少年の心のロードムービー 台湾映画『4枚目の似顔絵 (The Fourth Portrait)』

画像 『停車』の鍾孟宏(チョン・モンホン)監督の最新作。父親と死に別れた10歳の少年の精神的ロードムービー映画。

 小翔(畢曉海)は台湾の田舎に住む10歳の少年。父親は母親((郝蕾)と別れ、彼は父一人子一人で生活していたが、父親が病気でなくなってしまい天涯孤独になってしまった。学校に来ても弁当がなく、お昼には先生の弁当を盗んで食べる始末。そんな小翔を不憫に思った学校の用務員(金士傑)は、お昼を食べさせてやったり、休みの日には廃品回収に一緒に連れて行ったり。
 とはいえいつまでもそうしている訳にも行かず、役所の福祉課でかれの児童養護施設送りが決まったところで、用務員の尽力で台北の母親の居場所が明らかになり、彼は母親に引き取られることに。だが小翔は余り嬉しそうではない。
 実は母親は大陸出身。小翔をもうけた後、小翔の兄を連れて出て行ってしまったのだ。その後別の男(戴立忍)と結婚してしまったのだ(おそらく台湾に帰化するために小翔の父親を利用したのだ)。兄は母親が継父と出会って間もなく死亡。母親はホステスをして稼いでいる。継父は何の仕事をしているのかよく分らない。継父は陰鬱で口数も少なく何を考えているか分らない男。小翔は彼に対しては慎重に立ち回る一方、ひょんなことから知り合った「兄貴」(納豆)と遊び回ったり、彼の盗みの片棒を担がされたり...
 そんな中彼の面倒を見ていてくれた用務員は退職が決まり、上海に50年ぶりに帰ると挨拶に訪れてくれた。用務員は、お前の継父は人相が悪くて性格に問題がありそうだ、自分はもう大陸に帰るから助けてやれない、だから慎重に立ち回るようにと警告を残して去っていく。
 そんな中、小翔の夢の中に亡くなった兄が頻繁に現れるようになる。だが夢に出てくる兄の話を小翔が学校の先生などにすると、継父はひどく不機嫌になり、しまいには外部のものに兄の話をしないよう小翔に恫喝を掛けてきたのであった...

 前作の『停車』はコメディだったのだが、本作はかなりシリアスな社会派の映画であったため、ちょっと戸惑った。前々作の『医生』ではシリアスな作品だったらしいのでその作風に戻ったということのようだ。
 台湾社会で進行する絆の希薄化状況(そしてそこから発生する大陸からの新移民問題や家庭内暴力問題)を、ある幼い少年の厳しい心の放浪の旅を通して象徴的に描いた作品。本作品に出てくる誰もが誰かに全面的に心を許すことができない。少年を取り巻く大人たちも自分が社会で生きていくだけで一杯一杯で、もはや彼を「子供」として保護してあげることが出来ない。そのため彼は社会関係において常に「大人」になることを求められてしまう。そんな中、父親が亡くなった小翔は自分の心の落ち着き場所を求めて、必ずしも物理的地理的ではないにしろ、精神的な漂泊の旅を続けることを求められる。その行き着く先が「第4の似顔絵」になるのである。
 台湾社会の救いがたい闇の部分を見せられた気分。

2010年東京国際映画祭および大阪アジアン映画祭2011で国内上映された。

 なお筆者が入手したのは台湾盤Blu-ray。今のところ台湾盤Blu-rayとDVDが出ている。Blu-rayの画質は非常にクリア。但し英語字幕が長い割には早く消えてしまう傾向にある。


原題『第四張畫』英題『The Fourth Portrait』監督:鍾孟宏
2010年 台湾映画 カラー

Blu-ray(台湾盤)情報
発行: 飛行国際 販売: 台聖多媒体 画面: HD1080p/1: 2.35 音声: DTS2 北京語
本編:103分 リージョンA 字幕:中/英(On/Off可) BD一層 2011年 2月発行 希望価格NT$780

鍾孟宏監督前作『停車』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200904/article_19.html

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