痛めながらも、イデオロギー対立や政治の道具として扱われることに飽き飽きという、今の韓国の人々の心情にマッチした、という点が大きいのではないか。

 「豊山犬」(ユン・ゲサン)とだけ呼ばれる正体不明の男がいる。彼は北朝鮮人なのか韓国人なのかも分からない。電話番号もない。ただ、DMZ境界近くのある場所に仕事依頼メッセージを結びつけておくと、DMZを3時間あまりで駆け抜けて北と南の間で物を配達したり、時には小さな子供を連れてくることまでを請け負う、謎の南北間配達人だ。
 たまたま脱北者収容所では、北朝鮮の大物脱北者「先生」(キム・ジョンス)が収容されていた。ところが彼は、脱北してきたにもかかわらず南側の係官の調査に対してあまり協力的でない。協力的でないのは、脱北ではなく工作員として派遣されてきたためかとも当局側は疑うが、それも断定しがたい。ところがこの脱北者が平壌に残してきた恋人を連れてきたら一切をしゃべると言い出す。どうやら女と二人連れで逃げたかったのがうまくいかずに拗ねていたらしい。
 とはいえ、平壌から女を連れ出すなどとは至難の業... そこで当局は「豊山犬」を利用することを考える。そして万一仕事がうまくいった暁には、怪しい「豊山犬」自体も捕まえてしまえばよい...
 果たして「豊山犬」は、何度も危ない目をくぐりながら無事女、イノク(キム・ギュリ[前芸名:キム・ミンソン])を平壌から南側へと送り届けてきた。だが南側当局者は女を引き渡した「豊山犬」を卑劣にも国家保安法違反で逮捕しようとするが、逃げられてしまう。
 一方脱北者収容所。女を連れてきて、「先生」が調査に協力的になると思いきや、これが一悶着。女は彼女を連れてきた「豊山犬」に心を奪われてしまったのだ。「先生」がイノクに何を買ってやっても彼女は心ここにあらず。そんな中突然「豊山犬」が二人の前に現れ、車であちこち連れ出してしまう。その間、イノクの模様に「先生」は徐々に嫉妬で怒り狂うようになる。
 だがついに「豊山犬」は彼ら二人とともに当局に捕まる。拷問を受ける「豊山犬」。そしてその彼を心配するイノク。嫉妬に怒り狂う「先生」。だが、彼の窮地は、一度潜伏スパイとして北に渡って北側で拷問を受けたあげく、「豊山犬」の活躍によって助け出された保安要員の機転により、脱出する。彼は恩を仇で返すような真似を容認できなかったのだ...
 その一方、「先生」とイノクは彼らの殺害を狙った北の工作要員に襲われる。「先生」は辛うじて殺害を免れるが、イノクは工作員のアジトに連れて行かれるが、そこには「豊山犬」がいた...

 一応本作の軸は「豊山犬」と女の悲劇的恋愛となっており、それが夜間中心のスピーディーでアクティブな画面展開によって描かれて、息もつかせない。だが本質はむしろ今の南北におけるイデオロギー対立のばかばかしさをブラックに風刺するという所にあるだろう。この傾向は後半へいけばいくほどより明確になる。そのなかで、南も北も徹底的に風刺し倒されれる。
 南北問題がキム・ミョンバク政権の、前政権との政策の差別化の道具に使われたり、キム・ジョンウン「大将」の権威高揚の道具に使われることに活用されることに飽き飽きした韓国の人々の心情にマッチした作品だといえよう。

 ちなみにDVDの付加映像にあるインタビューを聞くと、この作品はかなりの低予算で、しかも監督が強く望んだキム・ギュリの出演が他の映画、ドラマスケジュールとの関連で撮影開始1週間前まで可能かどうか分からず、撮影スケジュールも1ヶ月程度とかなりの綱渡りを余儀なくされたとか。そのため撮影はほとんどワンテイクのみ、そして撮影最終日当日、予算制作費を預けていた預金口座の残高がちょうど0になったことが印象に残ったそうだ。

 本作品の韓国封切り日は、2011年6月23日。全国観客動員数は714,746人(2011.10.01現在、KOBISデータ)。日本国内では今秋の東京フィルメックスでの公開が予定されている。

 監督のチョン・ジェフンは、韓国美術界の長老、キム・フンス画伯の孫として生まれ、幼少時から美術を学ぶ。アメリカ、ウェブスター大学で経営学を学んだのち、初短編『Colors』(2005)がニューヨーク独立映画祭に招待される。2006年、キム・ギドク監督の『時間』の助監督に携わった後以後その門下に。長編デビュー作は2008年『美しい』。本作は長編第2作(以上Daum映画データベースを参考に執筆)。

原題『풍산개』英題『Poongsan』監督:전재흥
2011年 韓国映画 カラー 121分(韓国劇場版)

DVD(韓国盤)情報
発行・販売:KD Media 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編:121分
リージョン3 字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層(2枚組) 2011年 9月発行 希望価格W23100

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