『白日焔火』は天安門事件正当化?

画像 香港の映画評論家、庸生が刁亦男の『白日焔火』が1989年の天安門事件を正当化していると論評している。
http://www.inmediahk.net/2014052501

[以下の記述にネタバレ含むので未見の方は注意]

 彼によると、台湾女優、桂綸鎂演じる呉志貞が中国共産党を象徴しており、彼女の近づく男たちが民主派の闘士を象徴しているという。それは梁志軍が殺されたとされた1999年6月が、天安門事件(「六四事件」)の発生から10年後に設定されており、この殺人事件が天安門事件を象徴している。
 そして、映画のラストで"実際には"中国共産党を象徴する呉志貞が、民主派闘士を象徴する、体を要求してきたクリーニング店の顧客を殺していることが"明らか"になるが、それは監督が、天安門事件が共産党による自衛的性格の事件であると擁護しているのだという。そして民主派闘士を「性侵犯」に象徴することで醜化しているという。
 さらに呉志貞を追う、観客には正義の味方に見える刑事、張自力は、道徳的立場から天安門事件に反発しその解明を求める民主派人士を象徴しているという。
 張自力はセックスした後、呉志貞を告発する。これは張自力は元々呉志貞を司直に引き渡すことを決意しつつも呉志貞を欺くためにセックスをしたとも取れるし、張自力は決意を固めないまま、彼女との愛欲に溺れるが、結局彼女の感情を裏切って司直に引き渡したとも取れる。いずれにせよ、自分の利益のために彼女を騙すのである。このように張自力を女性を騙すような存在として描くことで、民主派人士もはやり中国共産党を侵犯し、さらに結局彼らの天安門事件の追及を求める「正義」も個人の私欲を満足させるものだということを示しているのだという。

 確かに、最初の事件が天安門事件の10年後の設定されているのは気になるし、気付かなかった点ではある。ではなぜ台湾女優の桂綸鎂が中国共産党の象徴になるのかという点、それから確かに最後、呉志貞は殺人を告白するのであるが、それは客観的事実でない可能性があるのではないか、つまり、彼女を救い出してくれるかに見えた張自力に裏切られたことによる絶望から来る、虚偽の自白だった可能性があるのではないか、という点で、庸生の解釈にはいささか疑問がある。

 実際、刁亦男の過去の2作、『制服』『夜車』とも、国家権力の持つ権威に振り回される庶民を描いており、張自力が権力の象徴でありえても、呉志貞が権力の象徴というのは考えにくいように思う。また『夜車』では、死刑になるとは知らずに夫を庇うために虚偽の自白をして死刑になる主人公の妻も出てくる。従って、今作では、前作で虚偽の自白をして死刑になった主人公の妻の側を発展させたとも見ることができるのではないか。

 もし、そうだとするとやはり張自力は権力の象徴であり、彼による「正義」の追求が、「裏切り」を通して達成されたと考えるならば、刁亦男監督は、やはり権力に対する疑問を提示していると見ることも可能なはずだ。

 とはいえ、天安門事件との関連は考えなければならない。

『白日焔火』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201411/article_2.html

『夜車』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200906/article_3.html

『制服』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201411/article_7.html

国内公式サイト
http://www.thin-ice-murder.com/

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