クーリンチェ殺人事件のBlu-ray & DVDが遂に発売に!

 かつてLD および VHSは出ていたもののDVDの発売がなかった揚徳昌監督の『クーリンチェ殺人事件』4時間版のBlu-ray & DVDがクライテリオンから発売になった。

https://www.criterion.com/films/28596-a-brighter-summer-day

 この映画のLD中古で確か1万円近く出して買って密かに見ていたのだが、やはり今となっては画質がいまいち。暗い場面も多いしやはりBlu-rayでの発売を望んでいたが、ついにその夢がかなった。しかも画質に定評のあるクライテリオン盤である。薄暗い仄明るい場面も鮮明で、最高である。スコセッシのフィルム・ファウンデーションによってレストアされた原盤からBlu-ray化されている。

 この映画、かつては今は亡きシネカノンが配給権を持っていて、配給権切れ直前に有楽町にあったシネカノンの劇場で、「国内最終上映」と称していたのを見に行った記憶がある。

 ちなみに本作品はアメリカでは2011年まで上映されたことはなく、2011年におそらくこのレストア版が限定上映されたということである。

 なお、本作品が長年上映できなかったのは日本のある会社が出資しており、上映権を共有していたものの、その会社が倒産し上映権が、問題企業にわたったため、長年封印状態だった、という話をどこかで読んだ記憶があるが1)、この問題は解決したのだろうか。ただクレジットにはこの会社名がないので海外での上映には差し支えないのかもしれない。ただアメリカでは上映可能でも、日本では上映 & ビデオディスク発売不可能という事態はありうるかもしれない。

 ちなみにクライテリオンのBlu-rayディスクは2枚組。1枚は本編、1枚は付録映像で、付録映像には台湾ニューウェーブに関する2002年に製作されたドキュメンタリー、『Our Time, Our Story』が収録されている。ただし画質はVHSクオリティなのが残念。

 ただ、このドキュメンタリー、台湾ニューウェーブの内幕事情がいろいろ語られていて、なかなか面白い。臺灣ニューウェーブのバックグラウンドに中米の断交があり、米国映画が台湾市場に入りにくくなったこと。1980年代前半に、当時中映のマンネリを打破するために、無名の新人を起用して全く当たらないと思われた『光陰的故事』が異例の大ヒットになったことで脚光を浴びたこと。しかし、その後ニューウェーブ映画が続出することで、そのアーティスティックな姿勢が飽きられて、1980年代の半ばには台湾の映画観客動員数自体が減ってしまったこと。
 その後、香港映画の台頭、さらに台湾俳優が台湾で活動しても食べて行けず、香港へ流出するケースが相次いだこと、そして1980年代末に台湾ニューウェーブ界も侯孝賢派、反侯孝賢派に分かれて対立してしまったこと (そして楊徳昌は、おそらく反侯孝賢派の筆頭だったであろう)などの内幕が語られる。

 面白かったのは台湾の商業プログラムピクチャーの旗手として知られる (そして評論家から台湾ニューウェーブの芸術性に対比して、商業性の強い堕落した作品として貶められ、叩かれることの多い) 朱延平のインタビューで、彼は台湾ニューウェーブを敵だと思ったことは一度もないという。台湾ニューウェーブとはそもそも市場が違い、自分のような商業娯楽監督も台湾映画の多様性のためには必要な存在だと自負しているという。彼にとっての敵は香港の商業作品であって、台湾ニューウェーブではなく、また評論家から叩かれたほうが客の入りがよく、逆に叩かれないと客の入りが悪いという。ただその彼も台湾ニューウェーブに悔しい思いをしたのはただ一度、侯孝賢の『悲情城市』に観客動員数で完敗した時だけだという。


1) シネマヴェーラ・館主の独り言 参照
http://cinemavera.com/essay.php?page=30










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