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zoom RSS 韓国映画『国家破産の日』

<<   作成日時 : 2019/01/05 16:24   >>

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 2018年11月末現地公開の韓国映画。1997年韓国IMF危機の内幕を描く。脚本は本作が脚本デビューらしい、オム・ソンミン、監督は2016年『スプリット』でウディーニ国際映画祭で観客賞を受賞したチェ・クッキ。

 1997年初め韓寶グループが不渡りを出し、それがIFM危機表面化の隠れた引き金であったが、まだ誰もそれが本格的な危機の始まりだということを知らなかった。だが、1997年8月以降、海外では韓国からの資金引き上げの流れが本格化する。その一方、韓国では国民所得一人あたり1万ドルを突破し、翌年の経済成長率を7%に予測するなど、先進国入りを誇る雰囲気にあふれていた。
 韓国人の誰もが韓国の経済成長の未来を信じる中、11月、韓国銀行総裁(クォン・ヘヒョ)は通貨政策課長、ハン・シヒョン(キム・ヘス)から、資金引き上げの量が莫大であり、政府の財政力ではもはや金融機関を支えきれないかもしれず、しかも、それが表面化するまでの猶予時間も切迫していることを知らされる。彼女は、それ以前から何度も通貨政策に問題があると警告する報告書を上げていたが、もみ消されてきたのだ。
 あわてて、ハンをつれて青瓦台に急行する総裁。青瓦台経済首席(オム・ヒョソプ)と会い、財政局次官(チョ・ウジン)、金融室長(キム・ヒョンモク)を招集して、遅まきながら対策に乗り出す。その席上でハン課長は国家破産まで1週間しかないと伝える。

 一方、金融企業に勤めているユン・ジョンハク(ユ・アイン)は、自社から海外企業が投資資金を引き揚げようとする動きに直面し、さらにラジオ番組で、あちらこちらから賃金の遅配、未払いや融資資金回収の延滞が生じている状況を知り、国の破産が迫っているのではないかと直感する。誰も金融危機が迫っているのを知らない中、ユンはいち早く会社を退職し、自分の投資で資産を増やしてきた顧客を集め、自分の投資事業の説明会を開いて、1週間以内に韓国が滅ぶので、韓国の無能と無知に投資しドルを買いあさると説明する。しかし、すぐにもウォンが急落しドルの為替価格が3倍になると説明する、一見「荒唐無稽」なユンの計画に、韓国経済の実情を知らない大半の顧客は背を向け、残った顧客は一人の老紳士(ソン・ヨルチャン)とオレンジに髪を染めてジーパンのいかにも「今時」の青年(リュ・ドクファン)だけであった。

 町工場を経営するガプス(ホ・ジュノ)は、今まで堅実に現金商売を行ってきたが、ガプスに対して融資をしたいという人物が現れ、その融資を元手に美都波百貨店に出店している店舗の権利を買わないかという提案を受ける。ガプスは非常に迷うが、妻に楽をさせたいという思いから、ついその提案に乗ってしまう。しかし...

 本作品は事実に基づいて脚色されているという。どこまで事実を反映しているのかは分からないが、韓国政府内の政策動向の対立をハン通貨政策課長と財政局次官の対立に象徴して描き、さらに、韓国経済の実情を批判的に見る視点をユン・ジョンハクらに、そして末端の庶民の苦しみをガプスに象徴させて描いている。

 この映画で描かれる政府部内での政策対立は、政府の能動的な経済・金融政策の役割を重視し、市場介入を辞さず、極力ソフトランディングを目指す方向(ハン課長に象徴) vs. 新自由主義的(ネオ・リベラリズム)でハードランディングをむしろ選好する方向(財政局次官に象徴)である。そして前者はIMFの介入を、日本などの友好国からの融資でなるべく回避しようとするのに対し、後者は素直にIMFに任せれば良いと主張する(ちなみにIMFは新自由主義的理念の元に運営されており、融資の条件として融資各国に新自由主義的な構造改革を要求する)。さらにIMFとの協議が決まった後も、前者は、協議中断・国家デフォルトを辞さずに(結局海外の融資主は国家がデフォルトを宣言することが最も恐ろしいことであるから)、IMFに対し交渉し、最大限IMから譲歩を引き出そうと主張するのに対し、後者はむしろ今回を韓国の構造改革の好機と捉え、積極的にIMF体制に協力しようと主張する。そして歴史的な現実は結局IMF全面協力派が勝ったということであろう。

