『セデック・バレ』 - 新台湾ナショナリズムを象徴する大ヒット映画 (2)

画像第1部「太陽旗」あらすじ
 第1部のタイトルとなっている「太陽旗」とは日本軍旗である旭日旗のこと。

 映画は冒頭霧社蕃とブヌン族カンタバン蕃との戦闘から始まる。危ういところを切り抜けて、相手の首を見事出草し、自分の村マヘボ社へと帰って行く青年。その功で彼は勇者の証である入れ墨を入れて貰う。それが若き日の、後のマヘボ社頭目、モーナ・ルダオである。
 一方1985年、日本は日清戦争に勝ち台湾の割譲を受け、日本軍は客家を中心とする武力抵抗を蹴散らしながら台湾に進駐する。そして霧社のふもと埔里まで日本軍に制圧される。
 その頃、そうとは知らずに山で猟に励むモーナ・ルダオたち。山の麓の漢人の交易所で獲物と穀物を交換にくると、タウツァ蕃トンバラ社の一行と一触即発に。交易所長の制止でその場では争いにならなかったものの、モーナ・ルダオたちは帰り道でトンバラ社一行を待ち伏せする。だが幸いまだ少年だったテム・ワリスはモーナ・ルダオの銃口を逃れる。

 やがて1897年、森林軌道敷設調査のため霧社方面に向かった深堀大尉一行はセデック人の出草の餌食に。それを受けて、日本軍は蕃人との交易封鎖令を出す。そして1902年蕃人征伐に向かった日本軍は人止ノ関でセデック人の待ち伏せに遭い惨敗する。日本軍は蕃人との直接対決を避け、セデック人と対立するグループを捜す。
 そして1903年、ブヌン族カンタバン蕃に、セデック人と交易すると見せかけてセデック人を誘わせ、彼らを酒に酔わせたところで襲わせる。大きな損害を被るセデック人。だが、モーナ・ルダオを酔いつぶすことはできなかった。
 それを受けて、日本軍が侵攻してくる。村を守るためにマヘボ社頭目でモーナ・ルダオの父ルダオ・ルホを筆頭にマヘボの男たちは日本軍と戦う。だがルダオ・ルホは戦死。父の遺体を背負ってモーナ・ルダオがマヘボの村に戻ってくると、そこには旭日旗が既に掲げられていた。
 マヘボ社帰順式で日本人をにらみつけるモーナ・ルダオ。そして家に飾っていた自分たちが刈った首を日本人に捨てさせられる際、モーナ・ルダオは思いっきり抵抗するが日本兵に抑えられてしまう。

 それから20数年... 日本人により結局山地は制圧され、セデック人は日本人の支配下に入っている。山奥の木の切り出しにセデック人を安い賃金でこきつかうタナトゥヌ(日本人)たち。山奥からの伐採現場から貯木場のある霧社までの道は険悪で、命がけで切り出した木を運ぶセデック人たち。そんなセデック人を、木を引きずって運んできた、川に落としたと非難しては体罰を加える日本人。セデック人は徐々に日本人に対する恨みを募らせていく。そんな傲慢な日本人の筆頭が霧社警務主任、佐塚愛祐であった。

 一方、先住民の中で警官になるものもいた。それがホーゴ社出身の花岡一郎、二郎だった。労働が終わって安酒を飲んでいるモーナ・ルダオの息子、ただお・モーナらを中心とするセデック人に、時間の無駄をするなと声をかける花岡一郎。そんな一郎にセデック人たちはお偉い日本警官様、と皮肉を飛ばす。一方師範学校を出た花岡二郎は子供たちに日本語を教えていた。

 一方マヘボでは少年パワン・ナウィが中年となったモーナ・ルダオに、頭目は昔は勇者なんだって、と声をかける。今も勇者だと答えるモーナ・ルダオに、パワン・ナウィはなぜタナトゥヌをやっつけないのかと問う。だが、モーナ・ルダオははやる人々の気持ちを押しとどめるばかりだった。彼は日本人の危険性を知り抜いていたのだ。

 だがそのモーナ・ルダオも、村の結婚式に、タダオ・モーナが酒を勧めた日本人警官吉村が狼藉を働いたことをきっかけに、ついに覚悟を固める。死を決意して...

 モーナ・ルダオが日本人襲撃を決意したことで、マヘボ社から霧社蕃の残る11の部落に伝令が走る。結果的にマヘボ社を含む6社、約300人が蜂起に参加することに決まる。だが、最大のパーラン社頭目ワリス・ブニは、若手が血気に走っても、決して蜂起参加を許そうとしなかった。彼は、日本に行ったことがあり、日本人の力を熟知していたからだ。

 一方、警官となった花岡一郎、二郎は、モーナ・ルダオらから、お前たちは死んだら日本の神社に入るのか、それとも我々とともに虹の橋を渡って祖先の国へ行くのかと迫られ、苦悩する。

 そしてついに運命の、霧社での運動会の日がやってくる...

