『幻の光』(是枝裕和監督) Blu-ray評

 2018.5に発売された、是枝裕和監督の長編劇映画デビュー作『幻の光』のBlu-rayディスク。最近になってようやく税込2600円台に下がってきたので注文してみた。元々は1995年に公開され、その当時劇場で見ており、結構好きな作品だったのでアメリカ盤のDVD(国内盤DVDが出る前、2000年11月に発売)を買っていたのだが、こちらは画質的には今一つであった。

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あらすじはこちら
(Movie Walkerサイト)
https://movie.walkerplus.com/mv27803/

 今日改めてみると、公開当時も感じていたことだが、まず是枝裕和監督が侯孝賢監督の熱烈なファンである、ということがわかる。まさに日本版侯孝賢(中期の)映画作りを狙っていたことは間違いない。なにせ音楽が『恋恋風塵』などの音楽を担当していた陳明章である。葬列のシーンなどは『悲情城市』を想起させる(さらに、本作ではないが『空気人形』ではシネマトグラファーに侯孝賢映画常連の李屏賓を起用)。さらに光の使い方、とくに光と闇との対比は侯孝賢映画そのものと言ってよいほど (その分だけビデオディスク的には再現が非常に厳しい条件となっていて、DVDでは満足がいかなかった。DVDでは暗闇のシーンでは何が映っているかよくわからないほど)。そしてストーリー展開ではなく、画像でじっくり見せる描写...
 たぶんその点は監督本人も自覚していて、その次の作品『ワンダフルライフ』では侯作品とは全くイメージの異なるファンタジー路線を取ったのであろうが...

 そして是枝監督の卓越した演出技術を見せつけるのは、ほとんど主観ショット(人物のクローズアップ)がなく、ほぼ全編客観ショットばかりで構成されているにもかかわらず、深い心情描写が達成されていること。人物のクローズアップがあったとしても、それは顔ではない体のパーツに限られている。これはめちゃくちゃ演出力が高いことを示している。そもそも客観ショットばかりで構成しつつも、心情描写を可能にするというテクニックは小津安二郎の専売特許であったが (だから小津は俳優に演じる人物への感情移入を求めない形式主義者であった)、それを侯孝賢が受け継ぎ、さらに是枝が引き継いだということであろう。ただ、客観ショットばかりで構成するという点では小津と同じにしても、俳優へのアプローチの仕方は異なるような感じがある。とはいえ主観ショットなく心情描写が可能なのは相当な演出技量である。ふつうは破綻する。

 ちょっと残念なのは、関西の空気感がなく嘘っぽくなってしまっている点。まず最初に主人公のゆみ子(江角マキコ)とその最初の夫である郁夫(浅野忠信)が住んでいたのは尼崎という設定だが、全く関西の空気感がない。ロケ地が日暮里、三河島付近であることがバレバレである。さらに鉄道駅は鶴見線(冒頭に出てくるのは国道駅、もう一つは浅野駅か武蔵白石駅か?)。ゆみ子が一旦大阪に帰省した時のマンションからの風景もいかにも関東という雰囲気。ゆみ子と郁夫の関西弁も今一つ不自然。是枝監督は東京の出身であり(江角マキコは島根、浅野忠信は横浜)、やはりその点で多少無理がある。能登は現地でロケをしているのだが... ちなみにここに出てくる浅野忠信は若い!!

 なお、Blu-rayには特典として2003年のDVD化の際に収録された江角マキコの能登ロケ地への再訪ドキュメンタリーが含まれている。ここに出てくる江角マキコはとても感じが良い。『バナナフィッシュ』より前の吉田秋生が描く女の子そのまま、という感じ。とっても可愛くて、後年変なスキャンダルを起こして引退せざるを得なくなったことがくれぐれも惜しく感じられる。あれは何だったのだろう?

 ところでBlu-rayの画質だが、さすがそのダイナミックレンジの広さを活かして、DVDでは厳しい暗いシーンや光と暗さのコントラストが明確になったシーンでも、うまく諧調が再現されている。また、やや遠くから全体の風景を撮っているシーンも多いのでやはり解像度の高さ(& 100インチ以上のスクリーンで見ること)が重要で、この点でもBlu-rayの解像度の高さが効いてくる。国際的なビデオディスク批評サイトDVD BeaverでもBANDAI VISUAL盤の画質の高さは高く評価されている (ほかにBlu-rayは米Milestoneから出ているがマスターが異なるし、1080iである)。私もDVD Beaverで高く評価されているので、BANDAI VISUAL盤を買った訳であるが。日本映画のBlu-rayディスクでも Region ALLにして英語字幕を付ければ、日本盤をわざわざ海外から買う人がいる、ということなのだが、日本のビデオディスクメーカーさん、分かっているのかなぁ?(DVDがRegion 2だったのがBlu-rayはALLになっただけ少しは分かったということか)

"Maboroshi" - DVD Beaver
http://www.dvdbeaver.com/film/DVDCompare/maborosi.htm




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