 さらに、映画の中でハン課長はIMFが米国と協議し国益実現のために動いているのではないかと批判する。米国の財務省次官が12月に予定される大統領選候補者に対して(誰が大統領になっても良いように)IMFの要求を飲むようにと、覚え書きを取って回っているというのだ。
 この点もどこまで事実かは分からないが、韓国のIMF危機当時、日本政府が韓国政府救済のため通貨スワップを実施しようとしたものの、米国が制止して韓国にIMFに行かせるよう促したのは事実のようである1)。従って映画のこの表現は「アメリカ陰謀論」では片付けられない。
 当時、金大中が大統領に当選して、よくぞIMF体制下で構造調整を断行したな、と思ったものだが、もはやその路線は金大中が大統領になったとしても変えられないものだったということが、よく分かった。

 また、財政局次長は、韓国がIMF体制下に入っても、つけは中小企業に回して大企業は救済できると踏んでいたように描かれている。後任青瓦台経済首席(キム・ホンパ)に対し、大企業が中小企業に振り出した手形が不渡りになっても、免責させれば良いとのうのうと提案する。これも事実だとすればとんでもないことだが...

 ユン・ジョンハクの心理表現も印象深い。ユンは韓国政府が何の対策もなくIMFの支援にすがるだろうと冷静に予測はし、そこに懸けていたものの、いざ自分の予想が100%的中してしまうと複雑な気持ちに襲われる。オレンジ頭の青年が「やったやった」と素直に大喜びするのを見て、思わず殴りつけてしまう。韓国政府が無能だとは思っていたが、実際にここまで無能だったのかということを見せつけられると、素直に喜べない。むしろ内心ここまでだめであって欲しくなかったという思いにとりつかれてしまうのだ。

 いま、韓国は深刻な経済沈滞に覆われているが、せめてこの映画が2年前に公開されていたら、良い警告になったのに... と思われるのだが。

 ともあれ、いささか登場人物が全般的に類型的に描かれている欠点はあるものの、『1987』『タクシー運転手』と並んで、現代韓国史入門映画として推薦はできるだろう。またIMF危機を描いた映画としては最初であるようだ。

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 韓国のナムウィキの記述によると2)、事実経過としては、映画とは異なり、韓国銀行の方がむしろIMFによる救済を求め、政府/青瓦台はむしろなんとかIMF支援を回避しようと奔走したようである。またIMF危機の原因を過度に単純化しており、経済的考証が不足しているとの専門家の声も紹介している。またIMFを悪者として描いているが、政府による総合金融会社への安易な融資の横行(→バブル経済の大きな要因)や、海外からの参入を過度に規制した孤立経済などの問題点は、IMFによって半強制的に是正するか、それとも政府が自ら是正するかの違いでしかなかったとも指摘されている。この点は、確かにユ・シミンの『ボクの韓国現代史 1959-2014』(翻訳: 三一書房)でも、政府が財閥と結託して、いい加減な経営をやっていても政府が救済するような不健全な経済システムが存在し、そのあたりが問題視されていたことを指摘している。
 とはいえ、当時IMF危機の中で、政府やマスメディアによって、危機の原因は国民が安易に海外旅行に行くなど、安易に金を使うからだ、式のプロパガンダがなされた中で、本映画では、経済危機の主因は政府の経済政策や韓国の経済システムにあったことを伝えており、「国民が悪い」式のプロパガンダから抜け出すためには力になったという評価も紹介されている。

1) 「「人民元圏で生きる決意」を固めた韓国」『早読み 深読み 朝鮮半島』2018/3/2 日経ビジネスオンライン
https://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150302/278134/?P=4

2) https://namu.wiki/w/%EA%B5%AD%EA%B0%80%EB%B6%80%EB%8F%84%EC%9D%98%20%EB%82%A0

原題: 국가부도의 날
監督: 최국희
2018.11.28 韓国封切り
1:1.85 韓国映画 カラー
114分


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