『Mail Order Wife』- アイディア秀逸! ブラックな笑いに満ちたアメリカン・インディー

画像 2005年サンタ・バーバラ映画祭で、最優秀インディー映画賞を受賞した作品。監督はハック・ボッコとアンドリュー・ガーランドの共同。DVDのカバーには「真実は小説より奇なり」とある。

 ドキュメンタリー映画作家のアンドリュー(Andrew Gurland本人)は、白人男性がアジア系の女性と結婚するため、結婚エージェントに依頼してアジア系女性を"調達"する"メール・オーダー・ワイフ"の実態を明らかにするため、結婚を希望していたニューヨーク近郊に住むスペイン系の男性で守衛のエイドリアン(Adrian Martinez本人)に資金提供して、"メール・オーダー・ワイフ"獲得の一部始終をドキュメンタリーとして記録することを開始する。

 エイドリアンはリストの中から美人で可愛い中国系のリチー(原麗淇、リチーは彼女の実際の愛称)という女性を"注文"することに決定。何度か手紙をやりとりした後、アメリカに呼び寄せることにする。結婚エージェントからの情報によると、彼女は幼いとき父親がマラリアで死亡し苦労しているということだった。
 空港に到着した足ですぐ市役所に行き、結婚の宣誓を済ませる二人。だが、中国から来たリチーにとって結婚は驚きの始まりだった。ろくに英語が話せないリチーはまず、エイドリアンから料理の仕方を習う。さらにエイドリアンは白い大きな蛇を飼っており、それに生きた鼠をえさとして与えなければならないことは彼女にとって大きな苦痛だった。
 さらに、エイドリアンは、彼女が十分理解できないまま彼女を産婦人科に連れて行き不妊手術を受けさせようとする。何かの検査だと思ってきたリチーは、中国人通訳からようやく真相を聞いて産婦人科を飛び出す。この彼女の受けたショックでドキュメンタリーの撮影は5週間中断した。
 5週間後、リチーはアンドリュー、ボッコたちを訪ねてくる。リチーはエイドリアンに恥ずかしいビデオを撮らされるのだと訴え、助けを求めに来たのだ。責任を感じたアンドリューは、とりあえず彼のアパートに彼女をかくまい、彼と恋人のメリット(Merritt Janson本人)のために食事を作りながら、将来ケータリング食堂で働けるような料理修行をして貰うことにする。
 8週間後、彼女の上がった料理の腕前を皆に披露して、彼女に仕事を紹介して貰おうと、アンドリューはホームパーティーを開く。皆、彼女の腕前に感心し成功裏に終わるかと思いきや、突然リチーはデザートの提供を拒否し、パーティは気まずく終わる。
 慌てて中国語の通訳(Deborah Teng)を呼んで彼女の真意を聞くと、アンドリューがリチーに「手を出し」てしまったにも関わらず、彼が彼女をちゃんとガールフレンドとして扱わないのが不満だということがわかる。
 翌朝、アンドリューはリチーに「手を出して済まなかった」と謝ると、彼女は"No Problem"と言い、それ自体は自分も好きだし結婚してくれれば何の問題もないという。アンドリューは「手を出し」ただけで結婚だなんて、と言い、彼女の自立のため料理の修業もして貰っているというと、リチーは仕事だけではグリーンカードに不十分で結婚が必要だと言い張る。
 結局、リチーはエイドリアンに連れ戻されることになってしまう。だがあきらめきれないアンドリューはエイドリアンの目を盗んでリチーに会い始める...

 ドキュメンタリー作家としてリチーの様子を記録しはじめるアンドリュー。だがやがて文字通りミイラ取りがミイラになり、自分が保護しコントロールしているつもりだったリチーに、アンドリューもエイドリアンも振り回されるようになる。その主客逆転の様が抱腹絶倒。同時に、アメリカ白人にひそむオリエンタリズム的構図や、取材者 VS 被取材者の権力関係が明らかになると共に、それがひっくり返され倒錯する様が痛快。当初取材者として安全圏の高みから事態を見下ろしてカメラを回していたアンドリューは、やがてその優越的な地位を失い、余裕なき当事者としてあっぷあっぷするようになる。
 そして、映画の最後の最後で、映画の観客も巻き込んだ最後の大逆転に、観客もあっけにとられることになる... 後は見てのお楽しみ。

 とにかくアイディア秀逸なブラックコメディ。このまま行くと原一男の『極私的エロス・恋歌1974』を超えるか... と思われたのだが... ともあれこの作品に関しては余り情報を探らないで極力白紙の状態でご覧になることを強くお薦めする。この記事でもこの作品の核心部分はネタバレしないように注意して書いたつもりである。

 本作品はIMDBによれば2005年4月から8月にかけて劇場公開されたようだ。国内未公開。
 監督のハック・ボッコはIMDBによれば1992年以来何本かの短編映画を撮っており、本作が初長編映画のようだ。その後2010年に"The Mike Bocchetti Show "と"The Virginity Hit"の2本の作品を撮っている。
 アンドリュー・ガーランドの方は1971年生まれ。1998年にドキュメンタリー"Frat Hause"、2002年に長編劇映画"Cheats(カンニング)"を撮り、本作。そして2010年にやはりボッコと組んで"The Virginity Hit"を共同監督している。
 因みに"The Virginity Hit"は童貞喪失を目指す高校生のコメディのようで、大手コロンビア・ピクチャーズからリリースされた。

原題『Mail Order Wife』監督:Huck Botko, Andrew Gurland
2004年 カラー アメリカ映画 92分

DVD(US盤) 
発行: DEE/CRF Productions 発売:Visual Entertainment 画面: NTSC/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1
英・中国語 本編:92分 リージョンALL 字幕: 西(On/Off可)およびClosed Captionで英語 片面一層
発行年2005年10月 希望価格 $9.99



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