『Snow Flower and the Secret Fan』 - リサ・シー代表作の映画化

画像『スモーク』『ジョイラック・クラブ』『チャイニーズ・ボックス』などで知られる香港出身中国系アメリカ人ウェイン・ワンの最新作。李冰冰、および韓国女優チョン・ジヒョンが主演。原作は中仏混血のリサ・シー(パリ生まれ、ロサンジェルス育ち)の同名小説でこの小説は彼女の代表作。

 現代の上海。中国の銀行に勤務するニナ(李冰冰)はニューヨークへの転勤に指名される。そんな折、義姉妹「老同[ラオトン]」関係にあるソフィア(チョン・ジヒョン)が交通事故にあったとの連絡が...

 ソフィアは在韓華僑の娘。彼女の母が亡くなり、父が上海女性と結婚したのを期に、韓国から上海に移ってきた。ニナはソフィアと同い年であったが、中国語が出来ない彼女の中国語家庭教師役を務め、彼女と義姉妹関係に。ソフィアの家は伝統的に女文字「女書」を伝えて来ており、ニナはソフィアから女文字を習って、彼女と扇に書いた女文字で秘密の手紙をやり取りする仲に。
 だが、ソフィアの父が投資に失敗。まもなく父は急死してしまう。ソフィアは母語が韓国語であり、中国語が不得意なこともあって学校の成績が芳しくない。そのため大学受験を控えていたものの、直前になって受験から逃げ出してしまう。そんなソフィアを見たニナは、ソフィアの名前で替え玉受験する。
 そのことで、当然ニナもソフィアも不正受験として失格となり、3年間の受験を禁止されてしまう。継母ともうまくいかなかったソフィアは結局韓国に戻ることになる。

 今、ソフィアは上海で女文字の展覧会を開こうとしていた。だが肝心の資料が見つからない。ニナは昏睡状態のソフィアに代わって彼女の荷物からその資料を探し出そうとする。そのなかに、ソフィアが書いていた、彼女の祖先に関する原稿が出てくる。

 19世紀中ごろの中国。同年同月に生まれた二人の女の子が義姉妹関係を結んだ。それは百合(李冰冰)と雪花(チョン・ジヒョン)。雪花は女文字を伝える名望家の生まれ。そして百合は貧しい家の生まれであった。だが義姉妹関係を結んだことで二人は扇に書かれた女文字で手紙をやり取りする関係に。
 百合は完璧な纏足のおかげで名門の家に嫁ぐことが出来た。だが、それは決して幸せな生活ではなかった。家の中のことは何もかも舅、姑によって決められ、百合には自由がなかった。何よりも辛いことは姑によって雪花と会うことを禁じられたこと。
 だがやがて舅、姑が死に、百合はその家の女主人となる。ようやく彼女は自由を得たのだ。自由を得た彼女は、雪花が嫁いでいた家に彼女に会いに行く。だが、雪花は、纏足が美しくなかったため、格下の肉屋の男の家に嫁いでいて、夫の奴隷のように暮らしていた。
 雪花が久しぶりの旧友に夜遅くまで語り合いたいと夫に訴えても、早く寝台に来て俺の夜伽の相手を勤めろとのつれない返事。だがその翌日、太平天国の乱が勃発する...

 女文字を媒介に2つの時代にまたがる、2組の女同士の複雑な友情が描かれる。2組の女たちは時代は異なるものの、似たような関係にある。そしてどの組も、相手の幸福のため自分の真情を隠し、それが相手から誤解を受けてしまう、そんな秘められた友情の悲劇が描かれる。
 やや優等生的な作風ながらも、自分の真の気持ちを隠してまでも相手の幸福を願う女同士の友情が切なく描かれた作品。ただ、韓国女優チョン・ジヒョンを起用した必然性は良く分からない。そもそも母語が韓国語で、ニナとは英語で話しているソフィアがなぜ女文字を伝承できたのか、説得力が欠けるように思う。それにチョン・ジヒョン、中国服姿が似合わない。

 ちなみにAmazon.comの評を見ると、この映画の現代編の部分は原作小説にはまったくない付加であり、原作を先に読んでいる人ほど本映画に対する評価は低い。また時間の交錯もかなり激しいので、時間軸の交錯で混乱する人は事前に設定を確認しておいたほうが良いかもしれない。原作小説とは別物と考えるべきだろう。
 おそらく現代と過去の交錯する構成にしたのは、「老同」という義姉妹関係になじみの持ちにくい欧米の観客に対し、現代の女の子同士の友情を絡め、その比喩で語ることで理解を深めようという監督の仕掛けであろう。映画的には、時間軸の交錯で混乱しない方であれば、それなりに面白い試みとして受容することができると思う。ただ、原作の味わいに先にふれてしまった人にはそれが逆効果に働いた、ということなのであろう。また、チョン・ジヒョンの起用は中華圏以外への東アジアへの波及効果を狙ったためと思われるが、先も述べたようにこれは映画の説得力を薄めてしまっているように思う。

 なお、筆者が入手したのは香港盤DVD。しかしIMDBのランニングタイムを見ると、アメリカ版120分とあり、一方香港盤DVDは104分と16分短縮になっている。香港盤よりも米国盤の方が良いかもしれない。なお香港盤DVDの解像度は比較的輪郭強調もなく良好だが、片面一層であるため、全般的に多少全般的なテクスチュアに荒れがある。
 米国盤にはBlu-rayもある。

原題『Snow Flower and the Secret Fan』中国題『雪花秘扇』監督:Wayne Wang
2011年 アメリカ=中国映画 カラー 120分(米国上映版)

Lisa See 公式ページ
http://www.lisasee.com/


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