イラン映画のニューウェーブ『A Few Kilos of Dates for a Funeral』

画像 モノクロームのフィルムで描かれた、とても不思議で独特な雰囲気を持ったイラン映画、『A Few Kilos of Dates for a Funeral (葬式用ナツメヤシ数キロ)』。

 メインキャラクターは、イランのあまり車の通らない峠にあるガソリンスタンドに勤める二人の男、サドリとヤディ。サドリは、ガソリンスタンドの店長で、昔、街頭ボクサーだった片目の男。ヤディはその従業員。
 サドリはある大雪の晩の翌日、峠で雪に閉じ込められて車の中で死んでいる女性の死体を見つけ、以来、密かに、その死んだ女性を恋人のように頻繁に訪問する。そして死体が腐敗しないように、雪が再び降ることを待望している。ヤディは、サドリに召使いのようにひどく扱われているが、なぜか峠のガソリンスタンドを離れようとしない。彼は、峠の麓の女性に恋して、度々ラブレターを書いては、峠を頻繁に訪れる郵便配達夫アッバスにラブレターを託す。アッバスには智慧遅れの弟がおり、また、国から自転車しか貸与されないのを気にして、オートバイを貸与してくれるよう申請を出していた。そして数少ない常連客の死体を運ぶ霊柩車の運転手オルジ。彼は仕事で峠を通る度に、サドリのガソリンスタンドに立ち寄り話し込んでいく。
 だが、平穏に見える彼らの生活も、外部環境の変化によって徐々に変化していく。季節は徐々に春に近づくにつれ、サドリは女性の死体の腐敗を気にして、何とか雪をかき集めようとする。その一方で、警察が大雪の日行方不明になった女性を探しに峠まで頻繁に来るようになる。実はその女性は写真家で、家族から捜索願が出されたのだ。
 ヤディはヤディで、何度ラブレターを出しても、女性から一通も返事が来ないのを気にしている。実はその住所の女性は既に一家総出でテヘランに引っ越し、その後に住んでいる女性にアッバスは惹かれて結婚の準備をしていたのだった。
 世捨て人のように暮らしていた彼らの、幻想に満ちた日常は最早成り立たなくなりつつあり、現実に直面する日々が近づいていた...

 世間を見捨てるように暮らしている二人の男、サドリとヤディ。彼らはおそらく人生において心に傷を負い、彼らは自分自身の弱さをかばうように、逃げるように、引きこもるようにしてこの辺境に暮らしている。そして、二人とも自分たちの作り上げた幻想の世界に安住の地を見い出している。しかし、それは所詮砂上の楼閣でしかなく、いつか現実に直面しなければならない。
 そんな弱い二人の、現実への厳しい門出を、暖かい視線で見守る、独特で不思議な雰囲気で描いた映画が本作である。この独特の雰囲気はDVDのジャケットにあるようにIranian New Waveと称しても過言ではない。

 なお、本作品は国内未公開。おそらく国内では殆ど知られていないものと思われる。

Saman Salur(Saloorとも綴る)は、イランの若手映画監督。1976年イランのブルジェード生まれ。 彼の最初の長編『静かな土地の住人』がウクライナのキエフ国際映画祭で賞を取り国際的な注目を集める。本作でロカルノ国際映画祭金獅子賞および批評家賞を受賞。以上Wikipedia英語版より。

原題『Chand kilo khorma baraya marassem-e tadfin (چند کیلو خرما برای مراسم تدفین)』
英題『A Few Kilos of Dates for a Funeral』
監督 Saman Salur
2006年 イラン映画

DVD(アメリカ盤)情報
発行:Facets Video 画面: NTSC/4:3(LB1:1.85) 音声: Dolby2 ペルシャ語 本編: 85分
リージョンALL 字幕: 英語(ハードサブOn/Off不可) 片面一層 発行年2008年9月 希望価格 $29.95


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