『安陽の赤ちゃん』王超監督の最新作『Memory of Love』

画像 現在フランス資本で主に撮っている中国の映画監督王超(ワン・チャオ)。日本でも劇場公開された『安陽の赤ちゃん』、ナント三大陸映画祭に出品された『Jour et Nuit』、カンヌ映画祭、ある視点賞を取った『Voiture de Luxe / 江城夏日』に引き続いて撮った最新作が『Memory of Love / 重来』。今回は都市中間層のメロドラマになっている。

 舞台は中国杭州。李詢(李乃文)と銭程(王佳寧)は共に同じ総合病院にて外科医として働いている。李詢の妻、何糸竹(顔丙燕)はかつて同僚の銭程のガールフレンドだったが、三年前、三人で遊びに行った湖での水難事故を契機に、銭程とは別れ、李詢とつきあうようになった。だが2年前に結婚したその李詢夫婦も、李詢の忙しさから夫婦の間にすきま風が吹き、妻は無聊を慰めるために通うようになったラテンダンス教室の教師、陳黙(焦剛)と愛人関係に。
 ある日、銭程がガールフレンドとの婚約を発表するパーティに李詢は夫婦で出席する。その席の中で愛人からの電話を受けた妻は翌日彼とのデートを約束する。
 その翌日、李詢と銭程が病院で勤務していると、交通事故にあった男女の急患が運ばれてくる。早速二人で緊急手術することになるが、一足先に患者にあった銭程は自分が女の患者を担当するから、お前は男を担当しろと李詢に言う。様子が変なので李詢が訪ねると「女は糸竹なんだ」。
 二人は重傷で入院は長期に及んだ。ようやく糸竹の意識が戻った時、彼女は脳の損傷のため、3年前、湖での事故直後までの記憶が全くない状態に。
 李詢はむしろ二人の関係をやり直すのには幸いだと、3年前の湖の事故後の二人の歩んだ過程をやり直そうとする。再び二人で結婚式の写真を撮り、思い出の地もデートする。幸せな結婚生活が再開した。だが、李詢は、陳黙のことを妻に教えないのはまずいのではないかと思い悩む。その末、妻に陳黙のことを二人は愛人関係だったと教え、二人で陳黙のダンススタジオにも訪ねていく。だが記憶を失った糸竹は陳黙に会ってもぴんと来ない。糸竹は、やはり陳黙のことは忘れて李詢とやり直すと、決意を彼に告げた直後、彼女の妊娠が分る。果たして二人の関係は...?

 監督は、付加映像のインタビューで、今回の映画では今までの作品とは対象を替えて、是非都市のミドルクラスを対象に撮りたかったと述べている。そしてテーマについて、アジアには輪廻思想があるが、それはあらゆるものが移ろいゆくということ、つまり変わらないことは変化していくということだけだとして、その移ろいゆくものの典型が恋愛感情であり、それを描きたかったと述べている。

 今回の作品は監督処女作の『安陽の赤ちゃん』の固定焦点カメラで社会の不条理を描いた独特の雰囲気から比べると、すっかり万人向きのウェル・メイドなメロドラマに仕上がっており、その情感は、なんとなく成瀬巳喜男のメロドラマ『乱れ雲』を彷彿させる。出てくる人々も、従来の中国人のイメージとは異なり皆洗練されている。考えてみれば成瀬の50-60年代のメロドラマ群も、貧しさの中から徐々に経済成長を遂げつつある中、物質的だけではなく、心の豊かさを求めるようになると共に、消費文明の発達に伴う価値観の揺らぎ(特に女性の主体的選択範囲の拡大)というあたりが描かれていたように思える。本作品はまさに中国における、それら日本の作品群に相当する作品なのであろう。

 なおDVDは今のところフランス盤しかない。字幕もフランス語のみ。なお本作品フランス盤DVDの画質は非常に良く、夜景なども美しく再現される。

原題『重來』英題『Memory of Love』監督:王超
2009年 中国=フランス映画

DVD(仏盤)情報
発行・発売:BAC Video 画面: PAL/16:9(1:1.85) 音声: Dolby5.1 中国語 本編: 88分
リージョン2 字幕: 仏(On/Off可) 片面二層 発行年2010年1月 希望価格 € 19,90



『江城夏日』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200906/article_9.html

『安陽の赤ちゃん』映画評
http://yohnishi.at.webry.info/200906/article_12.html

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