非常にショッキング...李小紅監督の中国映画『生死劫 (Stolen Life)』

画像 男に搾取され、人生を目茶目茶に踏みにじられた若い女性の姿を非常にショッキングに描いた李小紅監督の2005年作品。本作品は中国政府からの上映許可は降りなかったようだが、DVDリリースは許可を得たようだ1)。

 ヤンニ(周迅 ジョウ・シュン)は北京に祖母と叔母と共に住む女の子。父母は農村部に住み、幼い頃北京の祖母&叔母宅に預けられそのまま育ったが、祖母も叔母も意地悪で、母親から見捨てられたと感じながら育った。高校をそろそろ卒業する頃になり、祖母も叔母も進学なんか必要ない、さっさと就職を決めてという態度。しかし突然田舎から父母が上京して、初めて見る父から娘が進学を望んでいるなら進学させてやって欲しいと金を置いていった。
 実は父母は知識人だったが文革で下放された。田舎に行けば娘に教育を付けさせてやることが出来ないと考え母方の祖母の家に娘を置いていったのだ。祖母らがヤンニに冷淡だったのは父母が反革命罪に問われたことが影響しているようだった。周囲は誰もヤンニが大学に合格するとは思っていなかったが、奇跡的に名門大学に合格。
 入学金500元を持って、心も軽やかに家を出てタクシーで大学の寮に向かう。ところがタクシーの無謀運転で、途中で事故を起こす。タクシーを捨て困っているところを、出前の車の青年ムユ(呉軍 ウー・ジュン)が拾ってくれた。ムユは度々大学に出前に来るらしく、寮の場所や事務所の場所を丁寧に教えてくれ。寮への荷物運びも手伝ってくれた。今まで祖母の家で冷や飯を食わされていたヤンニはたちまちムユに夢中になる。しかし実はそれが悪夢の始まりだったとは誰が想像できただろうか...

 この先を紹介すると興味を削ぐので紹介しないが、この社会的背景として文革による知識人の下放とそれによって生じた家族離散、絶望的な都市と農村の格差、すれ違う親子の情、そしてセクシズムなどの問題が複雑に絡み合う。ある意味、男による女の搾取とも取れるし差別される農村住民の側からの都市住民への、労働者による知識人への復讐談ともとれ、解釈は一筋縄ではいかない。しかしこんなことがあり得て良いのか、ここまで女の体を利用してしまっていいのかと強く思わされるような、血の凍るような物語である。しかもこの物語実話を元にしているという2)。
 『盲山』と並び、搾取される女性を描いた非常にショッキングな作品であることは間違いない。

 なお、監督の李小紅(Li Shaohong)は1955年蘇州生まれの女流監督。文革時は紅衛兵として病院で働いていた。その後中国第5世代監督の一人として北京電影学院を卒業。カメラマンの曾念平(Zeng Nianping)とともにBeijing Rosat Film & TV Productionを設立。主要作品としてBloody Morning (1990), Family Portrait (1992), Blush (1994), The Red Suit (2000), and Baober in Love (2004)等がある2)。

 日本国内未公開作品。2005年トライベッカ映画祭(ニューヨーク)で最優秀脚本賞受賞。DVDは中国盤とアメリカ盤が出ている。

原題『生死劫』英題『Stolen Life』監督:李小紅
2005年 中国映画

DVD(アメリカ盤)情報
販売: First Run Features 画面: NTSC/4:3(LB1:1.85) 音声: Dolby2 北京語 本編: 90分
リージョン: 1 字幕: 英語(ハードサブ) 片面一層 2007年6月発行 希望価格 $24.95

1)クイックチャイナサイト http://www.quick-china.com/movie/detail/dj11213.html

2)本作品、アメリカ盤DVD収録のディスカッションガイドより。

『Stolen Life』 The Global Film Initiative (英語)
http://www.globalfilm.org/catalogue/stolen_life.htm

Beijing Rosat Film & TV Productionサイト(中/英語)
http://www.rosat.com.cn/


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック