女囚701号/さそり - 海外盤BDしかない日本映画

 日本でDVDは出ているが、Blu-rayは海外盤しかない日本映画を紹介するシリーズ。まずは伊藤俊也監督の『女囚701号/さそり』(1972)である。

あらすじ等はこちら
https://movie.walkerplus.com/mv19599/

 女囚さそりシリーズはもちろん当時の日本でもヒットして同シリーズ作4作が作られたが、今日ではむしろ海外で評価の高い作品。従って、BDも海外では出ているが日本ではDVDリリースしかない。もっともディスクでの所有にこだわらなければAmazon PrimeにてHD画質で見られるが...
 ストーリーは荒唐無稽、麻薬担当刑事、杉見(夏八木勲)を愛した主人公、松島ナミ(梶芽衣子)は、恋人のために「おとり捜査」に協力したつもりがはめられ、彼の出世のために犠牲となって刑務所にぶち込まれる。さらに刑務官たちによる日常的な今でいうパワハラや嫌がらせ、無意味な苦役に苦しめられた挙句、脱獄を図り、ついに刑務官や刑事らに復讐を果たすというもの。
 冒頭から東映のお馴染みのタイトルスクリーンに君が代が流れるのに度肝を抜かれる。さらに、ナミが杉見に処女をささげるシーンはシーツに血の日の丸。鈴木清順監督の『殺しの烙印』を彷彿させるかのようなアートワークと斜め、横、宙返りに、下から硝子板を返した裏返しなど、常識にとらわれない凝りに凝った独特のカメラワークと徹底的に漫画的世界というか、幻想的世界の再現を目指した映画世界。映画の世界を目指す人にとっては一度は必見の映画とも言え、この辺りが世界的評価の高さにつながっているように思われる。

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 ところで、海外盤BDは英米でArrow Videoから "Female Prisoner Scorpion: The Complete Collection"と銘打って4枚組x2のセットでリリースされている。BDとDVDの両方が収録されており合計8枚に加え、ポスターとブックレット付という豪華仕様である。このうち、女囚701号/さそりのディスクには本編に加え、伊藤俊也監督の2006年インタビュー(海外映画会社向け)およびArrow Videoが収録した小平裕助監督(のちリメイクシリーズの監督を務める)のインタビューが収録されているのが貴重。
 このインタビューによると伊藤俊也監督は、偶然にも、もともと石井輝男監督の下で『網走番外地シリーズ』に4本ほど助監督としてついていたことがあり、それがあって会社側から『女囚701号/さそり』に監督としてついて一本立ちしないかとのオファーがあったという。で、伊藤俊也監督は徹底的な左派であり組合運動を熱心にやっていたそうである。東映の演出部は社内の中でもどちらかと言えば当局寄り、右派とみられることが多かったそうだが、その中で伊藤監督は例外的存在であり、そのこともあって既存の監督作品を否定して新しい世界を創ってやろうという気持ちが大きかったそうだ。
 会社側が提示した『女囚701号/さそり』の当初脚本は、『網走番外地』の亜流、いわば女版『網走番外地』だったのだが、自分の流儀でやっていいなら受けると会社側に飲ませ、脚本をもう一度1から練り直してもらったそうである。そこで徹底的に漫画的な幻想的、虚構的世界を追及してこのようになったそうである。
 つまり、徹底的に反権力、反国家的な世界観を幻想的なアートワーク、カメラワークを通じて描いたものであり、国家や冒頭に君が代が流れるのも、処女をささげる際の二の丸を模したシーンも、いわば反権力、反日的表現であったわけである。そのような姿勢がポスト70年安保の当時の世相に理解され、ヒットにつながったのであろう。逆にこのような世界観は今日の右傾化した日本では理解されづらく、海外との評価が逆転する結果となっているのであろう。

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 ブックレットにはChiris D.による梶芽衣子へのインタビュー(1997)が記録されているが、インタビュアーの梶への敬意あふれる思いが伝わってくる。

 なお、Blu-rayのマスター素材は、東映から提供されたポジフィルムをArrow Videoの指示の下、イギリスのPinewood Studiosにて2kでデジタルテレシネおよびデジタル修復作業が行われている。フレームの揺れやごみ、傷などはほとんど修復されており、当時の荒いカラーフィルムの粒状も分かるほどクリアな映像になっている。ただオリジナルより色温度が高すぎるのではないかという点が批判されており確かに予告編のほうは色温度が低くなっている。この点をどう考えるかであるが...

予告編
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本編
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 唯一残念なのがIan MacEwanによるアートワーク。Arrow Videoのアートワークは今一つセンスがないが、本ディスクも例外ではない。ただ、各ディスクは日本版オリジナルポスターを使ったものとのリバーシブルになっているので、いやなら裏返して使うという方法がある。

1972年 日本映画
カラー 1:2.35
監督 伊藤俊也
脚本 神波史男、松田寛夫








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