一体、菅首相とは何だったのか

 結局、菅首相とは、菅内閣とは何だったのか... マスメディアの分析によれば、策士、策士に溺れて自滅、という論調が多いようだが... それが正しいとすると、結局彼は、日本人の健康を守ろうという使命感もなく、ただただ自分の権力維持だけのための策だけで上り詰めたということか。だとすると、こんな人物が首相になってしまう政治構造自体が末恐ろしい。

 ただ、今までの報道からすると、少なくとも次のようなことは言えそうだ。

・エンパシー能力の欠落
・「国民へのマウンティング」権力観
・自己評価が過剰に高い... 自己を客観視する能力に疑問
・不都合な情報を直視せず、自分の都合の良いストーリーだけ信じる、ご都合主義の解釈
・極度の説明能力の欠如

1. エンパシー能力の欠如
 従来、エンパシーとシンパシーは両方とも共感、同感、同情などと訳されて、その違いは日本社会では十分よく理解されてこなかった。しかし、最近ブレイディみかこ氏の著書『他者の靴を履く: アナーキック・エンパシーのすすめ』によってその違いが知られるようになってきた。つまり感情的に共感できなくても、立場の異なる相手の事情を察して理解する能力ということである。つまり感情というよりは知性の一種である。
 菅首相が就任して最初に言ったことが、「自助」の強調だったので、そのあたりからエンパシーが欠如しているのではないかと思っていたが、就任するにつれ、ますますその思いは確信に変わった。例えば、平気でコロナは中等症は自宅療養しろ、などと言えてしまう神経である。マスメディアは、コロナ中等症と言っても一般的な感覚とは異なり、かなり重篤な状態で酸素吸入が必要な状態だと報じていたが、酸素吸入が必要な人間を自宅に放置したら、見殺し以外の何物でもない。
 また政権交代劇の直前、いくら岸田氏の「争点」つぶしとは言え、事実上今まで支えてきた二階氏を平気で切って、安倍、麻生にすり寄るような「奇策」を考えつくなど、切られた方がどう思うか、ということに思い至らないあたりである。
 尾身茂氏は、世間がコロナの大変さへの理解が足りないとたびたび繰り返していたが、あれは「首相」の理解が足りないと本当は言いたかったのではないか。それも首相のエンパシー能力の欠如に起因していると思われる。

2. 「国民へのマウンティング」権力観
 これは、5.の極度の説明能力の欠如とも関わると思われるが、そもそも菅氏は、国民、野党に対して丁寧に説明することが、自分の権力や権威を傷つけるものだと思っているフシがあるように思える。説明することが、あたかも、国民に「へりくだる」、国民の前にひれ伏すかのように思っているのではないか。従って、国民の事情など斟酌せずに自分の意思を国民に押しつける、いわば国民に対して無理矢理「マウンティング」することが自分の権力の発揮であり、権威の維持に必要なことだと思っているのではないか。
 上での述べたが、国民に対する「自助」の強調、事実上のコロナ中等症患者の切り捨て宣言などは、そのような意識から来ているように思われる。
 
3. 過剰に高い自己評価 ー 自己評価能力の欠如
 8/13に以下のような報道がなされた。
「菅首相が謙遜?コロナ対応問われ「自己評価は僭越」」2021.8.13 朝日デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASP8F6Q6XP8FULFA025.html

 この報道が流れたとき、菅首相は、自分のコロナ対応がすばらしいと自画自賛しているのかと、呆れてしまった。もちろん「僭越」という国語の意味をちゃんと知っているなら、という前提だが (それも怪しい?)。自分で評価することが僭越ということは、自画自賛しかねないので遠慮しておく、ということである。この人は本気で、自分のコロナ対策はすばらしいと思っているのか... と開いた口がふさがらなかった。詐欺師は自分自身を騙すところから始まると言われるが、まさにそれである。
 また、7月はじめに、各社の世論調査で菅内閣の支持率が軒並み20%台に落ちてしまった直後、被害者認定が受けられない原爆被害者が国を提訴した裁判で国が負けたときに、菅首相は上告を断念した。今までの菅首相としては考えられない姿勢であったが、流石に内閣支持率の低下を見て、今まで通りの姿勢では、これはまずいと思ったのだろう。ところが、上告断念後しばらくして世論調査で、「五輪やって良かった」という人が77%だったという結果を受けて、直後、コロナ中等症患者の自宅待機を国民に命じた。おそらく、これで自分に対する支持率が一挙に逆転上昇した、賭に勝ったのだと思ったのだろう。そこで再び国民に対して高飛車な姿勢、「マウンティング権力観」を発揮したのであった。五輪支持率の上昇が直ちに自分の支持率の上昇だと思えるところが、呆れてしまう。
 
 さらに総裁選をめぐるドタバタに関しても、二階を切れば、自分は浮上する、つまり今の内閣の支持率が悪いのは、自分のせいではなく二階のせい、と思えてしまう神経が、また信じられない。
 以下の報道を見ても、
「「お前と一緒に沈められねえだろ」退陣表明前夜、“2A”から首相に三くだり半」西日本新聞 2021.9.13
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/795598/
 この報道が事実なら、内閣の支持率の低下は自分のせいでないと最後まで首相が確信していたということである。麻生氏からあそこまで露骨に言われるまで分からなかったということである。
 
4. 不都合な情報を直視せず、自分の都合の良いストーリーだけ信じる、ご都合主義の解釈
 このような過剰な自己評価の高さは、ささに不都合な情報を直視せず、ご都合主義のストーリーだけ信じる姿勢から来ていることは明らかである。第2次大戦の日本の敗戦も、軍が不都合な情報を直視せず、ご都合主義のストーリーで突き進んだことが最大の要因だったが、まさに菅首相は日本の第三の敗戦の将である。

5. 極度の説明能力の欠如
 例えば、岸田氏に対する「争点潰し」も、そもそも論叢に持ち込まないようにする、という姿勢が見え隠れする。やはり根本的に説明能力が欠けているのだろう。逆にそこから「国民へのマウンティング権力観」が生まれたのかもしれない。前にも指摘したが、首相の的外れな回答を壊れたレコードのように繰り返すのも、結局彼の言いたいことは「俺は正しい」しかなかったのではないか。

 やはり菅辞任の報を受け、株価が上昇するのももっともである。

 とは言え、後任の総裁に、岸田、高市、河野の誰がなっても絶望的である。せめて野田聖子が立候補にこぎ着ければとは思うが...

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