東海テレビ制作『さよならテレビ』

 2018年9月2日に放映されたという東海テレビ制作のドキュメンタリー。但し、他局では一切放映されていない。その東京での上映会が先日開かれた。

 内容は、東海テレビ報道局の内幕を描いたもの。内容の詳しい紹介は文春オンラインに紹介されているのでこちらを見てほしい。

大島新『業界騒然! 東海地方限定番組「さよならテレビ」は何がすごいのか?』文春オンライン2018.11.12
http://bunshun.jp/articles/-/9624

 私がこれをみて思ったことは、自社の内部を取材させた東海テレビは非常に Fair であると思わされた。日頃TVは、あちらこちらに取材をしている。時に取材対象に対して、大上段に構えて批評することもある。ただ、それをやるなら、自身も時に取材対象となり批判されることを許すべきなのではないだろうか。まさにそれを可能にした東海テレビの姿勢は報道機関として極めて Fair であろう。
 しかし、カメラが入って取材されることに露骨に不快感を示すスタッフの姿には笑ってしまう。とはいえ日頃他者を取材対象としていて、時に同様な不快感を与えているかもしれないスタッフたちには、このような経験を通じて改めて他者を取材することの意味を考えてほしいものである。

 上映後、この番組を制作した土方ディレクターを迎え質疑応答があった。外部からの反応は、という質問には、そもそも放映時の視聴率が非常に低かったこと、ただテレビ局のWebページを通した反応には、高く評価する声もある一方で、やっぱりテレビ局はマスゴミ、フェイクだという反応まで大きく分かれたという。また社内内部の反応については、よくやったという声もある一方で、「東海テレビにとって何の意味があるのか」という声のあるという。外部識者をいれた社内の番組審議会ではやはり「何の意味があるのか」という声が高く、社内で声高に批判されるわけではないものの、微妙な雰囲気が続いているという。
 土方プロデューサーの話では、視聴率をどんどんとっているようなスタッフからは批判の声が高く、どこか鬱屈しているスタッフからは高く評価されるという。

 ちなみに最初に取材を始めた直後、社内から反発が出て2か月製作が中断されるが、再開の際に、放映前に社内試写会を開くこと、デスク会の取材の際は事前に許可を得ること等の条件を飲まされる。これも質疑応答の中で、この条件は会社側から出されたのではなく、取材再開を許可してほしければ、君らが考えて条件を出して考えろ、と言われたそうである。
 また、放映前の社内試写会は放映直前に行われ、放映後、再度意見交換会を開いたのだという。

 多分、このドキュメンタリーを「東海テレビにとって何の意味があるのか」と問う社内の声は、外部の「やっぱりテレビはフェイクか」という声と呼応するものであろう。というのはこのドキュメンタリーの一番最後に、土方プロデューサーが主たる取材対象である3名に取材意図を話している場面が流れるからだ。この部分が実はこのドキュメンタリーの最大の肝なのである。つまり、このドキュメンタリー自体の枠をメタレベルから明るみに出す効果を持たせているのである。ただこの部分は見方によっては、元々の演出意図通りに作ったフェイク・ドキュメンタリーではないか、という疑惑を抱く人もいるだろう。おそらく社内の反発は東海テレビが「セシウムくん」事件延長線上に、さらにフェイク体質の報道機関と見られるのではないか、という怖れからであろう。
 ただ私は、すでに書いたように、むしろ東海テレビの Fairnessを示しているように思われる。最後に付け加えられた部分も、決して演技などではなく、元々自分たちの取材過程も含めて撮影している中で出てきた素材だという。また最後の場面を付け加えた、土方プロデューサーの意図としては一つはドキュメンタリーとして「成立させる」ことを避けたい、つまり「いい話」で終わらせたくなかったという点、もう一点、「テレビの闇」を見せようとして、意外に「闇」の部分が少なかったなかで(東海テレビは意外とまだ報道機関として健全⇒だから視聴率がなかなか取れない)、むしろ、自分たちの手の内を晒すという選択をしたという。

 かつて本多勝一は『事実とは何か』で、いかなる価値判断から中立な「客観的」な報道などありえないと指摘していた。同様に番組として「成立させる」、つまり何らかのストーリーに落とし込むということは、あらゆる報道が何らかの価値判断から自由ではありえないということに近いのではないだろうか。その部分を明らかにしたという点で本作品は貴重だと言える。

 ちなみに放映バージョンは77分だが、その前に編集した100分バージョンがあるという。ディレクターとしてはそちらが決定版だと考えているということだが、DVD化して発売するにはもう少し社内で冷却期間を置く必要があるのではないかということであった。

東海テレビ「さよならテレビ」
http://tokai-tv.com/sayonara/

http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/event/%E7%AC%AC24%E5%9B%9E%E3%81%BF%E3%82%93%E3%81%AA%E3%81%A7%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%82%92%E8%A6%8B%E3%82%8B%E4%BC%9A-%EF%BC%86-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%9F


水島宏明 「さよならテレビ」東海テレビのドキュメンタリーが描く”矛盾” ハフィントンポスト 2018.10.11
https://www.huffingtonpost.jp/2018/10/10/goodbye-tv_a_23557398/

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