映画『セデック・バレ』が台湾で大ヒット

画像 本作品は日本の植民地時代台湾で起きた、ポリネシア系セデック族によって起こされた反乱事件、霧社事件を扱った映画。監督は魏德聖。9/9から台湾で公開が始まったようだが、9/13の朝日新聞の報道によると、台湾では熱狂的に支持されているようだ。国民党も民進党もこぞって絶賛だそうだ。

 一方、日本のネトウヨ君たちは困惑の体。

例えば、
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1315123589/
http://blog.livedoor.jp/misopan_news/archives/51760196.html
http://yutori.ldblog.jp/archives/52671429.html
http://alpsch.ldblog.jp/archives/5792471.html
http://blog.livedoor.jp/digest2ch/archives/5792612.html
http://best.2chblog.jp/archives/51932804.html

彼らが親日映画と認定した『海角七号』の魏德聖監督が撮っているということで混乱している模様。

 親日と叩かれたから反日映画を撮ったのか、などと馬鹿なコメントが付いていたりするが、そもそも魏德聖は『セデック・バレ』の方を先に撮りたかったのであり、資金不足から一時中断して先に『海角七号』を撮ったのだ。

 台湾人が日本の植民地時代をありがたがっているなどという、ありもしない幻想が打ち砕かれて困惑の模様。

 国民党(あるいはジョン・ウー)から金をもらったプロパガンダ映画だ、と叫んでいる人もいるが、では『海角七号』は日本から金をもらったプロパガンダ映画だったのか?

 当たり前だが、異民族による植民地体制を喜ぶ地元民族なんていない。日本のネトウヨ君は、韓国が特殊な反応だと誤解しているが、韓国はごく普通の旧被殖民地支配国の旧植民地支配国への反応。インドだって、英植民地支配を感謝しているわけではなく、当然批判的に見ている。その姿勢を反英といえば、そのとおりだろう。旧植民地は、植民地化された歴史を批判的に見るという点では、普通はどこだって反旧宗主国である。

 台湾の場合は、地元に住んでいた人にとって、結局国民党支配というのは第2の植民地支配だった。台湾の「親日」というのは第1の植民地支配と第2の植民地支配の単なる比較の問題なのであって、台湾の人々だって植民地支配自体を全面肯定しているわけではないし、外省人だけが日本の植民地支配を批判しているわけでもない。本省人の多くは、日本の敗戦を当時は「民族の解放」だと錯覚して一瞬喜んだのは事実である。

 大体日本人は、第2次大戦で駆り出した台湾人の旧軍人・軍属に対してほとんど何の補償もせず放置しているくせに、彼らの発言の都合のよいところだけを取り出して、台湾の人たちは日本の植民地支配をありがたがっているなどと、自分たちの植民地支配の正当化に利用している。そんな日本人に台湾の人たちのどこを批判する資格があるのだろう。

 これぐらいでもう台湾とは付き合えないなどと叫んでいたら、日本はどこの旧植民地とも付き合えないことになる。あとはアメリカの影に引きずられるしかないだろう。

 ちなみに『セデック・バレ』日本語公式ブログがある。ということは日本公開もあるということだろうか?
ただ、気になるのは制作会社の都合でしばらく休止するとあること。無事日本で公開されるだろうか?

※セデック族はセイダッカ族と表現される場合もある。

『海角7號』 映画評(魏德聖監督前作)
http://yohnishi.at.webry.info/200901/article_9.html

『セデック・バレ(賽德克·巴萊)』日本語公式ブログ
http://ameblo.jp/seediqbale/

『一八九五乙未』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200904/article_10.html

「セデック・バレ」興行収入、1億台湾ドル突破(フォーカス台湾)
http://japan.cna.com.tw/Detail.aspx?Type=Classify&NewsID=201109120008

話題の抗日映画「セデック・バレ」プレミア上映会、馬英九総統も絶賛―台北市(レコード・チャイナ)
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=54082&type=5

ビビアン・スーの自腹出資も話題、抗日事件映画「セデックバレ」が9月公開―台湾(レコード・チャイナ)
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=51727

林口霧社街(旅旅台湾) セデック・バレで使われた霧社のセットを観光客用に公開
http://www.tabitabi-taipei.com/topics/20110913/index.php

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この記事へのコメント

2011年09月19日 19:45
はじめまして。突然のコメント、失礼します。
自分のブログでもこの映画の日本での公開如何を取り上げ、さらにいろいろ知りたいと思い調べていてたどり着きました。
私のブログには、「日本人が観て不愉快な映画」というコメントが寄せられました。実際にご覧になったようです。(匿名なので、本当かどうかは確認できません)
いろいろな原因でねじ曲がったこの史実を正確に云々することは、もちろん私にはできませんし、もはや不毛だと思っています。調べたところで、最終的には、双方の言語も、物語も違う人々に起こった悲劇として処理するほかないと。
この映画が国民党の思惑でヒットしている、とする向きもありますが、それならばなおさら、不愉快でも何でも、日本でもきちんとみるべきじゃないかと思っています。大きい映画館でなくてもいいから。
台湾で公開するのだから、クローズアップの当て方は台湾寄りになるのは間違いない。私は複数の台湾の方とよくお話をしますが、それを理解するレベルの(少なくとも日本よりは)メディアリテラシーはあるのではないかと思っています。彼らは、台湾を表現しつつ世界に打って出られるような(娯楽?)大作が作りたかったのだと思います。
ただ、国民党政権下で育った台湾の若い方に、どう映るのかはやはり気になります。その点で、題材はともかく、やはり映画の質が問題かもしれないとは思っています。日本側の哀しみも、少しでも描かれていればいいのですが。(よりわかりやすいストーリーで、娯楽仕立てにしているでしょうから、難しいかもしれないとは思っています。)
実際に台湾に行って、観てきたいと思っています。

