『Never Forever』 - 韓国人監督が米国で撮った異文化摩擦がらみの三角関係を描いた映画

画像 韓国人映画監督、キム・ジナがアメリカで撮影した作品。在米僑胞と結婚したアメリカ白人女性の心の彷徨を描いた作品。

 ソフィア(Vera Farmiga)は、成功した弁護士である韓国系米国人アンドリュー・リー(David Lee McInnis)と結婚している。彼女は夫を愛しており、傍目には何不自由ない生活。しかし子供だけはいなかった。だが彼の親族は、典型的な韓国人らしく、早く子供を持つよう精神的プレッシャーをかけてきて、彼も子供、しかも男の子を強く望んでいる。不妊治療に通いながらもソフィアは精神的に窮地に追い込まれる。
 彼女は、クリニックのハンソン医師(Marceline Hugot)に、夫に内緒で精子提供を受けて妊娠したいと相談すると、それはまず夫とよく相談してから決めるべきことであり、馬鹿なことを言うなと一喝される。実は彼女は今の夫と結婚する前に妊娠中絶経験があり、彼女が妊娠しないのは夫のせいである可能性が高く、このまま不妊治療を続けると夫を傷つける可能性が高いと心配していたのだ。
 すごすごと病院を引き上げようとする彼女に、夫に似た一人のアジア系の男、ジハ(ハ・ジョンウ)の姿が映った。彼は、精子提供のアルバイトに来たようなのだが、彼の滞在ビザが切れ、不法滞在状態になっていることを理由に、提供を拒まれた模様。すごすごと病院から出ようとする彼に、ソフィアは声をかける。「アルバイトしませんか?」
 ソフィアは男が韓国人であることを確認すると、男の名前も聞かずに定期的に妊娠するまでに男とセックスする契約を結ぶ。夫のために決して男に対して情を与えることをするまいと決意するソフィア。だが、彼女の毛布が古くなっているとの指摘に、彼女のために無理して布団を新調したり、彼女を米国に呼び寄せようと、一人働きに来たものの、成功せずに断念するばかりか、彼女ともうまくいかなくなっている模様を見てソフィアは徐々に心動かされてくる。

 今まで韓国人監督(在米僑胞を除く)が米国で映画を撮影してもあくまで韓国人からの視点から撮られたものであり、米国で撮られた韓国映画という範囲を出ていなかった。例えばロス暴動を扱った『ウェスタン・アヴェニュー』しかり『ディープ・ブルーナイト』しかりである。
 それに対し、キム・ジナ監督の本作品は、ストーリー的にはよく言えば映画のドラマトゥルギーのお作法をよく守ったいささか優等生的な作風、悪く言えば、途中でストーリーが読めてしまう側面はある。従ってストーリー面だけで評価すると凡庸な作品という評価もありうる。しかし、この作品のコアはストーリーよりも異文化間の価値観の違い、摩擦の狭間の中で、相手を思いやろうとする心遣いが、本来のコンテキストを外れて思わぬ方向へと向かってしまう結果引き起こされる、一人の女性の心理的葛藤の描写であろう。
 特に、韓国人による視線の範囲にとどまらず、白人女性の視点(製作者からすれば異文化側の視点)から韓国人を描くとともに白人女性の心情を描写したという点で、米国で撮られた韓国映画史上画期的な作品と言える。言わば韓国人でありながらも、非韓国人からの視点を理解して韓国人の姿を異化し描けたという点で特筆に値する作品。
 音楽も雰囲気が良く、ピーター・グリーナウェイ作品などに作品を提供するマイケル・ナイマンの音楽に似ているな... と思って映画終了時にクレジットを見たら、何とマイケル・ナイマン本人による本作品のための書き下ろし音楽。その点でも製作側の相当な意気込みが感じられる。
 但し、IMDBに上がっているネット評を見ると、英語非ネイティブの俳優たちのセリフ回しはシェークスピア劇などの古典舞台劇を思わせるもので、英語ネイティブの観客から見るとかなり違和感のあるものらしい。このような問題は台湾出身のアン・リー(李安)の初期のALL英語作品にも見られた問題点であるそうであって、英語非ネイティブの監督の抱える共通の問題点であるそうだ。そのせいか、本作はフランスのドーヴィル・アメリカ映画祭で批評家賞を受賞しているものの、英語圏では受賞なし。
 製作側の意気込みにも拘らず、韓国における観客動員数は82,215人(Cine21データ、2007年7月1日現在。韓国封切り日は同年6月21日)。

 監督のキム・ジナは1973年生まれ。ソウル大で西洋画を学びアメリカ、カラーツにて映画を学ぶ。今まで主として女性のアイデンティティと体に関する論点を扱ったドキュメンタリーおよび実験映画を作り続けてきた。2002年、拒食症治療中の自分自身の生活を記録した『キム・ジナのビデオ日記』がベルリン映画祭、バンクーバー映画祭等で上映され国際的に名を知られるようになる。作品には他に、2003年『その家の前』(ドラマ)、2009年の『ソウルの顔』(ドキュメンタリー)等がある。

 フランス盤DVDは97分となっているのでPAL4%スピードアップがある模様。おそらくNTSCからPALへ変換する際に多少輪郭強調が起こったようで、やや解像度甘めの印象。但しコントラスト、色彩は問題ない。英語字幕はない。これ以外にNTSCのアメリカ盤がある。

原題『Never Forever』韓国語題『두번째 사랑』監督: 김진아
2007 年 韓国=米国映画 カラー 101分(韓国劇場公開版)

DVD(仏盤) 
発行: MK2 発売:TF1 Video 画面: PAL/16:9(1:1.85) 音声: Dolby2 英・韓国語 本編:97分
リージョン2 字幕: 仏(On/Off可) 片面二層 発行年2010年11月 希望小売価格 26 €



本作品は『情事 セカンド・ラブ』の邦題で、2012年6月国内DVD化


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