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zoom RSS 外国人労働者に焦点を当てた韓国映画『バンドゥビ』

<<   作成日時 : 2009/11/13 19:13   >>

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画像 韓国においても、日本同様海外から多数の外国人労働者が流入してきている。これらに焦点を当てた映画としてかつて国家人権委員会が人権啓蒙の一環として製作したオムニバス映画『六つの視線』(邦題は『もしあなたなら』)の中でパク・チャヌクが撮った『NEPAL 平和と愛は終わらない』などが思い起こされる。韓国ではどうやらインド周辺からの外国人労働者が多い様で、パク・チャヌク作品ではネパール人労働者が被った信じがたい実話を映画化していたが、本作品ではバングラデシュからの移民労働者を扱っている。監督はカン・ジファンの映画デビュー作『訪問者』を撮ったシン・ドンイル。

 17歳の女子高生ミンソ(ペク・ジニ)は母と二人暮らしの母子家庭育ち。母はカラオケ店を営んでいる。最近母に恋人ができて度々家に来る。母たちは結婚したいらしいが、ミンソは母のパートナーが気に入らない。そんな彼女は大学進学を目指して勉強をしている。ある日、校門の前でアメリカ人の講師による英語塾の宣伝ビラを配っていた。同級生たちはハンサムな外国人講師が出ているビラを見て、すぐに申し込みに行くのだが、ミンソだけは行けない。母子家庭で家計が苦しく、易々と申し込める状況になかったからだ。
 そんなある日、バスで隣り合ったバングラデシュ人労働者カリム(マブブ・アラム)が落とした財布を、ミンソはネコババしてしまう。財布を落としたことに気付いたカリムはすぐミンソを追いかけて来る。警察に訴えるというカリムに対し、ミンソは一つ願いを聞くから許してくれと頼む。そこでカリムはある社長を捜して欲しいとミンソに頼む。実は、彼はその社長が営む会社で1年間働いたが、社長は1年分の賃金を未払いのまま偽装倒産し、その後は何度も連絡してもなしのつぶてだったのだ。人権団体に相談に行っても、書類上倒産である以上賃金を回収する方法はないと言われ途方に暮れて、彼は高級住宅地を一軒一軒尋ね歩いては社長の行方を追っていたのだ。
 ネコババができなかったミンソは、高価な英語塾の授業料資金を稼ぐためにガソリンスタンドでアルバイトを始めるが、セクハラにあって辞める。そんな中ミンソはカリムの社長捜しに付き合ううちに徐々にカリム自身に関心を持つ様になる。
 ようやくミンソは割の良い性感マッサージのアルバイトを年齢を偽って始めることで、何とか英語塾に通い始めると同時に、カリムともデートを重ね始める。そんなある日、ある出来事がきっかけでミンソは英語塾に通い大学受験を目指す自分自身の暮らしのあり方に疑問を持ち始める...

 例え合法的に働いていても、外国人だというだけで韓国人から軽く見られ、賃金さえろくに払ってもらえない外国人労働者の現状。その一方で人並みの教育を受けようとすれば法外な教育費が掛かり(その多くは塾や家庭教師の費用だ)、家計が苦しければ風俗産業でアルバイトでもしなければとうてい教育費が賄えない、韓国一般家庭の現状。この二つの現状の犠牲者であるミンソとカリムという二人の連帯がこの映画のテーマである。さらにミンソが通う塾が英語塾であることに象徴される様に、そのバックグラウンドにはグローバリゼーションの荒波が...
 多少図式的に解釈すれば、グローバリゼーションの荒波の中で、韓国の民衆も第三世界の民衆も搾取される立場に立っているのだが、同じ搾取される立場でも目糞的な韓国の人々が鼻糞的な外国人労働者を馬鹿にしたり搾取するという、弱者が弱者を差別する差別の連鎖の構造を、ミンソとカリムとの連帯を通じて批判するというのが、本作品の基本的なスタンスであろう。ミンソ自身当初はその構造を無自覚に受け入れていたのだが、カリムとの交流を通じて、そういった構造を自覚しその流れに抗して生きていこうと決意する姿を描いているのである。そういう意味では極めて問題意識の明確な作品。またミンソが通う英語塾名や女子高生たちの所持品など、随所に監督の現政権に対する風刺がちりばめられている。

 ただ、題材は良いのだが128分という尺はちょっと長い。ミンソが徐々に徐々に目覚めていく過程をじっくり描きたいという意図は分かるのだが、もうちょっとカットしてメリハリをつけた方が一般に受け入れられやすかったのではないかと思う。

 監督は『訪問者』、『私の友達、彼の妻』のシン・ドンイル。彼は『訪問者』をベルリン映画祭に出品して、韓国のウッディ・アレンとの評を得たとDVDジャケットに紹介されているが、それはちょっと過大評価では? 主演のミンソ役、ペク・ジニは高校時代CFタレントとしてデビュー、映画には2008年『人を探します』(イ・ソ監督)でデビュー、2009年『キッチン』で助演し、本作が初主演映画。またカリム役のマブブ・アラムは移住労働者映画祭実行委員長を務め、ドキュメンタリー映画を監督するなど、外国人メディア活動家として韓国でよく知られている様だ。1999年に来韓以降、外国人労働者の権益擁護のために活動しているという。

 なお、DVDは2枚組で218分に及ぶ付加映像がついているが、監督の短編映画が収録されているのは良いとして、それ以外はただ撮影現場や練習風景の映像がだらだらと収録されているだけで感心しない。元々社会的問題意識の強い映画なのだから、この映画が製作されたバックグラウンドの説明とか、監督の製作意図などについてのインタビューなどを収録して欲しかった。本編に監督コメンタリーがついているので、そこでやっているということなのかも知れないが...

 本作品は本年(2009年)全州国際映画祭で観客評論家賞、CGV韓国長編映画公開支援賞の2賞を受賞。本年韓国で6月に封切り公開された。観客動員数は7738名1)。日本ではこれから2009年韓国映画ショーケースでの上映が予定されている。

 また、題名の「バンドゥビ Bandhobi」の意味はベンガル語で「友達」の意味であるとのこと。

1)マックスムービー 韓国ボックスオフィス 2009.8.20
http://www.maxmovie.com/movie_info/boxoffice_detail.asp?oid=5974&page=&key=&svalue=

原題『반두비』 英題『Bandhobi』 監督:신동일
2009年 韓国映画

DVD(韓国版)情報
発行・販売:WIDE MEDIA 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby5.1 韓国語
本編: 128分 リージョンALL 字幕: 韓/英 片面ニ層(2枚組) 2009 年 11月発行 希望価格W25300

他の韓国映画に関する記事
http://yohnishi.at.webry.info/theme/fc194a0a1f.html

韓国映画ショーケース2009
http://www.filmex.net/kfs/2009/

映画生活『バントゥビ』
http://pia-eigaseikatsu.jp/title/153040/

シン・ドンイル監督作品(国内盤 2011.8.5発売)



2010.12付記
本作品は『真! 韓国映画祭2011』にて『ソウルのバングラデシュ人』との邦題で上映予定
http://www.melma.com/backnumber_132362_5036083/

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韓国男性社会批判の視点が強い『私の友達、その妻』 -韓国映画-
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soramove
2011/02/10 07:51
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