実験的ラブストーリー映画である、台湾映画『有一天』

画像 侯孝賢がプロデュースし、侯季然(ホウ・チーラン)が監督したラブストーリー。映画を流れる時間がエッシャーのだまし絵のように巡回する実験的作風。

 2009年、高雄。そこに住む職業高校に在学する女の子、欣穎(謝欣穎[Nikki Hsin-Ying Hsieh])は、幼い頃、船員だった父を海難事故で亡くし、母(姚坤君)と二人暮らし。週末ごとにフェリーに乗って船内でアルバイトをしていた。マイケル・ジャクソンの死が報じられたその晩、彼女は休暇帰りや赴任先に向かう軍人でごった返す金門島行きのフェリーに乗っていて、突然異次元に迷い込んでしまう。
 同乗していたはずの乗客や船員の大半は突然消えてしまい、訳の分らない言葉を話すインド人に追いかけられて船内を逃げ回ると、若い一人の兵士、阿聰(張書豪[Bryan Shu-Hao Chang])がかくまってくれる。兵士はドア越しにインド人と声を交わすと、彼女に「心配ない。彼は水を求めているだけだ」と言う。一体これはどういう事態なのかと問う彼女に、兵士は「ここは夢の中だ」と答える。しかも、以前彼女が、ここは夢の中だと教えてくれたのだと、訳の分らないことを言う。今まで彼と一度もあったことがないというのに!?さらに、なぜインド人と話が通じるのかと問う彼女に彼は夢の中だからだと答える。やがて水をあげたインド人と彼と彼女は、3人で話し始める...

 やがて、高校を卒業した欣穎は、台北にあるレストランに就職するために、故郷の高雄を離れる。台北に着いた彼女は、レストランのランチとディナーの間の休みを過ごすために、受験生がよく使う自習室を契約する。その座席番号はH36。その隣の席H35は、夢の中で会った阿聰が、自分の席だと教えてくれた場所。そして、彼女は、高校生(受験生)の姿の、夢で出会った阿聰に現実に出会う。最初は彼に声を直接掛けることに躊躇していた彼女。だが、彼女が勤務時間前に彼に起こしてくれるよう頼んだことから、徐々に二人は親しくなっていく...

 一方、2010年。兵士姿の阿聰がいる。大学に入学が決まりすぐ兵役に就くことを決心した彼は、かつて欣穎から教えられた通り、金門島に配属が決まる。マイケル・ジャクソン一周忌である金門島出発の前夜、同僚がガールフレンドと楽しげに夜遅く公衆電話で話しているのを注意した夜勤中の彼は、彼がベッドに戻ったのを確認した後、彼も彼女の電話番号に電話を掛けてみる。だが、返ってくるのは「この電話は現在使われていません」というむなしいメッセージばかり。
 翌日、彼は金門島行きのフェリーに乗ると、果たしてその晩、かつて彼女に聞かされていた通り、異次元の世界に迷い込む。二人の人間は同じ夢で出会うことが出来る。だが、その二人は同じ晩にその夢を見るとは限らないのだ...

 時間軸が複雑に展開する映画としては、同じ台湾映画の中では『乱青春』があり、またタイムパラドックスを通じた恋愛を扱った韓国映画『時越愛(イル・マーレ)』『同感(リメンバー・ミー)』、アメリカ映画『オーロラの彼方へ』などがあるが、本作は、時間が不思議に巡回し、あたかもエッシャーのだまし絵のような時間構造を持たせたところがオリジナル。この時間構造を通じて、恋愛感情のあたかも桜の花のような、一瞬の幻のような美しさを象徴的に描いた作品。
 本作品の一つ一つの何気ないエピソードが、後から振り返ってみると、ああ、実はそういうことだったのか、と思わされる仕掛けになっている。本作品を鑑賞する際は細かな一つ一つのエピソードにも注意深く神経を使ってご覧になることをお薦めする。中間で居眠りしてしまうと、結局何が何だか分らないで終ってしまうのでご注意。また時間軸の交錯で混乱する人も要注意である。

 侯季然は、台湾の政治大学広播電視系修士課程卒。在学中は「台灣電影資料庫」研究員として活動。作家兼撮影、映画監督。作品の傾向は叙情と実験精神にあふれ、常に時間と記憶に関連している。主要作品として『星塵15749001』(2003)、ドキュメンタリー『台湾黒電影』、『我的七四七』(2005)そしてオムニバス映画『茱麗葉(ジュリエット)』(2010)の中の一編を撮っている。また侯孝賢に「侯導」というニックネームが付いているのに対し、彼には「小侯導」のニックネームがついている。2010年清雲科技大学のアーティスト・イン・レジデンスに就任。以上はWikipedia台湾版および台湾電影網の記述を参考に作成。

 本作品は日本未公開。ただし『茱麗葉(ジュリエット)』の方は2010年東京国際映画祭で公開されている。

 本作品の台湾盤DVDは天馬行空から出されており、解像度は良好。特にテレシネの色あいの美しさは相変わらず特筆もの。また日本盤を彷彿とさせる丁寧な商品作りにも好感が持てる。ただケースが太い点が...

原題『有一天』英題『One Day』監督:侯季然
2010年 台湾映画

DVD(台湾盤)情報
発行・販売:天馬行空 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby2 北京語 本編:92分
リージョン3 字幕: 中/英(On/Off可) 片面二層(2枚組) 2010年 9月発行 希望価格 NT$500

『有一天』公式サイト(英語)
http://www.oneday.com.tw/
『有一天』公式ブログ(中国語)
http://oneday2010.pixnet.net/blog

東京国際映画祭『茱麗葉(ジュリエット)』
http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=103
http://www.tiff-jp.net/report/daily.php?itemid=1676

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック