海外盤DVDでしか見られない日本映画(3) - 『黒い太陽』(1964)

画像 日活、蔵原惟繕監督の1964年作品。蔵原惟繕監督といえば、裕次郎や浅丘ルリ子の出るプログラムピクチャーの監督というイメージがあるが、どうしてどうしてこんなとんがったアヴァンギャルドな作品も作っていたのである。
 クライテリオン盤のジャケット解説には、本作は彼の『狂熱の季節』、大島渚の『太陽の墓場』鈴木清順の『肉体の門』と並ぶ、アプレゲール日本を描いたとんがった(extreme)黙示録的映像作品と説明されている。フランス、ヌーベルバーグの影響の濃い作品群と言えるだろう。

あらすじについてはこちら(Goo映画『黒い太陽』)
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD18775/

 当時バリバリのアヴァンギャルドだった黛敏朗が音楽監修を行い、ビーバップスタイルを初期から取り入れたことで有名なジャズのマックス・ローチ・カルテットがわざわざ日本映画である本作のためにオリジナルサントラ用に演奏を吹き込んだという。一種の音楽モノ映画としても見ることが出来る ...というより、むしろ映像のついたモダンジャズと言うべきか。

 黒人ジャズミュージシャンに入れ込んでいるメイこと明(川地民夫)が、初めて出会う黒人である米軍脱走兵ギル(Chico Roland)と出会ったカルチュラル・ギャップ、コミュニケーション・ギャップをユーモラスに描きつつも、やがてその二人の間に生まれてくる絆を描く。

 ちょうど欧米人が日本人を見れば皆柔道ができるのだと錯覚しがちなように、明もギルに初めて出会って、黒人ならみんな音楽=ジャズができるもの、すくなくともジャズ音楽を愛好するものとのステレオタイプで決め付けるが、もちろんそんなはずはなく、英語も出来ない明はギルの前に空回りするばかり。
 明にはギルを助けたいという思いはあるのだが、それがギルの思いともかみ合わないし(そもそも映画の中ではギルは理解不能なエイリアンとして登場する)、またギルを助ける実質的な力もない。結果的に明はギルをピエロとして引き回すことしか出来ない。
 だが、そんな的外れながらも真摯な明の思いは、やがてギルにも徐々に通じるようになっては行くのであるが、だが所詮、ETはETの世界の住人なのである...

 そんないささか狂気を含んだような(それは単に明だけではなく、日本全体がどこかにそんな狂気じみたエネルギーを含んでいたのだ)、破茶滅茶なコミュニケーションの不協和音を、いかにも当時のアヴァンギャルドであるモダンジャズの不協和な調べに乗せて描いた作品。本作はどちらかといえばシネフィル or ジャズ愛好家向き。

 ところで本作は国内ではビデオディスク化されておらず、米クライテリオンの廉価盤エクリプスシリーズ28、蔵原惟繕の歪んだ世界(The Warped World of Koreyoshi Kurahara)DVDボックスセットの中の一枚。サントラのみ国内盤CDが出ている。このボックスセットは5枚組みだが、そのうち3作は蔵原の国内未ビデオディスク化作品(『黒い太陽』『ある脅迫』『狂熱の季節』)。

 ところで、本DVDの画質だがクライテリオン盤としてはいまひとつ。輪郭線のゴーストもあり、解像度的にも甘め。このあたりは日本側から提供された素材の問題か。

原題『黒い太陽』英題『Black Sun』監督:蔵原惟繕
1964年 日本映画 モノクロ 8巻 2404m

DVD(US盤)情報
発行・販売:Criterion Collection 画面: NTSC/16:9(1:2.25)[本作] 音声: Dolby1 日本・英語 本編:95分[本作]
リージョン1 字幕: 英(On/Off可) 片面一層 5枚組 2011年 8月発行 希望価格$69.95

「黒い太陽/狂熱の季節」サントラ紹介(アヌトパンナ・アニルッダ)
http://d.hatena.ne.jp/anutpanna/20070312/p1

DVD Beaver "The Warped World of Koreyoshi Kurahara"
http://www.dvdbeaver.com/film3/dvd_reviews54/warped_world_of_koreyoshi_kurahara.htm



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