哥 (長尺版) - 1972年ATG映画

 海外では実相寺「ブッディズム三部作」と呼ばれている最終作。劇場公開作は120分だがBlu-rayのみ137分の長尺版を見ることができる。

本作のあらすじはこちら
哥 - Movie Walker
https://movie.walkerplus.com/mv19554/

 実相寺昭雄が演出した『ウルトラマン』に「京都買います」という話があるが、その問題意識に直結するようなストーリー。そしてやはり「家」あるいは伝統の継承ということがそのテーマの中心にある。

 京都・丹波篠山の旧家森山家の息子たちはもはや家を継ごうという意識はない。弁護士である長男康(岸田森)は篠山市内の森山家の別宅に住んではいるが、もはや森山家の邸宅や山を守っていこうなどという意識はなく、できれば家を売り払って京都市内にでも引っ越したいと思っており、次男の徹(東野孝彦→のちの東野英心)に至っては東京に出奔し好き勝手暮らしている。もはや彼らは森山家の価値を金銭に換算した価値以上のものとして感じられない。
 それに対し、森山家の使用人、浜(荒木雅子)の私生児である淳(篠田三郎)は、何よりも森山家に仕え、森山家を守っていこうという気概にあふれている。その淳は、本人は知らないが、実は森山家の当主である伊兵衛(嵐寛寿郎)のお手付きの子である。淳は、本宅を出て別宅で康に仕えてる。熱心に働くものの、時間外労働は決して行わず、自分がやるべきだと考える仕事以外は一切行わない。康の下で働く和田(田村亮)と藤野(桜井浩子)との関係を知っても、森山家とは関係ないことだと、一顧だにしない。ここにも形式さえ守られれば、そのエージェントの内実には立ち入らないという実相寺の発想が発露される。
 徹底的に森山家の「形」を守ることに命を懸ける淳と、森山家を金銭的価値以外に見ようとしない康と徹。だが、後者の動きが「形」をも壊しかねないところに至って、この関係性はついに破綻する。
 「国破れて山河在り」というが、逆に言わば、行動経済成長を経て(さらにはこの映画が作られた後のバブル経済を経て)、金銭的に評価されない国土の「形」を崩していった日本が象徴されていると言えるだろう。

 また音楽的にはクラシックファンであった実相寺らしく、全編に東京ヴィヴァルディ合奏団によるヴィヴァルディの『四季』が流れる。

 岸田森、田村亮、嵐寛寿郎、そしてウルトラマンシリーズの桜井浩子と実相寺組の常連が顔を見せている。篠田三郎と実相寺は本作が初邂逅であろうか。

 なお、BDには劇場公開バージョンと、監督オリジナル長尺版が収録されているが、長尺版は2kデジタルテレシネが行われているもののレストアされておらず、ところどころスクラッチやごみが散見する。

1972年 日本映画
モノクロ 1:1.35
監督 実相寺昭雄
脚本 石堂淑朗(としろう)


関連記事

「12月発売の「atg 実相寺昭雄ブルーレイ BOX」で『哥(うた)』の幻の長尺版が収録が決定!137分の完全版!」 - cinefil 2015.11.27
http://cinefil.tokyo/_ct/16916138

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント