蔡明亮監督作品 『黒い眼のオペラ』DVD

画像 台湾で唯一カンヌ、ベルリン、ベネチアの三大映画祭で受賞した蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)の現在のところ、最新作。本作品は蔡明亮の生まれ故郷であるマレーシアで初めて撮影した映画。2007年春に日本で劇場公開されているほか2006年東京フィルメックスに出品された。

 本作品にあらすじらしいあらすじはないといってよい。マレー人、中国人、インド人など様々な人種のるつぼであるマレーシアで賭に負けて瀕死の重傷を負ったホームレスの男と植物人間状態の男の2役を李康生(リー・カンション)が演じる。ホームレスの男はラワン(ノーマン・アトン)という出稼ぎの男に介抱される。そして植物人間の男はその母親と母親が経営する食堂のウェイトレスの女(チェン・シャンチー)に介抱されている。その場面が交互に映し出される。やがてホームレスの男は徐々に回復し、放棄された建築現場の廃墟の水たまりで釣りをしたり、ウェイトレスの女と出会って交わったりする。

 李康生演じる二人の男は現実の別々の人間であるとも考えられるし、またホームレスの男は植物人間の男の夢であるとも考えられる。
 蔡明亮は台湾盤DVDの付加映像のインタビューで、本作品の着想はマレーシアの外国人出稼ぎ労働者を描こうと思ったところに始まると語っている。出稼ぎ労働者は、故国の貧困等の束縛から自由を求めて外国に渡り労働をするのであるが、自由であると思った外国が往々にして貧困のどん底にあえいだり、雇い主にパスポートを取り上げられ身体的自由を拘束されるなど、結果的にかごからかごへの移動に過ぎない、しかも故国より更に悪い条件で束縛されることも多々あり、そういった情況を心理的、哲学的に描きたかったと言っている。
 ホームレスの男が自由であり、そして植物人間の男の夢であるとすれば、最も不自由であることが自由につながることであり、かつ自由であることが、不自由である逆説を象徴するものだと言える。

 いずれにせよ、ミニマリズムとシンボリズムの極致であり、蔡明亮の映像世界そのものが理解できる、相当の映画フリークにお薦めできる映画である。

 なお、本作品の台湾盤DVDは特典映像を含む2枚組で特典盤にはメーキング、監督、俳優インタビュ-などの特典映像が含まれている。なお台湾盤DVDのパッケージには蛍幕比16:9との表示があるが、例によって誤解で、レターボックス収録。また国内では2009年6月にアップリンクより国内版DVDの発売が予定されている(カタログ番号ULD-465)。

原題『黒眼圏』英題『I don't want to sleep alone』監督:蔡明亮
2006年台湾=オーストリア映画

DVD(台湾版)情報
販売: ATOM Cinema 画面: NTSC/4:3(LB) 音声: Dolby2 北京語 本編: 118分
リージョン3(実際はALL) 字幕: 中/英 片面一層(特典盤付き2枚組) 2008年7月発行 希望価格NT$



黒い眼のオペラ [DVD]
アップリンク
2009-06-05

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