サタジット・レイの日本未公開作『ナヤック (ヒーロー)』

画像 サタジット・レイ(1921-92)と言えば、インドの古典映画の名監督として名前は知られている。しかし現在日本国内でDVDでリリースされているのは『大地のうた』三部作がIVCから出ているのみ。それ以外にも過去岩波ホール(エキブ・ド・シネマ)で何作か公開されている。これらがVHSで出ていたことがあるかどうかは分からないがいずれにしろ今日これらを見ることは困難であろう。
 したがってサタジット・レイの『大地のうた』三部作以外を見るには海外版DVDに頼る他ないが、イギリスのArtifical eyeからサタジット・レイのボックスが次々と出されている。今回はそのサタジット・レイ コレクション第1巻より日本未公開の『ナヤック(Nayak / The Hero)』(1966年)。

 ベンガル映画の有名スター、アリンダム(ウッタム・クマール)。出席しようかどうか迷っていたデリーでの映画の授賞式に出席するために、寝台列車に乗り込む。実は彼はその前日酔って酒場で別の客を殴るという事件を起こしていた。半分は新聞でスキャンダルの報道が大っぴらになる前にそれから逃げ出すことが理由だった。
 食堂車でアリンダムは偶然「現代女性」という雑誌を刊行している女性編集者アディティ(シャミラ・タゴール)に出会う。アディティはプログラムピクチャーのスターであるアリンダムにさほど関心はなかったが、寝台車の同じコンパートメントの女性客に彼のインタビューを掲載すれば雑誌が売れると強く勧められ、インタビューを試みる。一旦は彼はインタビューを断るが、寝台車で悪夢を見たことをきっかけに、食堂車にいた彼女を訪ね悪夢の内容に関して相談をする。その話をしているうちに彼は彼女に他のメディアに話したことのなかった自分の過去や内面の悩みについて話を打ち明け始める...画像
 この中でトップスターといえども偶像ではなく様々な悩みを抱えた人間であることが描かれる。例えば友を裏切って映画スターの道を歩んだ苦悩、ボックスオフィスのランクからいつ転がり落ちるかというということへの心配、いかにスキャンダルを起こさずに自分のイメージを守るかに汲々とする模様... 実は前日の晩酒場の客を殴ってしまったのも実はその裏にさらに大きなスキャンダルになりかねない事実が隠されていたのだった。その晩苦悩した彼は列車からの飛び降り自殺を考えるところまで追いつめられたのだが...
 このストーリーと合わせて、車内で自分の妻の美貌を利用して広告の仕事を取ろうとする広告代理店の男のサイドストーリーも併せながら映画は列車とともに進行していく。

 本作品を見た印象は、ウェルメイドの1950,60年代日本映画とかなり共通する味わい、情感があるという点。映画音楽も何となく佐藤勝の音楽を彷彿とさせる。また躍動感あふれる列車の走行シーンも黒澤明の『天国と地獄』を彷彿とさせる面があり、かなり日本映画の影響を受けているようだ(実際、映画に出てくる映画貿易商の男に最近の日本映画にかなり注目している、などと言わせている)。そして明日への希望の湧くような爽やかなラスト...

 ちなみに本作品はベルリン国際映画祭/国際批評家連盟賞受賞作品。

 DVDにあるバイオグラフィにはサタジット・レイは非常に多様なジャンルの映画を映画を製作したとある。もちろん『大地のうた』三部作も悪くはないのだが、それだけの映画監督として見ずにぜひ彼の別の側面も発見していただきたい。

原題『Nayak』英題『Nayak / The hero』監督:Satyajit Ray
1966年インド映画(ベンガル語映画)

DVD(UK版)情報
販売: Artificial Eye 画面: PAL/4:3(1:1.33) 音声: Dolby1 ベンガル語 本編: 115分
リージョン2 字幕: 英(On/Off可) 片面二層
Satyajit Ray Collection Vol.1 3枚組 2008年8月発行 希望価格£29.99

参考サイト:
川喜多記念映画文化財団:サタジット・レイ監督
http://www.kawakita-film.or.jp/kaleido/kaleido.ray.html



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