釜山から対馬へ - 韓国人対象対馬ツアーに参加してみた(1)

 韓国人観光客で賑わっていた対馬が、今年(2019年)8月以降の韓国人日本製品ボイコット運動の影響を受けて、客足がぱったり途絶えたとのニュースを聞いて、むしろ今こそ対馬へ訪問するチャンスと、韓国旅行のついでに対馬に行ってみた。といっても対馬に滞在する時間もあまりとれないので、韓国人対象の釜山発ツアーに参加してみた。

 ちなみに、東京(羽田)-対馬間は直行する飛行機はなく、福岡(または長崎)乗り換えが必要(ANA)。乗り換え割引を適用した通常の往復運賃は、45590円。3か月前予約のスーパーバリューを使っても一番安い便でも26000円程度はかかってしまうようである。
 今回年末年始を挟んだ釜山往復航空券は釜山航空の2か月前予約で35000円程度(空港利用料、燃料サーチャージ、出国税を含む。閑散期でさらにもっと早く予約をかければもっと安くなり15000円程度+空港使用料等諸経費5-6000円程度)、さらに対馬ツアーの料金は、交通費、宿泊費、ガイド料を含み一人当たりW179,000(約18000円程度)+日本の出国税1000円。ちなみに、a-ferryという国際航路予約サイトを使うと、釜山-比田勝(上対馬)間の往復料金は一人当たり6000円弱である(未来高速 KOBEE利用)。これに日韓とも出国税が付加される。ツアーには海外旅行保険も付くが、日本国籍者は国内旅行扱いになるため保険の対象にならないとのこと(日本籍以外の[韓国人以外の]外国人は対象となる)。利用したのは対馬島ツアーという韓国の旅行会社のツアー。

釜山港国際旅客ターミナル.jpg

 出発当日朝8時に、釜山港国際旅客ターミナルの3階に集合しろと指定されていたので、担当ガイド名が書かれたカウンター前に集合する。このターミナルは2015年に新設されたターミナルで、やはり新設された金海空港と外観も構造も似ている。当日出発のツアーはほかにもう1組ほどあるようであった。いったんガイドが全員のパスポートを集め、日本の出国税(1000円)を円貨で徴収する。私が参加したツアーは全員で17名。そのうち対馬が初めてという人は私も含め1/3程度で、リピーターの方が多数である。出国前にパスポートと乗船券を客に渡し、出国ゲートから出発。国際航路に乗るのは初めてであるが、出国前にX線による荷物検査があるのは飛行機と同じであるが、飛行機だと制限のある液体その他の持ち込みは制限がない。チェックインで手荷物を預ける手続きも、荷物の重量制限もなく鉄道を利用するのと同じである。もちろん国際線なので出国手続きはある。

釜山旅客T01.jpg

 乗った船は大亜高速海運のオーシャンフラワー号。検査修繕のためしばらく休航して、この日が休航後の初運航だったようだ。定員は334名であるが8割以上埋まっている状態。韓国人観光客が非常に減少していると聞いていたが、予想外に大勢の韓国人観光客で埋まっている。後でガイドから聞いた話だが、この日の釜山から対馬に向けた乗客は300人余りだったそうだが、前日までは30-40人程度だったという。このガイドが対馬ツアーに添乗するのも4か月ぶりだという。なお、最盛期には1日3000人の韓国人観光客が来ていたという。釜山-対馬便も最盛期は5社が運航していたようだが、現在は韓国の大亜高速海運と未来高速が釜山-比田勝間を、そして日本のJR九州高速船が福岡-比田勝-釜山便を運航しているのみ。また釜山-厳原航路は運休状態である。行きはさほど波も高くなく無事に比田勝港に到着。所要時間は実質1時間15分ほど。

オーシャンフラワー船内.jpg

 比田勝の入国手続きでは、観光客で長蛇の列だったが、「日本人、再入国の方はお申し出ください」と張り紙があったので、係員に申し出ると優先窓口で優先的に入国審査してくれた。パスポートには「帰国 HITAKATSU」のスタンプが押されたが、おそらく比田勝から日本に「帰国」する日本国籍者は極めて少ないと思われるので、このスタンプは希少価値ものだろう。

