画面の鮮明さに驚嘆 肉体の門(1964) - 海外盤BDしかない日本映画

 田村泰次郎の小説「肉体の門」は鈴木清順監督(1964)と五社英雄監督(1977)によって映画化されているが、紹介するのは鈴木バージョン。国内盤はやはりDVDのみである。

あらすじはこちら
肉体の門(1964) Movie Walker
https://movie.walkerplus.com/mv21219/

 1946年の夏を想定して作られていると思うが、当時、アプレゲールの投げやりな、アンチモラル、アノミー状況の雰囲気を伝えてくれる作品。当時映倫で成人指定となっており、いわば日活ののちのロマンポルノ路線の先取り的映画であったといえる。ちなみに米クライテリオン盤DVDに収録された監督&美術監督木村威夫インタビューによれば、当時の会社(日活)の位置づけとしては女の子を裸にしてつるしてたたく、というあたりを映画のウリと考えていたようだ。今でこそ鈴木清順は、タランティーノがオマージュをささげるほどの巨匠監督と思われているが、当時はプログラム・ピクチャーを撮るB級監督と日活社内で位置づけられており、鈴木も会社から撮れと言われたものを撮る、という姿勢だったようだ。予算もB級映画の位置づけなので、予算がなく本格的なオープンセットが組めず、舞台装置的な考えを取り入れた簡易なつくりであったという。そういう意味では、当時の情景の本格的な再現というよりは当時の心象風景の再現と言うべきものだったようである。木村によれば、そもそも当時はペンキさえモノ不足でなく、セットに映っているような看板さえほとんどなかったのが実情だったようだ。また予算不足を何とかするために他の映画で使われた後倉庫にしまってあった使い古しのベニヤ版などをそのまま転用し、さらにぼろく見えるようにペンキを塗って見せたり、作業員も社内のスタッフの好意にすがったり、あるいは映画につけられた予算ではなく、倉庫整理というような名目で人件費予算を流用したりして作ったようだ。
 鈴木と木村はかなりウマが合ったらしく、鈴木は奇抜なアイディアを面白がって聞いたり、さらにそのアイディアを拡大するなど、前例などにとらわれない柔軟な考え方をするところが良かったようだ。とにかく斬新なアートワークにライティング、オーヴァーラッピングの使い方など視覚的に面白い。興行面でも鈴木監督作品としては珍しくヒットしたようだ。
 また当時成人指定になったとはいえ、今見るとその面ではおとなしい。さほど露骨なセックス描写が出るわけでもなく、影などを巧みに使って陰部が露出されないよう配慮されているし、今だったら中学生以上OKレベルではないだろうか。

 ちなみに海外版DVDは米Criterion, 英HB Filmsなど数社から出ているが、Blu-rayは仏Elephant Films (2017.6.6刊行, 希望価格20.02ユーロ, PAL版DVDとのコンボセット)から出ているものが世界唯一。もっともAmazon PrimeなどでVODとしてHDで見られはするが...
 このフランス盤Blu-rayだが、とにかく色彩の鮮やかさ、画像の鮮明さに息をのむ。まさに鈴木清順ワールドを正確に再現しており、非常に美しい。微小な埃などが取り切れていない面もあるが映像の鮮明さから全く気にならない。とても1964年の映画とは信じられないほど鮮やか。Criterion盤では最初のタイトルがくすんでいる部分もあるが、仏盤はそういう点が全くない。ただ収録されている監督インタビューは必ずしも本作のみについて語っているわけではないので、その点ではCriterion盤に軍配が上がる。画質という面ではElephant Films盤が本作のビデオディスクの決定版と言っても過言でない。PALのDVDとのコンボセットになっている。本作のビデオディスクを探している人には必買だろう。

1964年 日本映画
カラー 90分 1:2.35
監督: 鈴木清順
脚本: 棚田吾郎

la Barrier de Chair.jpg

フランス盤Blu-ray評 - DVD Classik (仏語)
http://www.dvdclassik.com/test/blu-ray-la-barriere-de-chair-elephant-films-collection-masterclass

映画評 - DVD Classik (仏語)
http://www.dvdclassik.com/critique/la-barriere-de-chair-suzuki






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