両性具有をテーマにしたアルゼンチン映画『XXY』

画像 2006年製作のアルゼンチン映画で両性具有をテーマにしている。監督は女性のルシア(リュック)・プエンソ。監督の名前に何か聞き覚えがあると思ったら、『オフィシャル・ストーリー』のルイス・プエンソの娘のようだ。

 15歳の少女アレックス(イン・エフロン)はウルグアイの海岸沿いに住む少女。彼女の父、クラーケン(リカルド・ダル)は生物学者でウミガメの保護活動をやっている。彼女はアルゼンチン生まれで、幼い頃ウルグアイに一家で移り住みに来た。
 一方アルゼンチンに住むアルヴァロ(マルト・ピロヤンスキ)は父ラミロ(ゲルム・パラシオス)が整形外科医。母エリカ(カロリナ・ペレリッティ)がアレックスの母親スリ(ヴァレリア・ベルトゥッセリ)と知り合いで、エリカの招待で一家三人がウルグアイのアレックスの家にやってくる。 実はアレックスは両性具有。アレックスの一家がアルゼンチンの都市部からウルグアイの田舎に移ってきたのも、アレックスの両性具有が変に噂にならないためだった。両親、特にスリはアレックスが女の子として育っていくことを望んでいたが、同時にまだ物心が付かないうちに手術してどちらかの性に決め付けることを避け、一応女の子として育てながらも今まで見守ってきたのだった。しかしアレックスはもう15歳、そろそろどちらかの性に決定しなければと考えたスリが独断でラミロ夫妻を家に招き、特に単なる美容整形の世界に飽き飽きしていたラミロは医学的な興味から、彼女の招待に応じたのだった。
 アレックスにはヴァンド(ルチアド・ノビレ)という男の子の親友がいた。だが彼に自分が両性具有だと漏らしてしまったことから、学校に行けなくなってしまった。そんなアレックスは家にやってきたアルヴァロに初めて性衝動を覚える。しかし、その衝動はいわゆる「女性的」なものではなかった...

 同性愛、あるいは性同一性障碍の議論は、最近良く聞かれるようになり、認識も広がってきた。このような中で例えば伏見憲明氏が『<性>のミステリー』(1997,講談社)の中で、精神的面での異性愛 (男×女)、同性愛(男×男、女×女)という問題以外に、それに肉体と精神の不同一の問題が重なって、様々な性愛のバリエーションがありうる(例えば、肉体的には女性だが精神的には男性を好きな男性である、というような)という論議をしていた。
 本映画もまさにそのような問題意識に焦点をあわせた作品であり、この映画の中で提起されている問題として、両性具有者が幼少時に形成手術を受け肉体的にどちらか一方の性に決定されることが、成長した後に形成された性と精神的な性の不一致に悩みを引き起こす可能性の指摘だとか、最終的に性はどちらか選択されるべきなのか、ということに対する問題提起がなされている。
 特に、「クイア」問題に対し問題提起していく書籍や映画などを見ても、同性愛の可能性や、肉体と精神の性の不一致の可能性は指摘されていても、最終的に精神的にどちらかの性を選択するという点では自明とされてきたように思う。しかし本作品では、そもそも男性/女性のいずれも選択しない、という精神的、性的アイデンティティのあり方の可能性に言及した点が斬新である。
 しかし、その一方で過去の議論の中で、精神的にどちらかの性のアイデンティティを選択しないことが、人間としての精神的発達自体を阻害するような議論もあったように記憶しており、果たしてどちらの性も選択しないという可能性が、社会的、心理的な現実的可能性としてありうるのかという点で疑問なしとしない。その意味では若干、ロジック過剰な人工的な設定という気もしないでもないが、この点は私の認識が不足しているかもしれない。

 ともあれ非常に野心的な問題提起に満ちた作品であり、一見に値する作品である。さすが監督はルイス・プエンソの娘。父親もプロデューサーを勤めている。

 ちなみに題名は性染色体からきており、両性具有を意味する(ただし実際に性染色体異常でXXY遺伝子を持つ人が両性具有になるわけではない)。国内では2007年9月 第4回スペイン・ラテンアメリカ映画祭(東京、大阪)で公開されているが配給は付いていない。

原題『XXY』監督:Lucia (Luc) Puenzo
2006年 アルゼンチン映画

DVD(アメリカ盤)情報
発行:Film Movement 画面: NTSC/16:9(1:1.85) 音声: Dolby2 西語 本編: 91分
リージョン1 字幕: 英語 片面一層 発行年2008年10月 希望価格 $24.95

『XXY』公式サイト (英/西/仏/独語)
http://www.puenzo.com/xxylapelicula/

Film Movement "XXY" Presskit
http://www.filmmovement.com/downloads/press/XXY_FM_Press_Kit.pdf




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