第2部「虹彩橋」
 霧社の襲撃を終えて、勝利に沸き、酒を酌み交わすセデック人の若者たち。だが、モーナ・ルダオは言う。今回は、通常の出草とは違う。通常の出草なら、恐ろしい思いをして村に帰れば、皆から英雄として歓待してくれる。だが、日本人の数は河原の石より多く、彼らの力は強大だ。彼らは必ず報復に来る。だから、今回はいかに我々が立派に死に、虹の橋を渡って祖先の国に行くのか、それが問題なのだ、と。
 そして、一旦村に引き上げて、日本人の攻撃に向けて対備するよう命じる。
 
 他方、セデック人の襲撃から命からがら逃れた日本人警官は辛うじて霧社下流の、眉渓駐在所に駆け込むことで、日本軍側に事件が伝わる。

 一方、霧社からさらに山奥に入った屯原駐在所。ダウツァ蕃トンバラ社の頭目、テム・ワリスと巡査、小島源治が仲良く談笑しているところへ、霧社蕃の蜂起を知った村人が駆けつけ、我々も蜂起しようとテム・ワリスに訴える。だが、テム・ワリスは小島は良い人間で、何の恨みもない、なぜ小島を殺さなければならないのかと彼をかばう。
 だが、蜂起を訴える人々は、日本人に友達なんかいない、奴らを殺せと訴える。そこへ埔里の本部から霧社での蜂起と、妻子の死を伝える電話が鳴る。蜂起派の村人は、小島に電話に出てみろ、どうなるか、と脅すと、小島もお前たちが俺を殺すというのなら、この場で侍らしく潔く腹を掻っ捌くと言う。だが、俺はお前たちにひどいことをしたことはないではないか、それに、お前たちはモーナ・ルダオたちに侮辱され続けていたのではないのか、なぜ彼らに加勢する必要があるのか、と説得にかかる。

 埔里では、先住民が蜂起したことが知らされ、埔里まで攻めに来るかも知れないと、大パニックに。逃げ惑う、日本人と漢人たち。そして日本軍は討伐対の派遣を決定。メインとなる、鎌田少将率いる討伐隊は森林軌道をたどって、人止めの関から霧社へ、さらに、姉妹ヶ原・万大方面からと、東方の花蓮から能高山脈を越えて警察隊の派遣も決定される。

 メインの討伐隊はかつて日本軍が壊滅させられた人止めの関の手前でキャンプを張り緊張の一夜を過ごす。だが、散発的な先住民の攻撃はあったものの大過なく過ごす。翌日はほとんど攻撃を受けることなくすんなりと霧社へ。討伐隊は、霧社にはいるとモーナ・ルダオたちの猛攻を受けるものと覚悟していた。だが、いざ霧社に入るとそこには、遺体以外何もなく、人っ子一人見当たらなかった...

 霧社から奥に入ろうとする討伐隊は、原始林の中でセデック人たちの縦横無尽の攻撃に翻弄され続ける。そして、セデック人たちは、霧社へでの決戦に備えていく。一方マヘボの女たちは、男たちが狂った、と嘆きながらも、男たちが後憂なく戦えるように、自ら命を絶つことを決意して村を出て山の中に入っていく。それはセデックに伝わる、死んだら虹の橋を渡って祖先の国へ行きそこで家族たちとともに憂いなく暮らせる、という観念から来るものでもあったのだ。森へ向かう女たちの一行の中にモーナ・ルダオの娘、マホン・モーナの姿もあった。
 また、先住民初の警官となった花岡一郎、二郎はセデックと日本人の挟間に立たされてどうにもならず、自栽を決意する。花岡一郎は遺書を家の壁に書きつけ、森へ入っていく。そこで妻子の首をかき、自らは切腹する。そしてその現場に居合わせた二郎は、一郎を介錯すると、自らは木に縄をかけ首を吊る。
 その一方で身重だった二郎の妻初子ことオビン・タダオは、まさか日本人は身重の女まで殺しはしないだろうとの二郎の説得で蜂起しなかったパーラン社へ逃れる。

 そして、ついに決戦の日がやってくる...

本記事、以下に続く
http://yohnishi.at.webry.info/201207/article_5.html

セデック・バレ関連地図

画像


※参考資料: 『日治時期五万分之一 台湾地形圖新解』,2007,上河文化(台湾)
     柳本道彦, 1996,『台湾・霧社に生きる』,現代書館
     ピホワリス, 1988,『霧社緋桜の狂い咲き』,教文社
     邱若龍, 1993, 『霧社事件』,現代書館
※○のついた社(集落)は霧社事件蜂起集落、赤字はセデック/タイヤル族中霧社蕃と対立or不仲だった集落。緑字はブヌン族集落。
※ x は警察駐在所




原題『賽德克·巴萊』英題『Warriors of the Rainbow: Seediq Bale』監督: 魏徳聖
2011年 台湾映画 カラー 第一部太陽旗 144分/第二部彩虹橋 132分/国際版 154分

DVD(台湾版)情報
発行: 中芸国際 販売: 得利影視(台湾) 画面: HD1080p/16:9(1:2.35) 音声: Dolby5.1 セデック・日本語 本編: オリジナル144+132分 国際 154分
リージョンALL 字幕: 中/英 片面二層(オリジナル,特典,国際盤を含む3枚組) 2012年4月発行 希望価格NT$1550

前回記事
http://yohnishi.at.webry.info/201207/article_3.html

『一八九五乙未』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200904/article_10.html

「霧社事件」物語の生産、利用、そして和解? 阿川亭(台湾・東海大学日語日文系サイト)
http://web.thu.edu.tw/mike/www/class/GS/GS-Project/yama/mushajiken.html

2013.2付記
『セデック・バレ』2013春国内公開決定
日本語公式サイト
http://www.u-picc.com/seediqbale/








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