比田勝T01.jpg

比田勝ターミナル.jpg

 比田勝のこじんまりとした国際線ターミナルを出ると、裏の駐車場には釣り宿の送迎車が多数待機していて、かなりの韓国人旅行客がそこに吸い込まれていった。団体旅行客はオーシャンフラワー号利用客の中では、私の組も含め2組だけのようで、待機していた観光バスは2台のみであった。

比田勝T02.jpg
比田勝T03.jpg

三宇田.jpg

 客がバスに乗るとまず、比田勝のすぐ北にある三宇田海岸に行く。ここは晴れると海の色が何色にも見えきれいであるそうだが、その日はあいにくの曇り。再び比田勝に戻って昼食となるが、国道からちょっと奥まったところにあって、一見さんは入りそうもないところにある「千鶴」という食堂に入る。Google Mapで検索してみると、口コミに韓国人の書き込みしかないところからほぼ韓国人団体客専用らしい。ただ韓国語の表示は一切なく、地元の人が運営している模様。建物も、伝統的作りだが、新しい。ちなみに対馬市で発行し無料で観光客に配っている「対馬まるわかりガイドマップ」には、この食堂の内容を「郷土料理」と紹介している。メニューも口コミに上がっている通りのお寿司とうどんのセットで、量は少なめ。もっとも船酔いした客にはこの程度の量が適当かもしれない。添乗ガイドは、韓国とは違って大盤振る舞い(진수성찬)ではありませんから、としきりに予防線を張っていた。お店の従業員に聞いてみると、やはりここのところ韓国人観光客の客足がぱったりで困っていたという。比田勝の街中では「韓国語教室」の看板が見えた。韓国語ができるかどうかが生活に直結するから当然であろう。もっとも対馬藩は昔から朝鮮語を学び、朝鮮語通詞も輩出した歴史もあるので、伝統を踏まえていると言えるか。

千鶴.jpg

 食事が終わるとバスはひたすら厳原にむかって南下。ただし国道を通らず県道39号線をひたすら下る。おそらく県道を通ったほうが海も見え景色がきれいだからであろう。厳原に到着すると、半井桃水記念館(浴衣体験)、厳原八幡宮、金石城跡(徳恵翁主結婚記念碑)を駆け足で見て、1時間ほど自由時間。半井桃水記念館から、厳原八幡宮に向かう道では、ガイドが、「道にはごみがなくてきれいでしょう。ここでごみを捨てていく人は韓国人ですよ」と注意を促す。また、たばこと飲料水の自販機が並んでいる一角で、ガイドが、日本は自販機大国ですが、皆さんが買えない自販機が一つあります、それがたばこの自販機です。買うには成人を証明するカードが必要なので、皆さんがたばこを買うときはコンビニに行ってください、と案内。

大亜ホテル01.jpg

 この後、バスは宿泊所に向かったが、宿泊先は大亜高速海運が建設し、その日本支社であるジャパン大亜が運営する、対馬大亜ホテルである。ガイドはこのホテルのことを「対馬のヒルトンホテル」と紹介していた。場所は市中からちょっと離れたいさりび公園に隣接する丘の上にあり海の展望が良い。道を挟んで反対側には特別養護老人ホームがある。公共交通はバスがあるが(バス停は「特老前」)1日6本のみと本数は少なく、厳原の市中から歩くと20分強上り坂を登らなければならず、今一つアクセスが悪い。タクシーはワンメーターで厳原市中に出られるが。韓国人団体客はまず対馬大亜ホテルに収容し、そこで足りないと市中の日本人経営ホテルや旅館に回ると言われているようだが、同行の韓国人リピーター客に聞くと、このホテルから見る日の出が韓国では非常に有名で、年末年始は予約が取れないという。但し、規模は3階建てでこじんまりとしておりさほど大きくない (定員70名)。しかもエレベーターもないのは、スーツケースを抱えてくるであろう韓国人客には不親切。大亜高速海運も建設当時は、どれほど韓国人観光客に対馬が人気になるかどうか恐る恐るで、建設投資をケチった結果であろう。室内もきれいではあるが、TVやお湯を沸かすポットは無名の安い中国製であった。但し、エアコンは日立の「白くま君」。室内の案内表示等はほぼ韓国語のみで、ほぼ韓国人専用ホテルと言ってよい。ただしなぜか避難経路の説明は日本語オンリー。部屋の鍵がオートロックでないのは韓国仕様?