失礼しました。
みみ
2011年09月20日 06:02
ふ~ん。
で、日本の大震災で台湾からの義捐金が200億円を超えて世界一だったことについては何かコメントないのかな?
むにぞ
2011年09月20日 22:22
ブログの中では私が触れましたが、今のところその件について触れたコメントはありません。
yohnishi
2011年09月21日 20:52
むにぞ様>
コメントありがとうございます。私もむにぞ様の思いには共感いたします。映画の出来に関しては未見ですので云々できませんが。

みみ様>
 今日の台湾が親日的か否かは、日本の植民地支配自体の良し悪しとは全く関係なく、植民地支配を正当化する理由にはなりません。
 例えば、今日のインドは旧宗主国である英国とのつながりを強め、また英国に教えられた英語を駆使して世界進出をしていますが、だからと言って英国による植民地支配を良かったとは毛頭思っていないのと同じです。

 大体旧植民地国がかつての植民地支配を否定的に見るのはごく常識的反応であり(でなきゃ独立なんかしません)、彼らが植民地支配を否定的に取り上げたからといってことさら反日などと騒ぐ連中が阿呆なのです。台湾の人たちも、親日的でないと思ったとたんチャンコロ呼ばわりする連中の品性の低さに呆れているでしょう。
yuki
2011年09月26日 23:45
公開直前に台湾にいたので、その大がかりな宣伝ぶりは見ていました。私自身はまだ見ておりませんが、yoshitoさん、むにそさんのご意見には共感できます。
台湾ですでに見た方からの感想も聞いていますが、冷静に見ている日本人もいますね。

ところで、セデック族を「ポリネシア系」とするのは、正確ではないと思います。
台湾原住民の諸言語は「マレー=ポリネシア語族(オーストロネシア語族)」に属しますが、「ポリネシア系」と単独で使うと意味が変わってしまいます。
台湾原住民はポリネシア系民族というわけではありません。
漢民族と区別するなら、原住民(台湾における正式名称)でよいのではないかと思います。
yohnishi
2011年09月27日 07:14
yuki様>
ご指摘のほどありがとうございました。
ワニッ子
2012年01月06日 11:15
はじめまして、日本公開用に再編集中と監督のインタビューがありました、公開の目処はついたみたいですよ、映画に対して好意的ではない前評判があるのは、日本では台湾のように、霧社事件に一律的な教育をしてないですし、事件に対して、人それぞれ見方が違うものを監督の思いを日本人全体が無批判に受け入れるのは難しいですよ。日本公開楽しみにしています。
yohnishi
2012年01月06日 23:54
ワニッ子さん、コメント有難うございます。
かつて本省人の人たちが日本に好意を持っていたのは、本省人自身のアイデンティティが国民党政府によって否定され、その代償アイデンティティとして日本が選択された結果だったわけです。そしておそらく、今台湾で先住民族に注目が集まっているのは、かつて代償アイデンティティとして果たしていた日本の役割を代替する新たな「台湾」アイデンティティのシンボルとしてだと思います。そのことに日本の右翼も気付いているからこその反発でしょう。

ただ、もはや今日の台湾の人々の日本への親近感というものは、おそらくもはや代償アイデンティティとは関係ないと思いますけれどね。それは同時に「ヤマトダマシイ」などとは全く関係ないところで成立しているのではないでしょうか?


hako
2012年07月14日 02:06
大阪で行われたアジアン映画祭で幸いにして日本語字幕で見れました
長い映画で2日間に渡る上映、2部はいかに戦ったのかという説明的な場面が長かったですね
映画としての感想より、史実が論点になってなってますので作品の評価は避けますが監督がご挨拶で”この映画は日本で上映されることで完結します”と言われた言葉が心に残ってます
日本での配給は苦労されてるようですね
DVDやブルーレイが海外から手に入るようです
多言語の字幕に日本語が入ること切望します
yohnishi
2012年07月14日 09:00
監督の挨拶はもっともなことと思います。

『セデック・バレ』をみて、霧社事件関係で日本で出版された資料も探して読んでいますが、ちょっとした戦闘場面でも、かなり資料を読み込んで、それに基づいて描かれていることが分かります。
 おそらく純粋に監督の創作と言えるのはマヘボ社少年パワン・ナウィぐらいではないでしょうか?
 それ故、監督としても映画としては冗長になっても史料価値として残しておきたいという思いは強かったのだと思います。
 もちろん、証言資料というのは人によって見方が色々だったり、記憶違い等もあって異同があるので、その証言を採用するかというのはあると思いますが...

 逆に純粋に映画として見る場合は「国際版」を見て下さいと言うことになるのでしょう。

 海外版のビデオディスクに日本語字幕が入るのは期待できないと思います。

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