中国映画『美人依旧』: 一人の男を巡る姉妹の葛藤を描く

画像 日本でも公開された『西洋鏡』を撮影した女流監督、胡安の作品。

 時代は1948年の青島(チンタオ)。国民党軍は敗退を続けており中国本土からの撤退も目前に迫ってきていた。すでに北京は八路軍の手に落ちた。
 そんな中、大金持ちの妾の娘である張小菲(周迅)は母親を亡くして一人で暮らしていた。彼女は、父親から払われる学費で高校に通う女子高生、成績優秀で大学の医学部への進学を目指していた。
 そんなある日、父の家から使いがやってくる。今日から父の家で暮らすようにというのだ。父親が亡くなった時、妾の子だからと母とともに葬式への出席も拒まれたのに、今さらなぜと、彼女は父の家に移ることを拒否し、今まで通り暮らすことを宣言する。
 だが、しばらくすると彼女は学校から呼び出しを受ける。父の家に移らないと、父の家から出された学費支援が打ち切られるというのだ。では、学校の奨学金を申請したいというと、学校の財政状況も苦しく、奨学金の申請は受け付けられないとの答え。
 仕方なく、彼女は父の家、李家に向かう。そこには母違いの姉、瓔子(鄔君梅)がいた。なぜ自分を家に呼びたがるのかと尋ねると、それが父の遺言だからとの答え。そして、自分の家で暮らしたいという小菲に、今晩の父の追悼パーティまではいるようにと引き止められる。その席で、小菲は姉の恋人、黄(王志文)に紹介される。小菲は黄に対し、独特の感情を抱く。しかし、その席上で、父親が、小菲が李家に戻るまでは遺産を瓔子に渡さないと遺言していたことを知り、そのために自分を呼んだのかと、パーティーの席を立つ。

 実は瓔子は父の遺産を手にしたら、家の資産を売って台湾に逃げ、そこで黄と結婚しようと考えていたのだ。姉の必死の説得と、黄への関心もあって、小菲は一旦は、李家に戻る書類のサ瓔子を決意し、とりあえず李家に住まうことだけは承諾する。
 そんな中、小菲は徐々に黄への関心を深めていく。そしてついに黄と小菲は...

 革命前の頽廃的雰囲気を匂わせる李家を舞台に繰り広げられる、一人の男を巡る姉妹の葛藤。女流らしい耽美的かつ頽廃的な雰囲気はなかなか良い。ただ『花様年華』に似てると言えばそういえる。また毅然とした一人の女性が、男のために、気持ちが揺らぎながらも、自分の運命を大きく狂わせていく様も、若干類型的ではあるが、うまく表現されている。いかにも女性好みの設定。
 ただ、89分と妙に短く、どうやら当局の検閲の手がかなり入った模様。危なそうな場面はカットされているようだし、ラストは、突然何の脈絡もなく、李家の姉妹と使用人たちが平等に並んで、赤い星の前で幸せそうに微笑むという、とってつけたような終わり方で、これは明らかに当局の「教育的指導」が入ったとしか思われない。
 周迅演じる主人公の心理表現、心の揺らぎは非常に巧み。そして王志文の怪しい魅力も相変わらず。
 これは、もしディレクターズカットバージョンが存在するとすれば、是非見たいところだが...

 監督の胡安(英語表記 Ann Hu)は、米国在住の中国人映画監督。imdbの記述によれば、1979年に中国からアメリカに留学。ニューヨーク大学で経営学を専攻し、ビジネスで成功を収める。その後、1992年に映画監督への転身を決意、ニューヨーク大学のフィルムスクールに入学。卒業作品として制作した16mmフィルム"Dream and Memory"(1994)が国際的な注目を集める。そして35mm長編デビュー作『西洋鏡 (Shadow Magic)』が国際的評価を受ける。本作は彼女の長編第2作。


 なお、筆者はアメリカ・DVD-R盤で鑑賞。画像フォーマットはレターボックスで画質はそれなり。大画面に投影すると、何とかかろうじて我慢できる程度。画像焼き込みの中国語繁体字&英語字幕が入るが、小画面だと文字が小さくて読み切れないだろう。

原題『美人依舊』英題『Beauty Remain』監督:胡安
2005年 中国映画 カラー

DVD(US盤)情報
発行・販売:Emerging Pictures 画面: NTSC/4:3(LB1:1.78) 音声: Dolby2 韓国語 本編:89分
リージョンALL 字幕: 中/英(ハードサブ) 片面一層 DVD-R盤 2010年 5月発行 希望価格$10.00

An interview with film director, Ann Hu (You Tube)
http://www.youtube.com/watch?v=dLCiSUh7LhQ



ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック