ニューヨークを舞台にユダヤ女性とアラブ女性の友情を描く『Arranged』

画像 パームビーチ・ユダヤ映画祭、バークシャー国際映画祭で観客賞を受賞した作品。必ずしもプロの目から高い評価が与えられている訳ではないが観客から高い支持を得ているのが特徴。ニューヨークの小学校で働く新米のユダヤ人教師とアラブ人教師の友情を描く。
 ロヘルは敬虔な伝統的ユダヤ教徒。そしてナシラはシリア出身のムスリム。二人は小学校の新米教師としてニューヨークの同じ学校で働いている。学校の女性校長はおそらく1970年頃の学生運動経験世代で、進歩的な考え方の持ち主。その一方、ロヘルもナシラも自らの宗教的伝統には忠実な価値観を持ち、ナシラは自らスカーフ(ヒジャブ)を身につけている。この学校は校長自ら実験状況だという程、多様なエスニシティを持った生徒たちで構成されている(このあたりの設定は先日紹介した『パリ20区、僕たちのクラス』に似ている)。
 二人は、特にロヘルがやや内向的な性格もあり、距離を置いていたが、あるときナシラの担任のクラスでロヘルが視覚障害のある生徒のサポートに入った時、ある生徒から「ユダヤ人とアラブ人は互いに殺し合っているのに、一緒に仕事が出来るの」と問いかけられ、返答に苦労しているナシラに対して、ロヘルが好サポートをして状況を救い出したことをきっかけに、お互いに積極的に近づき協力し合うようになる。だが、それはロヘルの家族から歓迎を受けない。
 やがて二人はそれぞれの家族から、そろそろ年頃だから結婚しなさいと、何度も見合いをアレンジさせられる。ナシラはその中で自分の気に入る相手に巡り会えたが、ロヘルは親がアレンジする相手のどれも気に入らない。しかし、家父長的な父親から今まで会った中から必ず選べと厳命され、承伏しがたいナシラは家出し、やはり家族との関係を絶った従姉妹のアパートに転がり込む。彼女には好きなだけここにいて良いといわれるが、しかし彼女のあまりにも革新的なライフスタイルに、ロヘルはついていくことが出来ない。悶々とする中、たまたまナシラと図書館にナシラの兄に会いに行った時、彼と話していたユダヤ人男性が、ロヘルの印象に残る。それを知ったナシラは...

 いかにもアメリカ映画らしいポジティブな展開で、こんなに簡単に異教徒同士で友情がはぐくめるのか、という気もするが、映画祭の観客たちから強い支持を得たということは、人々がもはや異教徒同士の憎み合いのニュースやストーリーに如何に飽き飽きしているかということを示すものだと言える。
 と同時に、文化的多様性を強調しつつも、従来であれば、文化的多様性を強調するのは進歩的、革新的価値観に基づくことが多かったが、本作品では、主人公たちはそれぞれの文化的伝統にはぶつかることはあっても、基本的には従順で、それに反逆しようとはしない。そして進歩的な考え方を押しつける校長は、時に自分の信じる価値に対し押しつけがましいと批判の対象にもなる。そして彼らの自らの意志と、それぞれの文化的伝統がぶつかった際は、正面突破するのではなく、それをどうやってうまく受け流し折り合いをつけていくかが彼らの工作の主要目的となる。決して伝統的価値観を正面から否定することはない。いわば保守的マルチカルチャリズムを追求する方向が示されている。これはアメリカ社会全体の保守化と呼応するものなのかどうか分らないが、その意味でも興味深い作品であると言えよう。

原題『Arranged』監督: Diane Crespro & Stefan Schaefer
2006年 アメリカ映画

DVD(US盤)情報
発行・発売:Film Movement 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby2 英語 本編: 80分 リージョン1
字幕: なし(但しClosed Captionあり) 片面一層 発行年2008年5月 希望価格 $19.95

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