中国社会の今を伝えるドキュメンタリー映画 『傘...』

画像 CNEX2.0 (Web2.0ならぬChinese Next2.0)という台北と北京に拠点のある会社から出されている中国ドキュメンタリー映画のDVD。本作品は、元々は農業文明にルーツを持っていた中国人たちが徐々に土から切り離されていく現況を活写したドキュメンタリー映画。

ドキュメンタリーはまず土にしがみついて暮らしている農民を描くが、すぐその農民たちが出稼ぎに来ている広東省の傘工場の模様の描写に入る。僅かな賃金で黙々と傘工場で働く農民工たち。とは言え彼らにとってそれは十分に貴重な現金収入でもある。休み時間は男性労働者にとって同僚の女子工員の品定めだけが唯一楽しみである。こうして500円傘は作られていくのか、と思わされる。
 その一方で販売に回ったものもある。田畑を処分して思いっきり都会に出て商店を開業するのだ。作品の中ではそんな店を持つある女性を追う。彼らは時々来る客を適当にあしらうだけで、今度はどこの外車を買おうかと車の品定め。そんな商売一筋の女性に唯一欠けているのは男であった。父母の心配を受けて、父母を安心させようと見合いに向かおうとする女性傘店主。
 三番目に描かれるのは大学生。かつて農民たちが農民たちの身分を離れる唯一の手段は大学を出ることだった。だが、大学生がエリートであることを保証されたのも今は昔。有名大学を卒業しても就職できるとは限らない。農村の父母たちの期待を一身に背負い、就職説明会会場に長い列を作る、大学卒業予定者たち。だが、ある女子学生は、就職しようにも、都市戸籍保持者のみが対象と門前払いを食ってしまう。
 四番目は、大学生と並んでもう一つの農民の身分上昇の有力手段である軍隊。軍隊における幼年学校での農村出身の生徒たちの訓練の様子を淡々と描く。
 そして最後に、冒頭にも出てきた未だに農業にしがみついて暮らしている人々。彼らが一所懸命作物を育て、収穫に汗水垂らしたとしても、原価とんとんか原価割れのこともある。だが彼らは他の仕事に就くことが出来なくて仕方なく農業を受け継いでいるのだ。

 カメラは何ら説明がましいことを伝えるのではなく、淡々と彼らの生活を描写し、時々インタビューを行う。それが徐々に土から切り離されていく漢民族の今日の模様をリアルタイムに生々しく伝えることになる。中国の今日を活写するドキュメンタリー。

 監督の杜海濱は、中国陜西省出身。現在北京在住。2000年北京電影学院撮影科を卒業。以後独立の映像作家として活動。ドキュメンタリー作品として、『鉄路沿線(線路沿い)』[2000年]、『高楼下面』[2002]、『人面桃花』[2004]、『電影童年』[2005]、『石山』[2006]と発表してきた。また四川大地震を題材にした『1428』が2009年ベネチア国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞している。
 なお、杜海濱監督の作品の国内上映は、山形国際ドキュメンタリー映画祭2001に『線路沿い』が出品されたのみ。

 なお、DVDに関してだが、蛍幕比16:9と表示されているが、台湾盤ならではの誤解で実際は4:3レターボックス収録となっているので注意。

原題『傘...』英題『Umbrella...』監督: 杜海濱 (Du Hai-Bin)
2007年 中国映画

DVD(台湾盤)情報
発行:CNEX 画面: NTSC/4:3(LB1:1.85) 音声: Dolby2 中国語 本編: 93分
リージョンALL 字幕: 英/中/仏/伊語(On/Off可) 片面二層 発行年2009年6月 希望価格 NT$399

CNEX Webページ
http://www.cnex.org.tw/ または http://www.cnex.org.cn/

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