静かでじんわりと良い中国の法律映画『再生の朝に』

 以前本ブログで紹介した『馬の背上の法廷』を撮った劉傑(リウ・ジエ=簡体字表記: 刘杰)監督の作品で、初の日本劇場公開作。

本作のあらすじはこちらを参照。
goo映画『再生の朝に』
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD17864/index.html

 劉傑の前作『馬の背上の法廷』と同様、静かだがじんわりと良い作品。舞台は前作が山岳地帯の少数民族地帯に設定されていたのに対し、こちらは河北省の地方都市となっているが、法をテーマにした点では共通。主人公の裁判官であるティエンは杓子定規で融通の利かない裁判官。でも何でも人治に流れる中国社会には時にこのような人が必要でもある。だがその彼の性格が災いしてか娘がひき逃げにあって死んでしまう。人々は彼が融通が利かないが故に、恨みを抱いた誰かが意図的にひき逃げしたのではないかと噂するが、真相は分からない。
 その彼が、刑法改正の端境期を迎える局面において、死刑と臓器提供の関係を改めて知ることで、単なる機械的な杓子定規な判決を出すだけでよいのかという葛藤を抱えることになり、それに向かって彼なりの結論を改めて出していくまでの過程を、主人公の心理過程を中心に据えて静かにじっくりと描いた作品。最後の後味も非常によい。

 なお今回の映画の撮影は、王超監督の初期作品を彷彿させるような、ほぼ固定のカメラにズームもなしという独特の絵作りが、静かでじんわりと心理を描くというこの作品の特徴をさらに際立たせる。カメラマンは誰かと思いきやなんと日本人(大塚竜治)。前作が国際的評価を受けたものの日本ではほとんど知られなかったのに(映画祭上映さえない)、本作はなぜ日本で劇場公開まで、と思ったが、それで疑問が解けた。

 とにかく死刑と臓器提供という微妙な関係を正面から取り扱って、しかも国の上映許可を取ったというこのブレークスルーに何よりも賛辞を送りたい。でも前作の『馬の背上の法廷』も非常に味わいのある作品なので、何らかの日本での公開を期待したいところだ。
 なお、劉傑監督のプロフィールは『馬の背上の法廷』記事に紹介しておいたので、そちらを参照いただきたい。

 日本版DVDの画質に関しては(但しレンタル版での評価)、全般にやや甘めで、輪郭線でのゴーストがやはり確認される。映画の性質上、遠景を展望するようなシーンもあまりないので画質の甘さはそう気にはならないだろう。ただ日本盤DVDの画質としては、さほど悪い方ではなく標準的なところか。

原題『透析』英題『Judge』監督:劉傑(刘杰)
2009年 中国映画 カラー 98分(日本劇場公開版)

『馬の背上の法廷』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/201008/article_1.html

『再生の朝に -ある裁判官の選択-』日本公式サイト(アルシネテラン)
http://www.alcine-terran.com/asa/

「銀幕閑話:第336回 「再生の朝に」の撮影監督、大塚竜治さんに聞く」(毎日.jp)
http://mainichi.jp/enta/geinou/asianenta/news/20110304org00m200027000c.html

「『再生の朝に -ある裁判官の選択-』撮影監督 大塚竜治さんインタビュー」(シネマ・ジャーナル)
http://www.cinemajournal.net/special/2011/saiseinoasani/index.html


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