大亜ホテル02.jpg

対馬大亜ホテル紹介 (対馬観光物産協会サイト)
https://www.tsushima-net.org/hotel/accommodation/izuhara/tsushima_daeahotel

 従業員体制は、韓国人のお客さんが来ないためか、韓国人のマネージャー(当然日本語ができる)と、「(株)JAPAN DAEA」と書かれたユニフォームを着た韓国語を話せる日本人職員の2人体制の様で、あと朝、晩厨房担当のアルバイトの日本人のおばちゃんがひとりずつ来る。カウンター向かいの売店も鍵がかかって閉められていた。夕食は、上の対馬観光物産協会のサイトを見ると、刺身やフライなど地元の魚を使った日本食を供給しているように出ているが、今回は非常態勢なのか、解凍肉のサンギョプサルに野菜を切って出しただけのバーベキュー。お客が来ないので、アルバイト一人で回せる、調理せずに済ませられるこの手抜きメニューになったのであろう。大浴場も閉鎖状態。おそらく、最盛期は日本人のアルバイトも多数雇って切り盛りしていたのであろうが... あとで他の韓国人のお客さんに聞いたら、食事は適当に残して後でタクシーで市中に出かけて、居酒屋で一杯やった人も多かったようだ。

大亜ホテル04.jpg

 翌朝は快晴で、部屋や食堂から確かに日の出が見える。韓国で評判になるのも一理ある。翌朝の朝食はサバの干物の切り身のついた、ごく一般的な日本の旅館の朝食。但し定番の生卵の代わりにゆで卵がついてきた。

大亜ホテル03.jpg

 バスに乗るとまず万関橋で降りて、海峡を流れる渦潮を見る。さらに対馬が見渡せる烏帽子岳展望所に寄る。ここで、日本人の団体客に出くわす。どこから来たツアーなのかと添乗員に聞くと、九州北部地区で募集したツアーだという。やはり対馬には九州周辺以外から日本人客を呼ぶのは難しいのだろう。そのあと和多都美神社の脇をゆっくり通過し、車窓から見る。以前は和多都美神社の中を見学できたそうだが、神木に上るなどマナーの悪い韓国人客がいて、神社側も神主が常駐して監視できるほどの規模でないため、韓国人団体客お断りとなり、それ以来車窓からだけの見学となったそうである。車内でガイドは和多都美神社に由来する神話も紹介していた。ただ、ここは次回来るときは個人できてゆっくり見たいところである。

烏帽子岳展望所.jpg

わだつみ神社.jpg

 再びバスは県道39号を北上し、上対馬町の舟志地区にあるもみじ街道中心地に行く。11月上旬ぐらいにはもみじがきれいなそうだが、今はない。杉、檜の林の中を森林浴ということで30分ほど歩く。ガイドはPM2.5(韓国語だと미세먼지=微細ほこり)に汚染されていないきれいな空気をたくさん吸って帰ってください、と客に呼びかける。
 さらに比田勝を通過し、今度は鰐浦地区にある韓国展望所に向かう。うっすらと釜山の街並みや巨済島の山並みなどが見える。横には建設途中で工事が止まった小屋があるが、バスガイドによると、韓国人観光客を当て込んでアイスクリーム売店を建設していたところ、韓国人客の客足が途絶えて工事が中断しているとのこと。ここ以外にも韓国人客相手の売店や出店が各地にいっぱい出ていたが、やはりみな閉店したり、出店がなくなって、おいしいものが食べられなくなって残念です、とガイドは言っていた。なお、アイスクリームを食べ歩く韓国人観光客が増えてから、トビ(ガイドは매[タカ]と言っていたが、トビであろう)がそれを狙うようになり、トビにアイスクリームをさらわれる観光客が続出しているという。トビに油揚げをさらわれる、とは言うが、トビにアイスクリームをさらわれるとは知らなかった。

