『The Cove』上映中止騒動

画像 『靖国』に続いて『The Cove』も上映中止騒動が起こっているようだ。

毎日jp gooヘッドライン
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/entertainment/movie/20100605ddm012040002000c.html

 こういう、日本にとって「不愉快」な言論を封じようとする人々の発想を見ると、私はかつて日本がポツダム宣言に接して取った反応を思い出す。当時の日本政府が、最初にポツダム宣言の受諾の可否を連合国側から迫られて取った反応は「黙殺」である。つまり、無視、無かったことにする、というものだ。
 だが、「黙殺」という対応は、連合国側から理解されず、ポツダム宣言受諾拒否と取られた。そもそも日本のポツダム宣言拒否を待ちに待っていた連合国側が「黙殺」という対応で見逃してくれるとでも思っていたのだろうか?「黙殺」という対応で通ると思っていたのは、日本側の、自分勝手なご都合主義の甘い情勢判断であった。その結果、日本は広島、長崎の2発の原爆、そして、当時のソ連による北方4島の強奪という代償を支払うことになったのは、歴史の教えるところである。

 この時の日本の対応は、次のような状況に例えることが出来るだろう。自分の家から火災が発生した。とても嫌で信じたくない光景だ。見たくない。だからといって目をつぶっても、火が消えるわけではない。目をつぶってじっとしていればそのまま丸焼けである。ポツダム宣言の「黙殺」は、火災を前に、見たくない、信じたくないからと目をつぶってじっとしているような行動だった。その結果、丸焼けになってしまったのである。必要なのは火災を直視し、対応策を練ることだったのだ。
 火災、否ポツダム宣言を目の前にし、「目をつぶってじっとしている」も同然の行動に出た日本は、連合国側にとっては理解不能の行動であり、「拒否」ととられたとしてもやむを得まい。

 『The Cove』の上映中止を求めることも、私には火災の前に目をつぶるも同然の行動に思える。『The Cove』を不愉快な映画だと日本国内で上映させなかったとしても、欧米人が日本のイルカ漁を野蛮だと非難する状況が変わるわけではない。いや、むしろ暴力で言論を封殺しようなんて、やはり先進国のスタンダードに追いつかない野蛮な国だと思われるのが関の山だ。
 上映をさせないで、日本の中では「無かったこと」だと思い込めたとしたところで、日本の国際的立場が改善されるわけでもイルカ猟の理解が得られることにも全くならない。今回の騒動は、自分たちに不都合・不愉快と思われることは直視を避けようとする日本人の典型的な悪い癖がまたもや噴出したというところか。

 また、無許可取材だからけしからんという主張をする人もいるが、私はそうは思わない。例えば日本のジャーナリスト組織「アジアプレス」などが、北朝鮮で無許可隠し撮り取材を北朝鮮側協力者にやらせているが、無許可隠し撮り取材自体がダメだとなれば、これらの北朝鮮取材だってニュースやテレビ番組等で放映すべきでない、ということになる。だが、真実を知るためにはこのような取材もやむを得ないだろう。
 もし日本側が海外で隠し撮り取材をやらせるのを容認しておいて、外国人が日本で隠し撮り取材をするのは拒否するという二重基準の主張をするのであれば、それは説得力のない主張だ。北朝鮮は悪の枢軸だから、北朝鮮に対しては何をやっても良いという人もいるかも知れない。だが、北朝鮮が悪の枢軸というのはあくまでも主観的な見方である。欧米の過激な動物保護団体は、太地の人たちこそが動物保護界における北朝鮮だ、と見ているのである。そもそも「悪」とは主観的基準なのだから、「悪い」かどうかは論拠にならない。

 もちろん、自分は不愉快だから見たくない、というのはご自由である。しかし、自分が不愉快だから見たくない、というのと、それを他人にも見させない、というのは全く意味が違う。これを混同している輩が多すぎる。これはこの映画の主張に賛成か反対かということと、この映画を公開すべきかどうかということが全く関係がないことと同じである。あんたが見たくない(見ない権利がある)からといって、他人に見させない権利まではないだろ、そんなことを言うお前は何様だ、ということは改めて言っておきたい。

 むしろ、本当に欧米人の主張が理不尽だと思うのであれば、『The Cove』を皆で見て、彼らがどんなロジックをもってイルカ漁を非難しているのかを皆でよく考えた上で、きちっと国際的に反論するというのが前向きの立場だろう。どうも後ろ向き、退行的な姿勢ばかり目に付く日本の将来が思いやられるばかりだ。
 
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