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zoom RSS 海外への養子を描いた監督自伝的映画『旅行者』

<<   作成日時 : 2010/05/24 23:33   >>

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画像 自分自身フランスへ韓国から養子としてやってきたウニー・ルコント監督の自伝的映画『旅行者』。涙なしには見られない映画かもしれない。

 1975年、韓国。9歳の女の子ジニ(キム・セロン)。彼女は父親に旅行に行くと言われ、喜んで父親(ソル・ギョング)と共に自宅を出た。行き着いた先はキリスト教系の孤児院(保育院)。父親はジニにまた必ず来ると約束したのだが、実は後妻を迎え、ジニの養育が足手まといになった父親は、彼女を保育院に捨てに来たのだ。
 父親に捨てられたという事実を受け入れられず、必ず父が迎えに来るのだと、保育院になじもうともせず、食事もろくに取ろうとしないジニ。だがいつまでたっても迎えに来ない父親に、一時は保育院を逃げだそうともしたジニだったが、間もなくジニは現実を受け入れることを迫られるのだった。やがてジニは数歳年上のスッキ(パク・トヨン)と仲良くなる。
 何とか条件のいい西洋人の家の養子になろうと、やってくる西洋人の家族に思いっきり愛想を振りまくスッキ。その横で、家族に気に入られても、父親が迎えに来ると堅く思い込もうとするジニは全く愛想がない。だがスッキは自分が養子に行くことが決まったら一緒に養子になろうと約束してくれる。
 一方、足の不自由なイェシン(コ・アソン)には西洋人家族からの養子話は全くなく、女中代わりに引き取るという話ばかり。だが「女中暮らしは嫌」と頑なに断るのだった。じつはイェシンには好きな男の子がいたのだが...

 大きな事件やストーリー展開がある訳でもなく、ひたすら西欧人との良い養子話を待つだけの孤児たち。そんな孤児たちの些細な事件や、気持ちの揺れをミニマリスティックに展開することを通して、孤児たちの悲劇的な境遇を、取り立てて悲劇をわざとらしく強調する訳でもなく、淡々とした筆致で描いた作品。その押さえた筆致故、彼女たちの悲劇的な境遇が強く浮き彫りにされていると言えるだろう。
 韓国の場合男系の血縁関係が非常に重視されるので、かつて、血縁関係のない子供を養子縁組するということは殆ど考えられなかった。勢い、孤児たちが養子にもらわれていくとすれば欧米人家族になるか、それとも女中代わりに韓国人家庭に引き取られるかという選択肢しかない。韓国はかつてはセーフティネットは親族関係しかなかったので(現在でもセーフティネットは比較的弱い)、親族から切り離されてしまい、セーフティネットから外れた孤児は大変なハンデを背負うことになる。かろうじて彼らを支えるのはキリスト教教会ぐらいしかない。
 このような状況下、ひたすら西欧人の家族に引き取られるのを夢見て保育院で過ごさざるを得ない子供たちの悲劇は、まるでどこかの家に引き取られるのを待つ犬の子のようである。そんな状況を淡々としかしまざまざと描き出した作品。

 本作品監督のウニー・ルコントは1966年ソウル生まれ。映画と同様9歳の時にフランスに養子として来て、プロテスタントの牧師の家に引き取られる。スタイリストの学位を取り、オリヴィエ・アサヤスの『パリ目覚める (Paris s'eveille)』でコメディエンヌとして出たり、衣装担当としてソフィー・フィリエルらと仕事をしたり。
 未完成に終った、ソ・ミョンス監督の『大都市ソウル』の仕事で韓国に初帰国。2006年より本作のシナリオに携わり、2009年本作を完成しカンヌ映画祭で上映される。以上evene.frより(http://www.evene.fr/celebre/biographie/ounie-lecomte-41766.php)。

 本作は2009年東京国際映画祭で上映され、アジア映画賞を受賞。

原題: 『여행자』 仏題:『Une vie toute neuve』 監督: Ounie Lecomte
2009年 韓国=フランス映画

DVD(韓国盤)情報
発行・販売:Art Service 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby5.1 韓国語 本編: 92分 リージョン3
字幕: 韓/英(On/Off可) 片面二層 2010年 4月発行 希望価格W25300

2010.10付記
本作品は邦題『冬の小鳥』として公開が決まった。
http://www.fuyunokotori.com/


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
東京国際で見ましたが、また見たいので岩波ホールでの劇場公開が待ち遠しいですね!
SARU
URL
2010/05/25 21:10
岩波ホールでの公開決定しましたか。コメントありがとうございます。
yohnishi
2010/05/25 23:56

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