韓国展望所_アイスクリーム工事中断.jpg

 韓国展望所を出るとすぐ今度はバスが脇道に入る。ここもまた通りがかった日本人観光客が入るとはとても思えない、わざわざ行こうと思わない限り行かない海辺の場所に、倉庫でも改造したような食堂が... この「憩い処『和』」という食堂で昼食になる。ここで刺身や揚げ物がメインとなったおまかせ定食(800円)が出る。韓国人客を意識しているのかタイなどの白身魚中心の刺身。2日間の食事ではここがベストであろう。従業員の話を聞くと、やはり増えた韓国人客を当て込んで、7年ほど前からやっているという。メニューには日本語と韓国語が併記してある。食べログにも情報がない。

憩い処和01.jpg

憩い処和02.jpg

 再び比田勝に戻るとGATEWAYという免税店に入る。建物は対馬振興開発株式会社が所有しているようだが、運営は秋葉原に本社のある永山免税店に委託しているようだ。そこでバス車内でガイドが推薦していた健康食品やら化粧品を観光客らがぼんぼん買っていく。車内でガイドが、韓国に帰ったら無利子で分割払いに帰ればいいんですよ~、と言っていたのを聞いて、分割払いにするほど買うものがあるか、と思っていたが、一瓶三万円、四万円もする化粧品やら、日本のドラッグストアでは見たこともないような健康食品(ひょっとして外国人客向け?)などをぼんぼん買っていくのを見て目を丸くした。なるほど分割払いが必要なわけである。

gateway.jpg

そこで売っていたのは、例えばこんな化粧品である。

4GF化粧品製造元 北尾化粧品 (但し 4GFブランドの紹介はない)
https://www.kitao-store.com/

同 エクシーズ (但し 4GFブランドの紹介はない)
https://www.exs-inc.jp/index.html

8GF化粧品 (製造元held)
http://held.jp/jp/product/cosme/

ラインナップ的にはこちらの通販サイトで売っている商品に近い
https://www.rakuten.co.jp/everyshop/index.html (楽天・EVERYSHOP)
このサイト、福岡に本社のある免税品ショップなどを展開しているJTCという会社が運営しているようだ。比田勝の生活広場の免税ショップもJTCが運営している。どうも4GFという化粧品はJTCがOEMで製造委託している化粧品ブランドのようだ。

 日本人の知らない、日本の免税品市場というものがあるのだろう。これで、1日3000人の韓国人観光客が入ってくるとしたら、相当の売り上げになるはずである。対馬が韓国人に乗っ取られると騒ぐネトウヨがいるが、結局、韓国人観光客が日本にボラれているのではという気がする。

 従業員は日本人もいるにはいたが、多くは韓国人。韓国は就職難だし、日本で働く道を選んだのであろう。店のつくりも、「CCTV監視中」の掲示も韓国のお店の雰囲気そのまま、という感じ。

 ここでショッピング後、出航時間まで自由時間となる。港の周辺を散歩していると、韓国語で話しかけてくる青い制服を着た日本人がいた。実は東京から来たんですよ、という話をすると、その人は海上保安庁の方だという。だいたい九州周辺を数年ごとに転勤して回っておられるということで、対馬勤務も初めてではないという。その方の話だと、昨年(2018年)、対馬に訪問する韓国人客が史上最高を記録し、それを当て込んで今年の6月ごろ比田勝に新規開店した店がたくさんあったそうだが、その直後の8月から韓国人客が激減し、この地域は皆、苦境にあえいでいるという。GATEWAY以外に、生活広場という免税店兼コンビニ(ポプラ)ができていたがそれも6月にできたばかりだという。
ようやく先月(11月)あたりから少しずつ韓国人観光客の客足が回復傾向にあるようだ、ということであった。また、立派なイカ釣り船も停泊していたが、海上保安官の方の話では、最近はイカが取れなくなってきており、このような大型船も少なくなっているとのこと。実はイカはマグロの主食であり、最近マグロ保護の動きでマグロの漁獲量を減らしてきており、その影響でイカの数も減っているそうだ。

イカ釣り船.jpg

 そういえば、三宇田海水浴場のすぐ近くに東横インがあったが、それも今年の9月10日に開業したようだ。これも大打撃を受けていることであろう。

「東横イン比田勝が開業 同社初のリゾートタイプ」 2019.9.11 長崎新聞
https://this.kiji.is/544348936776041569?c=174761113988793844

[その2]はこちら
https://yohnishi.at.webry.info/202001/article_1.html

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