『American Fusion』- アジア系米国人ラブ・コメディ

画像 2005年のカルフォルニアが舞台となったアメリカ映画。息子もいるある中国系アメリカ人の中年女性の結婚を巡るドタバタをテーマにしたコメディ。様々な文化的摩擦状況を笑いのネタにしている。

 イヴォンヌ(Sylvia Chang)は、50代を目前に控えた台湾から渡ってきた移民2世の女性。中国系のコミュニティーペーパーで記者兼営業をやっている。だが彼女の営業成績はなかなか上がらず、社長(Pat Morita)から目をつけられている。彼女は母(Lang Yun)、息子、妹夫妻とその息子の大家族で暮らしている。イヴォンヌはもう50代を目前に控えているものの、長女として母親の面倒を見ざるを得ず、しかも母親からは、いつまでも"マイ・カンガルー"と呼ばれて子ども扱い。全く頭が上がらない。息子のジョシュア(Randall Park)は28にもなるのに定職に就かずぶらぶらしているのも悩みのタネ。
 妹のジュリエット(Hira Ambrosino)は何でも完璧主義者。今はコントロールの効かない自分の息子スティーブをコントロールしようと必至。だが彼はプロレスに興じてみたり男性ヌードモデルになってみたりと、母親に敢えて反抗している。
 いささか血の気の多い弟のトニー(Collin Chou)は中華レストランを経営。彼の悩みは妻のスージー(Susan Chuang)との間に子どもができないこと。母親から家族の跡継ぎになる男の子を産めと厳命を受けて、空中で逆立ちしながらセックスまでしてみるものの効果はない。
 そんな彼女は社長から、新しく出店する歯医者から広告を取ってこいと厳命を受ける。しぶしぶその歯科医、ヒスパニック系のホセ(Esai Morales)の所に向かうが、彼女のミスで彼をびしょ濡れにしてしまい、広告の出稿は断られる。
 やむを得ず次のターゲットとして、配管工に広告の出稿をさせようと、彼を取材するが、なんと彼が仕事に向かった先は、あのホセのクリニック。仕方なくそのままついて行くが、再婚相手を探していた配管工は取材先で彼女にセクハラに及ぶ。それを止めようとしたホセとすったもんだに。
 だが、災い転じて福。ホセはイヴォンヌに関心を持ってくれるようになるとともに、広告の出稿も快諾してくれた。やがて二人の距離が縮まっていくが、次の問題は家族だった...

 本作はアメリカのインディペンデント映画であるが、台湾出身で香港を中心に広く活躍しているシルビア・チャン(張艾嘉)が主演。中国人コミュニティのもつ独特の習慣や人種的偏見が、他のコミュニティ(ここでは主にヒスパニック系コミュニティ)に出会ったときの、文化摩擦が主なテーマ。
 例えば母親は、背骨を折ってしまったとき、主治医がリーだと聞いて中国系だと思って安心するが、家族は韓国系かも知れないと言う。ところが実際に出てきたのは黒人。慌ててセカンドオピニオンをと向かった先はあやしげな漢方医。だが彼もこの地域ではDr.リーが最高だと太鼓判を押す。
 あるいは中華民族の男の子への固執ぶりや、子どもをコントロールしないと気が済まない(中国系女性は特に)性向。そして異人種に対してオープンなヒスパニック系の家族に対して、あくまでもクローズドな中華系家族。
 そんな中、孫たちの世代(第3世代=主人公の子どもの世代)はもはや中国語も話せず完全にアメリカ人。それが中華系ファミリーの中のモラルと激突する。中華系の家族にすれば問題児である孫たちではあるが、しかし祖母を気遣う視線は温かい。

 そんな西海岸らしい人種ごちゃ混ぜのAmerican Fusion状況を描いたラブ・コメディ。『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』がギリシャ系家族であれば、その中国系家族版といった趣。

 なお、本作は『ベスト・キッド』シリーズで有名だったパット・モリタの出演遺作。ジュリエット役のヒラ・アンブロシノは、名古屋出身の日本人で本名タカヤナギ・ヒロコ(漢字名不詳)。TVドラマを中心にカルフォルニアで女優として活躍しているようだ。またワイヤーアクション監督として、日本人の小原健がクレジットされている。また、息子のジョシュ役のランドル・パクは韓国系で脚本にも関わっている。カリフォルニアのアジア系米人コミュニティーが力を合わせて作った作品と言えよう。

 本作はハワイ国際映画祭で観客賞を受賞している。

 監督&脚本のフランク・リンはUCLA卒業。IMDBのデータによると、本作が初長編作であるほか、いくつかのTVドラマや映画の企画に参画している。本作の後の監督作として2010年『Hysteria』(同年に同タイトルの映画あり)の他、現在製作中が2本。

 フランク・リンへのインタビュー記事によると1)、彼がこの映画を思いつくようないくつかの出来事があり、その一つは彼が黒人の大男の友人と通りを歩いていると、人々が皆彼らを避けるのに気づき、見た目の影響について考えるようになったこと。
 その一方、サンフランシスコにて母と出かけ、二人で中国語で話していると、黒人のぼろを着て臭いのきついホームレスの男が近寄ってきて、なまりのない中国語で二人に話しかけた。母親はびっくり仰天して飛び上がる程だったが、話を聞くと彼は10年間台湾にいてそこで中国語を学んだという。彼は教師だったのだ。そこから見かけで人は判断できないと気がついた。それらの経験が本作を考えつくきっかけになったという。
 また映画のエピソードは監督らの実体験が反映されていて、監督の母親も離婚しながら息子を育て、いつも息子をかばっていてくれていた。また共同脚本で俳優としても出演しているランドル・パクはガールフレンドが黒人だったが、両親の黒人の偏見から長い間、自分の彼女は韓国系だと偽っていたという。そして中国語が流暢な黒人女優のキャスティングも、パクが見つけてくれたという。

1) Meniscus Magazine 2006.7.16日付 "Interview With "American Fusion" Director Frank Lin By Yuan-Kwan Chan" http://www.meniscuszine.com/issue16/aaiff_2006/american_fusion_20060716/

原題『American Fusion』監督: Frank Lin
2005年 アメリカ映画 カラー

DVD(US盤) 
発行・発売:Image Entertainment 画面: NTSC/16:9(1:1.78) 音声: Dolby5.1/2 英・中国語 本編: 94分
リージョンALL 字幕: 英/西(On/Off可) 片面二層 発行年2009年1月



他のアジア系アメリカ人コミュニティー映画 映画評

『Big Dreams Little Tokyo』
http://yohnishi.at.webry.info/201205/article_1.html

『Long Life, Happiness and Prosperity』
http://yohnishi.at.webry.info/201202/article_7.html

『Yellow』
http://yohnishi.at.webry.info/201003/article_15.html

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