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zoom RSS 就活に苦労する世代への応援歌、韓国映画『私のチンピラのような恋人』

<<   作成日時 : 2010/09/16 00:30   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 1 / コメント 1

画像 田舎からソウルの会社に就職が決まって上京してきたが、夢破れ、再就職活動でもがく女の子とその隣に住むヤクザ落第の男とのロマンスを描いた作品。

 父が国鉄の駅長である、田舎(おそらく慶尚道の海岸沿いの都市を想定)出身の女の子セジン(チョン・ユミ)。彼女は地元の大学の工学部を優秀な成績で卒業し、運良くソウルの会社で働くことが決まる。堅物の父(ミン・ギョンジン)は本音では、娘がソウルでキャリアウーマンとして働くことに反対で、さっさと結婚して欲しいと思っているものの、しかたなく娘をソウルに送り出す。
 だが、彼女の華麗なソウル生活は3ヶ月で潰える。就職した会社が倒産したのだ。父に強く出た手前田舎の実家に泣きつくこともままならず(それに、さっさと嫁に行けと言われるのは明白だ)、田舎には会社の倒産を秘密にしながら、泣く泣く就職活動を再開するセジン。住まいもマンションからボロアパートへ。
 ところが移った先の隣に住む男が変な男(パク・チュンフン)。愛想も雰囲気も悪い。なんだかヤクザみたい、と言う彼女に隣の男は「ヤクザだけど、何か?」
 ヤクザの隣なんかに住めない、と家主に訴えたものの、栄養失調で室内で倒れているところを隣の男に助けられたセジンは、結局そのまま住み続けることに。
 だが隣の男は何だかヤクザらしくない。用心棒に出かければ、合気道道場の連中に逆に殴られるし、取り立てに行けば逆襲され、集金もままならず。仕方なく、町中でナイトクラブのビラ貼りなどをしている。セジンは一見強面で愛想も悪いが、要領が悪く意外とお人好しな隣の男に徐々に惹かれていくようになる。
 実は隣の男ことドンチョルは、帰ってきたらエースにしてやると言われて、兄貴、ジョンソ(パク・ウォンサン)の代わりに懲役に行って帰ってきたのだ。だが所詮ヤクザとしての実力が伴わない。やがて、彼らの組の縄張りに元刑事、パク元強力班長(チョン・インギ)が介入しようとしてくる。実は合気道塾も、彼が生徒を自分の子分代わりに使おうとの魂胆で開いたもので、警察力をバックに、ヤクザに取って代わろうと画策していたのだ。しかし、彼に手を出せば、警察に強制捜査に踏み込まれるので恐くて親分キム社長(チョン・ウヒョク)も手を出せない。そこでドンチョルは元警官だといってもびくびくせずにヤクザならヤクザらしい方法で解決すべきだと親分に提言する。
 一方、セジンは就職活動に苦戦していた。運良く面接にこぎ着けても、地方大学出身だと、質問もしてくれず無視される場合が大多数。時に、からかわれてへたな歌を歌わされたり、就職させてやるから、一晩共にしろと言われたり....。さらに就職したはずの会社が倒産したことを父親に知られて、何とかこぎ着けたある会社の最終面接を諦めて、無理矢理故郷に連れ戻された。
 彼女が無理矢理故郷に連れ去られた後、彼女の部屋に入って、彼女のその会社の最終面接へ掛ける思いを知ったドンチョルは...

 本作品は、何よりも就職活動に苦戦して、矢折れ尽き果てんとしている若い世代への応援歌として企画された作品。キム・グヮンシク監督は、本映画の企画動機を、大学の同期の友人たちが大学院まで一所懸命頑張って卒業したのに、就職活動に苦戦している様を見て、彼らを勇気づけられる映画を作りたかったと説明している。そして一番辛い時に誰か横に見守ってくれる人がいれば... という思いで製作したという。
 映画の前半は、いささかコメディタッチで進行していく。だが後半は、イ・チャンドン監督の『グリーンフィッシュ』を多少なりとも彷彿させるようなタッチ。ドンチョルは、自分が組の中で、親分から大切にされていると信じていて、自分の組こそが自分の居場所だと信じていた。だがやがてそれが単なる錯覚であって、所詮鉄砲玉に過ぎなかった、ということが明らかになる。同様にセジンも、所詮社会の中、就職活動市場の中で単なる消耗品、コマとしてしか見られていないという冷酷な現実の中に放り込まれる。そういう意味ではセジンもドンチョルもこの社会の中で同じ立場なのだ。そういう社会に対する異議申し立て、という姿勢が現れている作品。その意味ではアン・スルギ監督の諸作品と立ち位置が共通する部分がある。

 なお、映画の場面で地方大学出身だと鼻も引っかけられない、という場面があるが、これは事実。日本であれば地方にあっても、例えば九州大や北海道大学であれば、旧帝大ということで名門大として扱われる。しかし韓国では中央集権意識が強く、国立釜山大学といえども、ソウルの企業からは、ソウルにある一般的な私立大学より格下に扱われてしまう。だから、受験生たちは腐ってもソウルにある大学に... という競争意識が激しくなる。

 本作は日本未公開だが、本年、コリアン・シネマウィーク2010での上演が予定されている。。日本でも就職活動に苦労している世代には共感できる部分も多い作品かもしれない。Daum映画の韓国の観客評価得点も8.9と高い。

 キム・グヮンシク監督は1972年生まれ。ドラマ『帰ってきたイルジメ』、映画『オクスタン』、『オフ・ロード』等の脚本に参加。さらにイ・チャンドン監督の『オアシス』の助監督を経験して、本作が長編映画監督デビュー作(以上Daum 映画データベースより)。道理で、ちょっとイ・チャンドン作品を思わせるところがある訳だ。

原題『네 깡패 같은 애인』英題『My Dear Desperado』監督:김광식
2010年 韓国映画

DVD(韓国盤)情報
発行・販売:KD Media 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編: 116分
リージョン3 字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層(付加映像付き2枚組) 2010年 8月発行 希望価格W23100

コリアン・シネマウィーク2010 (韓国文化院サイト)
http://www.koreanculture.jp/info_news_view.php?number=1269

▼2012.11国内盤DVD発売 邦題『私のチンピラな彼氏』


参考:
アン・スルギ監督『5人は多すぎる』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201007/article_13.html

アン・スルギ監督『僕の歌は...』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201003/article_5.html

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『チラシ - 危険な噂』 - 386/486世代好みの韓国娯楽映画
 いかにも386/486世代好みのセンスによって作られた娯楽映画(但し監督自身はその次の世代)。タレントの「自殺」事件に隠された政治的陰謀を描いた作品。 ...続きを見る
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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
とても魅力的な記事でした。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
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2010/10/22 17:57

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