yohnishi's blog (韓国語 映画他)

アクセスカウンタ

zoom RSS 韓国の「大島渚」、チャン・ソヌ監督の『競馬場へ行く道』

<<   作成日時 : 2009/05/16 19:40   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

画像 『つぼみ』『バッド・ムービー』『LIES』『リザレクション』等で日本でも知られる、一作ごとに作品傾向が全然異なる、韓国の「大島渚」1)、チャン・ソヌ監督の1991年作品。日本では未公開と思われるが、韓国では様々な論議を引き起こした作品2)。退廃的な知識人を思いっきり皮肉った作品と言えるだろう。後の『LIES』や『バッド・ムービー』に通じる側面もある。

 R(ムン・ソングン)はフランスで博士号を取り、5年ぶりに韓国に帰って来る。彼を空港に車で出迎えたのはJ(カン・スヨン)。JはフランスでRと同棲していたのだが、1年前に一足先に博士号を取って韓国に帰国し、非常勤講師をしたり、自分の論文の売り込みに歩いている。故郷が大邱であるRは、1年ぶりに会ったJとソウル近郊の旅館に向かい、Jとの関係を求めるのだが、Jは言を左右にして応じようともしない。挙句の果てに一足先に帰ってしまった。しかしJはなぜか律儀に翌朝迎えに来て、高速バスターミナルまで送るというのを、Rは説得して儒城温泉まで来させるのだが、やはりJの態度は相変わらず。その時は、Jはすごすごと大邱へ帰るのだった。
 Rには大邱に両親、妻子がおり、皆集まって帰国を祝う。しかし、RはJとの関係が決定的になった一年前に一方的に妻(キム・ボヨン)に離婚したいとの手紙を送り付けていた。方言丸出しで生活に追われ、洗練されたところの一つもない妻に、今やRは何の魅力も感じず、自分にふさわしくないと思っているのだが、妻は離婚など全く眼中にない。それでも執拗に離婚を迫る夫に妻は「しばらく考えてみる必要がある」とだけ答えるのだった。 こうしてRの大邱とソウルの2重生活が始まった。RはJに会うために頻繁に上京し、その度にJもなぜか律儀にRに会いに来るのだが、毎回「やらせろ、やらせない」の押し問答。Rはパリであんなに愛し合ったのに、との思いがあって割り切れない、そのうちJは親が勧める求婚者がいる彼との結婚も考えている、奥さんと離婚する気もないくせに、などと言い出す。その度にRは、Jの好きにしろと一旦は言うのだが、その直後に何かと屁理屈をつけてはJの元に戻って来る。そしてRは大邱に戻っては、お前は結婚前に既に処女ではなかったと言って、妻に離婚を迫る。
 第三者には全く不可解な関係をずるずる引きずり続ける二人なのだが、やがてその理由が見えてくる。実は文才が今一つなJは、フランスにいたときにRに自分の博士論文を代筆させていたのだ。そのおかげでRは留学を1年延ばすことになったのである。その負い目からJはRと会っていたのだ。しかも、Jはその博士論文を韓国語に直して雑誌への売り込みを図っている、というキツネとタヌキの化かし合い的な二人の関係が視聴者に明らかになって来る。
 とはいえこの煮え切らない呆れた二人の関係も、ようやく押しの強いRの勝利に終わるか、と見えた瞬間、大どんでん返しが...

 本作品を見た後の第一印象は、何だ、ホン・サンスの、『オー! スジョン』以降の煮え切らない男女関係を描いた偉大なるマンネリ路線は、既にずいぶん前にチャン・ソヌが描き切ってしまっているではないか、という点。
 Jは大学の教授になりたいし、もちろん評論家としても名声も欲しい。それにつながる業績を結果的に体という対価を払って「買って」しまったことで、Rに対する負い目を感じると同時に、それは上手く消してしまいたい過去でもある。その矛盾と空虚さが彼女の煮え切らない態度に象徴されている。Rは才能は確かにあるにしても、彼の文学世界は、現在彼が立脚している韓国という現実とは何ら関係のない世界である(それは執拗に妻との関係を切ろうとする態度に象徴されている)。二人の「知的」世界は現実や事実とは無縁の全く砂上の楼閣である。
 最後にRが、自分の計算が全て崩れ、そこから走りだす方向は那辺にあるのやら...?

 韓流ファンではない、コアな韓国映画フリークには必見の映画と言えるだろう。日本未公開。

 なお、『リザレクション』の記録的な興行的失敗の後、チャン・ソヌの新作がない。非常に残念である。

 なお、本作品のDVD(本作品に限らずテウォンのKorean Film Retrospectiveシリーズの大半に言えるが)のテレシネの画質は非常に良い。やや古めの名作を高画質のDVDで残そうというテウォン・エンタテインメントの意欲的な企画は称賛すべきであるが、やはり売れないのか、ここ最近このシリーズの新刊DVDが出ていない。この点も大変残念である。

1)トニー・レインズはチャン・ソヌを大島渚に比して論じている。Rayns, Tony (2007) "Jang Sun-woo: KoreanFilm Directors", Seoul Selectionを参照。
2)シネマコリア『競馬場へ行く道』紹介 http://cinemakorea.org/korean_movie/movie/keibajyouikumiti.htm 2009.5閲覧

原題『경마장 가는 길』英題『The Road to the Race Track』監督:장선우
1991年 韓国映画

DVD(韓国版)情報
発行: Taewon Entertainment (旧Spectrum DVD) 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby2 韓国語 本編: 140分
リージョン3 字幕: 英 片面ニ層 2006年2月発行 希望価格W

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
韓国の「大島渚」、チャン・ソヌ監督の『競馬場へ行く道』 yohnishi's blog (韓国語 映画他)/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる